<観劇レポート>レティクル座「七人のエムザムライ」

#芝居,#レティクル座

【ネタバレ分離】


観た芝居の感想です。

公演前情報

公演・観劇データ

団体名レティクル座
レティクル座のSM時代劇
七人のエムザムライ
脚本阿部慎一郎(レティクル座)
演出阿部慎一郎(レティクル座)
日時場所2020/01/29(水)~2020/02/02(日)
上野ストアハウス(東京都)

団体の紹介

劇団ホームページにはこんな紹介があります。

2011年設立。阿部慎一郎を中心とした演劇団体。弱い人間を圧倒的ユーモアで過激に描くことで、生きるのに不器用な人たちに送るバラードのような作品を目指している。ギャグマンガのようなインパクトのある脚本と、愉快と不愉快の間を潜り抜けるような演出は観る者を圧倒的カオス空間へと放り込む。

「レティクル座」公式ホームページ

事前に分かるストーリーは?

こんな記載を見つけました

時は戦国時代。
『日本一の弩笑夢(ひのもといちのどえむ)』として天下に名を轟かせた大剣豪・立松葉悶々左衛門は、自分を気持ちよく斬ってくれる真の侍と出会うため日本各地の戦場を転々としていた。

旅の途中、悶々座衛門は「亀甲の里」を訪れる。
この里は戦国大名「弩柄洲家(どえすけ)」に領地を狙われているため滅亡の危機にあるそうだ。

悶々左衛門は弩柄洲家から亀甲の里を守るために立ち上がった。
七人の仲間を集め、弩柄洲家家臣『七人のエスザムライ』が待ち受ける『絶頂城』へ向かう。

「一人ぐらい好みの侍がいるでござろう。斬って斬り合う戦場へ!いざ参る!!」

観劇のきっかけ

チラシに惹かれての観劇です。

ネタバレしない程度の情報

観劇日時・上演時間・価格

観劇日時2020年1月29日
19時30分〜
上演時間115分(途中休憩なし)
価格3500円 全席自由 初日割価格

チケット購入方法

劇団のホームページからリンクをたどり、Web上で予約をしました。
当日、前売り料金を支払いました。

客層・客席の様子

男女比は6:4くらい。私くらいのアラフォー男性が多く、その他は若い男女が多かった気がしますが、全体的には特定の客層が多い感じではありませんでした。

観劇初心者の方へ

観劇初心者でも、安心して観る事が出来る芝居です。
SM劇なので、下ネタ…というかSMネタのオンパレードですが、極度に卑猥だったり、グロテスクだったりする表現はありませんでした。

芝居を表すキーワード
・アクション
・時代劇
・ちょっとエロい
・SM

観た直後のtweet

映像化の情報

情報はありません。

満足度

★★★★★
★★★★★

(4/5点満点)

CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
ここから先はネタバレあり。
注意してください。

感想(ネタバレあり)

ストーリーは。
戦国時代か?エス侍とエム侍が争って久しい世の中。それぞれの家に伝わる刀を奪還すべく、相手に闘いを挑む話…。あ、いや実際はもっと複雑で緻密なストーリー、なんだけれども。何だかどういう訳か頭に残っていない。…まあ、S性を持った侍と、M性を持った侍が、争う話だ。

劇団初見。「SM時代劇」「M侍」なんで、これはSMを基に下品な事をしながら、シコタマ笑わせてくれるんだろうなぁ、と思っていた。いや、むしろそういうものを期待して行った。ちょっとエッチい感じもあるんだろうな、と。ガハハと笑ってちょっとエッチで、楽しい夜になるんだろうなぁ…と。…その予想は半分くらい当たっていて、半分くらい外れていた。何よりも大きく外れたのは、笑の要素が思いっきり少なかった事。

笑いがない訳ではない。要所要所、笑いを取るべきところは取っていて、そこそこ面白いのだけれど。腹をよじらすほどで、決してない。というのも、「笑い」の要素を打ち消してしまうくらいの迫力の、熱のこもった殺陣とアクションとがあるので、なんか笑うに笑えない。SMをネタにしているので、鞭打ちは出るは、剣で斬られれば快感を感じているし、乳首は触るし、口枷はしているし、赤ちゃんプレイでオムツしている武士はいるし…下ネタ全開のアクション。そのあまりにも熱がこもったアクション、役者さんたちは汗かきまくって、舞台の「笑い」の要素がどこかぶっ飛んでしまったように感じる舞台だった。…いや、元々笑かす気がないのか。あるいは、壮大な「笑かそうと思ったけれど、大きくスベった」芝居なのか、判断がつかなくなってしまった。そんな変な感覚だった。

笑いが少なかったこともあり「コメディ」ではないとして、テーマを真っ正面から受けとめると、それなりに深刻な話なのかな、とも感じる。SとMって、2つで1つだ。SがいるからMがいる。明確な支配/服従の関係にあるのに、片方だけでは存在できない。お互いが存在して、はじめてお互いが快楽を得られる。一見相反しているように思えるそれが、結局お互いが狂おしいほどお互いを求めている関係に他ならない。ラストと、ラストに続くいくつかのシーン。侮蔑之助と立松葉の斬り合い…というか、立松葉が一方的に斬られているシーンこそが、実はこの芝居最大の「SMプレイ」であり、あるいは愛情の表現なのだろうと思う。裏返せば、愛情とは支配することだし、服従することだとも取れる。作者の阿部慎一郎のごあいさつに、首を絞めてくる演劇への想いが書かれている。若干中途半端な笑いと、緻密なアクションと、下品なSMの影に、そういう事を語りたかったかなぁ…という想いも垣間見えた。…ただ、若干深読みしているかなぁ、という心配もぬぐえないものの。

気になった役者さん。高麗哲也、なんか演歌歌手みたいで舞台をかっさらっていくの好き。わしやみちこ、女性なのに全然違和感なく、少年っぽい可愛さと殺陣の真剣さと、両方が上手く出ていた。ラストシーンでものすごく汗かいているのが印象的。神山慎太郎、feblabo「ホテル・ミラクル8」で拝見して気になってる役者さん。また全然印象が違ったなぁ。長い手の使い方好き。役名の対比に自信がないけれど…東尾咲、立ち姿とセクシーさとのバランスがいいな。鈴木拓也、モノローグ演劇祭の決勝で拝見した方。モノローグ…の時もそうだったけれど迫力がいい。黒ひげ危機一髪、もっと見ていたかったかも。