<観劇レポート>ぺぺぺの会「9.807」

#芝居,#ぺぺぺの会

【ネタバレ分離】


観た芝居の感想です。

公演前情報

公演・観劇データ

団体名ぺぺぺの会
みたかの”ぺ”公演
9.807
脚本宮澤大和
演出宮澤大和
日時場所2019/10/04(金)~2019/10/13(日)
SCOOL(東京都)

劇団紹介

劇団ホームページにはこんな紹介があります。

ぺぺぺの会について
ぺぺぺの会とは、 ​あたらしい演劇のあそび方をかんがえる集まりです。
ぺぺぺの会は、2018年6月に発足した、演劇をするヒトビトの集まりです。

平成時代にはなかった、実験的な演劇作品をつくっています。
へんてこで、おいしくて、ちょっとオシャレな、そんな会をめざしています。

ぺぺぺの会

事前に分かるストーリーは?

劇団ホームページには、こんな記載がありました。

――わたしは不可抗力によってエリザベス・タワーから落ちたのです
2018 年 2 月 28 日。ロンドンがシベリアからの大寒波におそわれた日
エリザベス・タワーの修復工事にたずさわっていた日本人が転落した
彼は奇跡的に一命をとりとめたうえにかすり傷ひとつなかったという
しかし彼には滑落で負ってしまった一生癒えることのない傷があった
療養中に起こる不可解な出来事。隣人のタバコの煙にのって現れる女
日ごと決まった時刻に叩かれる玄関。恋人は今日も約束に 30 分遅刻
誰もあらがうことのできない力にあらがうための考察をはじめようか
不可抗力が働いてからというもの、こわいくらい脳が冴えているんだ

観劇のきっかけ

チラシが気になっての観劇です。

ネタバレしない程度の情報

上演時間・チケット価格・満足度

観劇した日時2019年10月4日
20時00分〜
上演時間80分(途中休憩なし)
個人的な満足度
CoRichに投稿
★★★☆☆
(3/5点満点)

客席の様子

男女は3:7らい。若い方が多いですが、シニアな方もいました。

観劇初心者の方へ

観劇初心者の方には、あまりお勧めできない舞台かもしれません。とはいえ、怖いことが発生する訳ではありませんので、何か引っかかるものを感じられたら、観劇される事をお勧めします。お友達等と観劇されるといいかも。

観た直後のtweet

ここから先はネタバレあり。
注意してください。

感想(ネタバレあり)

ストーリーは、あってないようなものなのだが。
喪服を着た8人の男女が、2人ずつ舞台(空間)に出てきて。自身の内面とも、誰かの内面ともつかない言葉達を、半ば叫ぶように語り続ける。2人が絡むこともあれば、絡まずに進行する部分もある。舞台に立っていない人々は、壁際の椅子に座ったまま。そこで進んでいく、叫びたちの発露。1つ1つの物語というかテーマは、とても短くて。80分の間で、30位のテーマが語られる。テーマの区切りは、特に何が区切りがある訳ではなく、間と空気の変化のみ。そんな感じで進んでいく、演劇。

前衛的とも言えるし、独白的、リーディング的とも言えるし。語られる言葉たちは、どこか、ハッとするような、何かを気づかせてくれるような要素が分断に盛り込まれていて。その、「気づき」みたいなのは面白い。ツイッターで、シーンの解説がハッシュタグに沿って流れてくるので、語られている物語だけでなく、解釈を助けてくれるような言葉を、手元で確認することも出来る。そこで何となくおぼろげにわかる、目の前の「叫び」の正体。ツイートは、例えばこんな感じ。

とても気になってしまったのは。
この「叫び」は、誰が「主語」の言葉なのか、結局最後まで掴めなかった事。舞台に上がっている役の一人一人の叫びと捉えるには、あまりにも役者さんの様式が没個性だし。作者自身の「叫び」だとすると、少し自慰的にも取れてしまう身勝手さがあるし。あるいは「社会」とか「地球」とか「(観客も含めた)僕たち」的な視点だと、んー主語デカくてちょっと痛いよ、とも取れてしまい。観ている側に、その点、迷いを提示されてように感じ。

そうこう迷っていると。時折訪れる「あ、この言葉面白いな」という気づきが、何に対しての、誰に対しての、気づきなのか、という事が、自分の中でとても曖昧になっていって。その曖昧さに埋没して、解釈できなくて。・・・困ってしまったなぁ、という風になってしまった。

帰宅して当日パンフを読んでみたら、ただ、こんな記載があった。

「ものともののあいだにある 光源
 こととことのあいだにある 深層
 孤独と会話のあいだにある 対話」

なので。曖昧な部分を攻めているという解釈は、あながち間違いでもないのかなぁ、と思いつつも。・・・この曖昧さは、正直、あまり好きじゃない。楽しめない。もちろん曖昧にした方が、観る側の心に残ることも、当然あるんだろうと思うけれど。もっと説明しろ・・・とまでは言わないけれど、不安定なままの解釈の向け先に、何か答えが欲しいなぁ、と思った。目の前で叫ぶ、強烈な個性の役者さんがいるのに、何故か虚無のように感じた部分があり。この表現技法は、演劇の共感性を「狭めて」しまうんじゃないのかなぁ、と、そんな事も感じた。

この世界観を支える、役者さんたちの「叫び」は素晴らしい。鼻水とツバと汗を、全く気にせずに垂らしながら、「何か」の内面を吐露し続ける姿。「何か」が不明なので、舞台に居る役者さんが「何かを演じている人」に映って見えたのだけれども。激しい感情の流れを、ものすごい声量と共に表現しているのは、物凄い迫力だった。残念ながら、役者さんの名前との対応が、分からずじまいだった。