<観劇レポート>笑の内閣「ただしヤクザを除く」
もくじ
公演前情報
公演・観劇データ
団体名 | 笑の内閣 |
回 | 第27次笑の内閣 |
題 | ただしヤクザを除く |
脚本 | 高間響 |
演出 | 髭だるマン |
日時場所 | 2019/11/07(木)~2019/11/11(月) こまばアゴラ劇場(東京都) |
団体の紹介
劇団ホームページにはこんな紹介があります。
2005年、京都で高間響を中心に旗揚げ。芝居中に実際にリングを組んでプロレスをしてしまうプロレス芝居と、時事ネタコメディが得意。いったん契約した劇場に内容が反社会的と上演拒否にあった際は、マスコミや政治家に通報して騒ぎを大きくしたことで知名度を上げ、「炎上マーケティング劇団」「頻繁に2ちゃんにスレがたつ劇団」「演劇雑誌より、実話ナックルズ や紙の爆弾などちょっとアレ系な雑誌によく載る劇団」として知られる
https://www.facebook.com/warainonaikaku
事前に分かるストーリーは?
こんな記載を見つけました
日本国憲法第14条
すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により政治的、経済的又は社会的関係において差別されない。
―ただしヤクザを除く大手宅配ピザチェーン、ピザマッチョ広島地区エリアマネージャーの住吉は、組織犯罪対策課刑事の稲川に呼び出され、常連客である工務店への配達を断るように要請される。その工務店は表向きはカタギの建設会社であるが、ヤクザのフロント企業。ヤクザであると知りながらピザを配達をすると、暴力団排除条例違反になる恐れがあったのだ。
そもそもヤクザだと知らなかったし、商売としてピザを届けているだけなのに、釈然としないながらも警察には逆らえず署を後に店に向かった住吉。しかし、そこで彼が見たものはその工務店からの注文。しかも、今日はテイクアウト。今から断ろうにも10分後には、ヤクザが直接取りに来る。目の前で断るのは怖過ぎるけど、注文受ければ条例違反。
売っても地獄、断っても地獄。
果たしてピザ屋の運命は…?
観劇のきっかけ
前回公演が面白かったのがきっかけです。
ネタバレしない程度の情報
観劇日時・上演時間・価格
観劇日時 | 2019年11月7日 19時30分〜 |
上演時間 | 95分(途中休憩なし) |
価格 | 2500円 全席自由(早割り14) |
チケット購入方法
Livepocketというチケットサイトで、予約し、クレジットカード決済まで済ませました。
スマホでQRコードを見せる形でした。その後紙のチケットをもらえました。
https://t.livepocket.jp/e/27yakuza_1107s
客層・客席の様子
9割以上が、アラフォーアップの男性でした。
観劇初心者の方へ
観劇初心者でも、安心して観る事が出来る芝居です。
・笑える
・会話劇
・考える
・政治
・屁理屈
観た直後のtweet
笑の内閣「ただしヤクザを除く」95分休無。
再演との事。作品初見。
独特な作風の屁理屈的な芝居は健在。前作モリエールのプロレスの迫力とは少し違うも、笑いながら人権とか、ヤクザについて考えた。高間さん、東京でお目にかかれて何より。バイト店員松葉さん、ミニ高間響に見えた。オススメ! pic.twitter.com/1GcEPUnY7p— てっくぱぱ (@from_techpapa) November 7, 2019
映像化の情報
観劇三昧で、初演の舞台を配信中。
「ただしヤクザを除く」初演
初演版のDVDが劇場で販売されていました。
笑の内閣『ただしヤクザを除く』DVD / オンライン演劇グッズ専門店:観劇三昧
満足度
(4/5点満点)
CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
感想(ネタバレあり)
ストーリーは。
広島の宅配ピザ屋「ピザマッチョ」は、全国380店を展開している宅配ピザ。警察に呼び出されたエリアマネージャー。どうやら最近ピザ屋がピザを届けている高倉建設は、ヤクザらしい。警察から、ピザを頼まれても届けないように、と言われる。店に帰ってその事を伝えると、丁度テイクアウトの注文が入ってて受け取りの時間だった。一旦はヤクザを追い返すも、ピザを愛する店長は、ヤクザだから売らない、というのに納得がいかず、ヤクザの後をを追ってピザを売る。いつしか、ピザを毎日公園まで持ってきて、ヤクザに売るように。その売買を警察に見られて。ヤクザと親しいもの、暴力団親密交際者という風に呼ばれ、周りの人が大変な事になる、というので、みんなすったもんだする・・・と強引にまとめるとこんなお話。
「笑」の内閣、なので、この話はコメディなんだけれども。ベースラインには、暴力団排除条例?で、いくらヤクザとはいえ、人権を不当に抑圧し過ぎていないか、という命題がある。人権というのは「神から等しく与えられる」ものであって、ヤクザだからと言って規制していいものではないのではないか、という問い。普通に生きていると、あまり思い当たるテーマではないのだけれども、いざ目の前に提示されると、笑ながらもとても考えさせられる。人権とか、憲法とか出てくるので、芝居の作りが若干屁理屈っぽい感はあるものの、嫌な屁理屈感じゃない。政治の話を独特の切り口で切り取って笑に変えてしまう路線は、健在だった。政治ネタや笑いのネタはふんだんに織り込みつつも、全体として物語がしっかりしている。今回のスタイルは起承転結、だろうか。伏線の回収までしっかりしている脚本は、地味だけれど手放しで観られる安心感があった。
バイトの店員として出てくる松葉の役の言っている事が、印象的だった。『人権は神から等しく与えられた権利あって、誰にとっても「権利」として与えられるものだが、「自由」は自分を自由に処するものだから、自由を制限するのも自由だ。でもそれは、等しく与えられる「権利」とは異なる。人権が、例えヤクザであっても人権として与えられ、拒む自由を有しないのは、他者が人権を有しない人を、人権が無いという理由で傷つけてしまう事を防いでいるのでもある。だから、クズなヤクザでも、人権はあるべき。』・・・的な発言。演じている和泉聡一郎が、どことなく作家の高間響に似ているような気がしたものだから、ミニ高間響が喋っているようにも感じ。理屈と言えばそうなんだろうけれど、言っている事は最もで、その中に、ヤクザの清水の苦悩や、ヤクザの女房の苦悩などが、層を成して重なってくる様が、いろいろな人間のいろいろな立場を考えさせてくれて、面白かった。そういえば、ヤクザの組を、劇作家に例えているのも面白い。詳しいセリフを忘れてしまったが「平田組の構成員は、ボソボソ喋る」とか、ワンテンポ遅れて、大笑いしてしまった。
作品から話が逸れるが、後のために触れておくべきだろう。前作まで代表をしていた高間響が、選挙戦出馬のために(出馬でいろいろと制約が出るため)脚本に専念し、髭だるマンが劇団代表に就任後の、初の作品。髭だるマンの演出も、私が観た過去の劇団の作風を、踏襲したものになっていたように思う。その後、選挙戦落選の反動か、体調を崩し新作を書けなかった高間響も、今日の舞台では辛うじて?舞台に登場して、ピザマッスルの歌3番を歌いあげ。「笑の内閣」を、観劇三昧でたまたま観て衝撃を受けてから、一年。新作が、再演に変更になったのは残念だったし、来年は東京での公演はないらしいが、この作風の芝居はまだまだ生で観たい。身勝手な感想ながら、そんな事を思った。
気になった役者さん。和泉聡一郎、あ、いや、なんかミニ高間響、って感じで面白い。田宮ヨシノリ、なんだろ、あの実は疲れてやつれている感じの、刑事。雰囲気がすごくいい。髭だるマン、うさん臭さと、悪人と、生い立ちへのやり切れなさと。バランスが最高によかった。