<観劇レポート>東京あたふた「獏のゆりかご」
もくじ
公演前情報
公演・観劇データ
団体名 | 東京あたふた |
回 | 第17回公演 |
題 | 獏のゆりかご |
脚本 | 青木豪 |
演出 | 羽田野真男 |
日時場所 | 2019/11/21(木)~2019/11/24(日) シアターグリーンBASETHEATER(東京都) |
団体の紹介
劇団ホームページにはこんな紹介があります。
劇団 東京あたふたは、HOMEにも記した通り、東京都立大学(現首都大学東京)の劇団「時計」において1990年から1994年に活動していた、羽田野真男(演出)とQui-Ta(脚本・出演)が中心となって1995年に結成した劇団です。人間が生きることの滑稽さ哀しさ、たくましさを描くコメディを主に上演しています。
学生やプロを目指す演劇人も参加していますが、基本的には社会人中心の劇団です。仕事や家庭といった、芝居以外の活動に生活の軸足を置く社会人が活動できることを前提に考えています。プロ志向ではありませんが、息の長い活動と質の高い芝居作りを目指しています。
そのため、頻繁に公演を重ねるのではなく、一公演に最低半年の準備期間を設け、一年から二年に一回の公演を行っています。我々の創り得る最高の舞台を目指し、歩みは遅くとも着実に前進していきたいと思っています。
旗揚げから20年余、参加者の年齢層も上がり、本業や家庭での忙しさは増す一方、という現状ではありますが、こうした劇団のスタンスは一貫しています。
事前に分かるストーリーは?
こんな記載を見つけました
丘の上にある市営の小さな動物園。
施設は老朽化、動物たちは高齢化、廃園が検討されているともっぱらの噂だ。今日は唯一のスター動物、マレーバクのユメゾーの誕生日。
幼稚園生を招待しての誕生日イベントの準備に忙しい。ユメゾー担当の飼育員でシングルマザーの岡田は
副園長の菅原から結婚を申し込まれているらしいが、
なかなか答えを出せず、菅原はやきもき。
飼育員の小森はバイトの那須と付き合っていることを公にしたいが、
那須からは止められていてモヤモヤ。
近々人員削減があるらしいとの話も出てザワザワと不安が広がる。そこへ飛び込んでくる、いつもなんだかんだとクレームをつけてくる主婦や、
勝手にエサをあげちゃうコミュ障気味の若者。
それぞれの悩みはさておき対応に追われる飼育員たち。
さらに岡田の元夫、カメラマンの越野がイベントの取材に現れて…。動物園に集う人々とそこで起こる小さな事件を通して、
霊長目ヒト科ヒト属の哀しくも愛らしい生態を描きます。
ネタバレしない程度の情報
観劇日時・上演時間・価格
観劇日時 | 2019年11月21日 19時30分〜 |
上演時間 | 120分(途中休憩なし) |
価格 | 3000円 全席自由 |
チケット購入方法
CoRichのページから予約をしました。当日清算でしたので、当日直接受付でお金を払いました。
https://stage.corich.jp/stage/102390
客層・客席の様子
男女は6:4くらい。30〜40代が多かったように思います。
観劇初心者の方へ
観劇初心者でも、安心して観る事が出来る芝居です。
・会話劇
・ちょっと笑える
・考えさせる
観た直後のtweet
東京あたふた「獏のゆりかご」観劇。120分休無。
動物園の飼育係を取り巻く、個性的な面々の、濃密な会話劇。有名な脚本なのかな。あんな風に物語が帰結するとは予想しなかったけど。一緒にいてあげる事が至上の人生なんて、どこか退屈な気もするけどなと、40過ぎがそんな事を思い。割とおオススメ。 pic.twitter.com/RYtHu8klBm— てっくぱぱ (@from_techpapa) November 21, 2019
映像化の情報
情報はありません。
満足度
(4/5点満点)
CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
感想(ネタバレあり)
ストーリーは。
だんだんと動物が減っちゃって。ちょっと流行っていない感じの動物園の飼育係。獏の誕生日を祝うイベントの準備中。別の動物園からメスの獏を借りてきて、子供を産ませる計画が進行中らしい。独身貫いている副園長の菅原は、飼育係でバツ1の岡田と交際中。そんな中、動物園が閉園する可能性があり、少なくとも近々にリストラ・・・というか配置転換が行われるとのこと。飼育係の小森は、バイトの飼育係の那須と付き合っているが、皆んなには隠している。扶養家族が多い方が配置転換の可能性が少ない・・・なんて事を聞くと、那須とこのまま結婚するのかな、なんて事を思い。そこに、岡田の元旦那、越野現れて、寄りを戻したいという話が出たり。動物園のクレーマー立川は、ハリネズミの脱走を助けたり。りゅうちぇるに似た男は、動物の羽を集めていたり。みんな夫婦や男女の関係に、疑問ややるせなさを感じていて。急病にかかった獏が突然死んでしまうのに合わせて、それぞれの夫婦や、息子との関わり方を考えてしまう・・・そんな物語。
有名な脚本なのかな、と思って調べてみると、2007年の岸田國士戯曲賞最終候補の作品。
全編、濃厚な会話劇なのに、芝居のは、どちらかというとシリアスにならずコメディタッチな作品。出演者の面々も個性的。特に、副園長と、りゅうちぇる似と、クレーマーのおばさんが個性的で。そんな中で展開される動物園の話しなのだけれども。テーマは割と重くて、夫婦を下敷きとした男女の関係。会話劇とはいえ、軽い感じの芝居の結末が割と重くて、結末に少し「驚いた」という感覚だった。
ラスト。「獏はマレー半島に生息。オスとメスは子供を作るためだけに出会い、子作りをしたらすぐに別れる」っていう感じのセリフ。そして、オスの獏の死と、獏の奥さんの妊娠。獏の生態なんて全く知らなかったけれど、この物語は、その部分に帰結しているのだと思う。公務員で動物園職員っていう、ハードなのか緩いのか、分からないような仕事場で。それでも仕事を生活の中心に考えてきた時、子供が起こした事件で、初めてその道が正しかったのか、なんて事を振り返る。それが、獏の生態や死や妊娠とつながっていて。物語を俯瞰して見てみると、それぞれがそれぞれ、男女間、夫婦間の関係に悩んでいて。その答えの一つが獏の物語につながっている、という構造が、とても面白かった。
個人的には観ていて感じた事は・・・親にも親の人生があり、妻にも、夫にも、それぞれの人生がある。子供が小さいときは確かに悩むけれど、愛情と、一緒に居る事とは、別なんじゃないかな、という事。別の人間が、ずっと一緒にいるなんて、無理だ。それぞれの人生を、それぞれが持って帰ってきて、見てきたことを話すために、家族とかいう形で人は一緒になるんじゃないのかなぁ、などと。そう思うと、岡田と越野のすれ違いは、まあ、そうなるよなぁ、と思いつつ観ていた。結婚や男女の仲に、人は何を期待しているのだろうか、などという事を考えたり。
印象的な役者さん。太田尾暁子。劇団ホームページの稽古場日誌をみると、前回公演で15年ぶりの役者復帰とのこと。何かを背負って考え込んでいる時の表情が印象的。関谷誠、りゅうちぇるっぽい、あの変な演技が大好き。興奮して、会話が繋がってないよ。松本紫、ゴーイングマイウェイな感覚が印象に残る。見終わってから見ると、可愛いチラシがちょっと意味深だなぁ、と思った。
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