<観劇レポート>劇団チャリT企画「それは秘密です。」
もくじ
公演前情報
公演・観劇データ
団体名 | 劇団チャリT企画 |
回 | 座・高円寺 冬の劇場24 日本劇作家協会プログラム 劇団チャリT企画#32 |
題 | それは秘密です。 |
脚本 | 楢原 拓(chari-T) |
演出 | 楢原 拓(chari-T) |
日時場所 | 2020/01/23(木)~2020/01/30(木) 座・高円寺1(東京都) |
団体の紹介
劇団ホームページにはこんな紹介があります。
世の茶番を笑い飛ばすふざけた社会派
チャリT企画は1997年、早稲田大学演劇研究会(第三舞台、山の手事情社、双数姉妹、東京オレンジ等を輩出) に在籍していた楢原拓(chari-T)を中心に結成され、翌1998年、同研究会のアンサンブル(内部劇団)として旗揚げされました。
早大大隈講堂裏アトリエを拠点に12回の本公演を重ね、2004年末に同研究会から独立。以後は社会人劇団として、都内を拠点に年2~3回の本公演を中心とした活動を行っています。
旗揚げ初期はフリーエチュード(即興)からシーンの断片を起ち上げる「構成演劇」の手法が用いられていましたが、近年は主宰・楢原が書き下ろす群像喜劇の上演が中心となっています。
手法を変えつつも、結成当初から一貫しているのは、鋭い人間観察とシニカルな社会批評の視線であり、時事ネタや社会問題などのシリアスな題材を、独特なセンスで軽妙に笑い飛ばす風刺と批評性に富んだその希有なスタイルは「ふざけた社会派」として小劇場の中でもひときわ異彩を放っています。
事前に分かるストーリーは?
こんな記載を見つけました
ある日、突然逮捕されました。
容疑は「秘密」らしいです。特定秘密保護法をモチーフに2014年に初演されたチャリT企画の代表作、待望の再演! ふざけた社会派がお送りする「秘密」をめぐるドタバタ風刺コメディ。
観劇のきっかけ
過去の公演の評判を読んで、興味を持ちました。
ネタバレしない程度の情報
観劇日時・上演時間・価格
観劇日時 | 2020年1月28日 19時00分〜 |
上演時間 | 105分(途中休憩なし) 全席自由 チケット記載番号順 |
客層・客席の様子
男女比は6:4。アラフィフくらいの男性層が多くいた気がしますが、他のお客さんは若い男女性含め、様々な年齢層のお客さんがいました。
観劇初心者の方へ
観劇初心者でも、安心して観る事が出来る芝居です。
・会話劇
・シリアス
・考えさせる
観た直後のtweet
チャリT企画「それは秘密です。」105分休無。
劇団初見。面白かった。演劇的な刺激はかなり少なめ。ラジオドラマ等でも十分成立すると思う。今の時代が抱えてる問題をしっかりと描写して、例え観劇慣れしない人にも分かりやすい。物語はかなり引き込まれる内容。
しかしまぁキナ臭い時代だ。オススメ! pic.twitter.com/3oVrNME56j— てっくぱぱ (芝居好き) (@from_techpapa) January 28, 2020
映像化の情報
情報はありません。
満足度
(4/5点満点)
CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
感想(ネタバレあり)
ストーリーは。ある日突然逮捕された、お笑いトリオ「TKF」のKこと小島圭くん。家に突然公安が押し寄せて、そのまま逮捕されてしまった。公安の取り調べも要領を得ずただ「送っただろ」とだけ。一体何の罪を犯したのか分からない。残されたTとFは、O-1グランプリの生放送決勝戦を明後日に控えて焦り、マネージャも交えて圭を探す。知らせを聞いた妹、敦子が、実家の長野から出てきたりもした。圭の周りには、新聞記者や、よくわからない女二人組、ゲイの疑惑なんかもあった。いろいろあるも…小島圭には、実は弟、健がいた(妹からするともう1人の兄)。健は自衛官で、3年前に自殺した。妹は、自殺の原因を知っていた。それは、自衛隊が米軍の後方支援に派遣された地域で、戦闘があったことだ。現地の武装勢力との戦闘に巻き込まれて、健は錯乱して味方を撃ち殺していたのだ。実はその派遣では、戦闘で50名近くの自衛官が「戦闘で」死亡していた。妹は、圭こと小島くんのフリーメールを借りて、PCに残された極秘資料を新聞記者に送ったのだ。それを公安が察知し、小島圭君は逮捕されたのだ。自首する妹。O-1グランプリに予定通り参加したTKF。その直前に臨時ニュース。日本は米軍が受けた攻撃で、集団的自衛権を行使し戦闘状態になった…。と、少し端折っているけれど、強引にまとめたらこんな話。
私は、このあたりの政治的な事情に疎いので、正確に語れるかは分からない事をお断りしつつ。特定機密保護法や、今の政治のキナ臭さ、自衛隊派遣に対して、問題を指摘している作品。最近見かけなくなってしまったけれど、政治・・・というか、政治が産み出している問題に関して、キッチリと批判的の楔をさしている。日本劇作家協会プログラム、とのこと。このプログラムをよく知らないので、その背景がちょっと気になるところではあるものの、変に思想的に傾倒するというより、今ある問題を、ありのまま、質の高い劇の形式で描いた作品といえると思う。
政治を詳しく知らない者として、実際この問題は事実なのかという疑問が出てくる。簡単に調べてみたところの予想ではあるものの、直接的な事実ではないのではない、と想像する。要は、フィクションであろう。ただ、それが現実か虚構かに関わらず、それが起こり得るという事を想像するだけで怖ろしい。2020年1月。長期政権の今、花見に参加した人の名簿すらロクに保管していない政権で、仮に異国の地で自衛官が死んだとき、その原因が正しく発表されるのか。その事を考えると恐ろしい。初演は、特定機密保護法の施行直前との事だが、再演の今の方がよほど怖ろしいと感じる。・・・個人的な意見として飛躍すると、トランプ以後、この問題はとても深刻度を増しているのではないか、と思う。
割とわかりやすく進む会話劇。客席の客層が読めなかったが、仮に観劇初心者だったり、私と同様に普段あまり政治に興味を示さない層であっても、話としてはとても理解しやすかった。…理解しやすくするために、「簡単にしていた」という訳ではなく、一つ一つの事実をゆっくりとゆっくりと会話で積み上げていく感覚。また、複雑な状況も、モノローグ等を多用して、観客の意識を、意識して惹きつけていく感覚。ストーリー展開に関して飽きる瞬間はなかった。ラスト前、ショウタがいなくなった事に気がついた皆に対して、マネージャーが言う「鈍いな~」のセリフには、正直面くらったものの…全体的に言えば「演劇的な刺激」は非常に少なめだった。…刺激が少ないから話がつまらない、という訳ではなくて…簡単に言うと、この話はラジオドラマとしてでも十分成立する話だろうと感じる。演劇特有のモノが観れたか、というと、否だ、と感じさせるを得ない。小劇場というには、座・高円寺はかなり大きい舞台。もう少しダイナミズムを求めたいところでもあるが、劇団初見なので、作風なのか、この作品が特殊なのかは分からなかった。
気になった役者さん。辻沢綾香、どこかで拝見したのだけれど観劇中は思い出せず…NICE STALKER「暴力先輩」で拝見していた。ヒステリックになる部分と、女性としての魅力との裏表みたいなのがあって、目が離せない感じ。飯塚勝之、全体の進行役というか、狂言回し的な感じ。安定感とお笑い芸人的な部分のギャップが好き。
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