<観劇レポート>シンクロ少女「Better Call Shoujo」
もくじ
公演前情報
公演・観劇データ
団体名 | シンクロ少女 |
回 | #20 |
題 | Better Call Shoujo |
脚本 | 名嘉友美 |
演出 | 名嘉友美 |
日時場所 | 2020/02/20(木)~2020/02/25(火) シアター711(東京都) |
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団体の紹介
劇団ホームページにはこんな紹介があります。
シンクロ少女
2004年、日本映画学校映像学科在籍中に名嘉友美が旗揚げ。
以後全ての作品の作・演出を務める。
劇団員は現在、名嘉友美、泉政宏、横手慎太郎、中田麦平、田中のり子の5人。
「愛」「性」「欲」「後悔」「教育」などをテーマに、
男と女、家族の物語をユーモラスに描き出す。愛の劇団。
事前に分かるストーリーは?
ストーリーの記載は見つけられませんでした。
観劇のきっかけ
この時間、観たかった芝居の当日券が売り切れてました。
急遽こちらを観に行くことにしました。
ネタバレしない程度の情報
観劇日時・上演時間・価格
観劇日時 | 2020年2月24日 13時30分〜 |
上演時間 | 125分(途中休憩なし) |
価格 | 3800円 全席指定 |
チケット購入方法
当日券でしたので、当日窓口で購入しました。
当日券の場合は、5分前に入場が出来ました。
客層・客席の様子
男女も5:5くらい。特定の客層はなく、幅広い年代の人がいたように思います。
観劇初心者の方へ
観劇初心者でも、安心して観る事が出来る芝居です。
・会話劇
・静か
・考えさせる
・笑える
観た直後のtweet
シンクロ少女「Better Call Shoujo」125分休無。
すごく良かった。テーマは割と聞いたことがある、なのかもだけど。静かで独特の会話のセンスと、ちょっとコミカルでシニカルな世界観と、モチーフの使い方がうまい。ラストはそこに行くのね。役者さんの個性もすごく、バチバチ火花散らす。超オススメ! pic.twitter.com/sfZc8yMs6R— てっくぱぱ (芝居好き) (@from_techpapa) February 24, 2020
映像化の情報
情報はありません。
満足度
(5/5点満点)
CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
感想(ネタバレあり)
ストーリーは。
姉妹、ジュンとマリ。そして父と、その後妻。マリの夫で、父の誕生日会。でも、どこか関係がギクシャクしている。それは、後妻のユリコの辛辣な物言いもあるようだけれど、それだけでもなさそう。
ジュンが小学生くらいの頃、家にネズミが出るのを信じてもらえなかった。ガサゴソいうのが嫌で、信じてもらって退治してもらうため、学校の同級生と巨大なネズミを、新聞紙なんかで作って、母に見せる。すると母は驚いて心臓麻痺で、そのまま急死してしまった。その過去の出来事をどこか引きずっているのかもしれない、家族。父の誕生日会も、とこか嫌な雰囲気になってしまいがち。近くの飲み屋の店員・・・ヤナギーを誘って緩衝材にしたりしている。
姉のマリは、空気を読むのがうまい夫と卒なくやってそうだけれども、ガンからの子宮摘出をして子供を望めないことをどこか引きずっている。妹のジュンは役者として少し売れだしていて、ネズミを作った木村くんと付き合っている。ネズミを作ってくれ、と頼んだ時は、それ程親しい友人ではなかったのに、母の死後ずっと一緒にいて、付き合いだしたのだ。父は、新しい妻のユリコに手を焼きつつも、ユリコの言いなりの生活を送っている。
ひょんなことから、ジュンのマネージャーの田中さんから、「ジュンと木村は、同じ辛い経験をして、共依存して付き合っている」と言われてしまう。そこから問い直していく、木村との関係。家族との関係。あの時、お母さんが死んでしまったことに、家族の感情に、もっとちゃんと向き合うべきだった…ということに気がつくジュン…と、かなり強引にまとめるとこんなお話。
劇団初見。今週、評判が良かったので気になっていたところ、別のお目当ての芝居の当日券が、チケット売り止めで観れなかった。急遽、観劇したのだけれど、結果、大正解。大当たりだった。何故最初からこの芝居を観ようと思わなかったのか不思議だ。
ポップなチラシとは裏腹に、描いているのはとても静かで深い人間物語。「ヘイ・ジュード」やいくつかの曲をモチーフとしては使いつつも(曲名分からなかった)、基本は無音の中で、会話で何層も何層も、一つの感情を紡いでいくタイプのストーリー。とはいえ、堅苦しいかというとそうではなく、どこか独自な「笑い」のセンスもありコミカルなのに、その全体が作り出す雰囲気が、逆にシニカルにも感じる。別に奇をてらった事は何一つ起きていないのだけれど、とても不思議な雰囲気を、個性的に醸し出している舞台だった。
独自な笑いのセンスからか、笑いが起きるタイミングが観ている客によって差があって、大爆笑というより、クスクス〜「やや受け」があちこちから起こる。それぞれが思い思いのツボで笑う感じだった。
チラシを読むと、テーマは「信頼」と記載があるが、私にはどこか「許し」、むしろ「理解」の物語にも思えた。物語としては、ジュンが、「これをいうのは怖い」という前置きも付けつつも、父と姉とに思っている事をぶつける事に収束するのだけれど。そこに至る物語の、断片を描写してみる。
ジュンと木村が、共依存と見られながらもお互いを認めていく過程、途中の木村の一言で、その関係が少し歪んでくる様子は、相手に対する「理解」が、物の見方ひとつで大きく変わってくることを示しているように感じる。
ケイゴの不穏な行動をマリが察知していてヤキモキするも、でもどこか信じている自分もいて、何をしているのかよく分からなくても、どこか理解したような体で話を進めていく様も、「信頼」を支えている「理解」の要素が強いように感じる。
父と姉妹のそれぞれの物語は、「信頼」していても、どうしても「理解」できない事がある事もあって、正にその「理解できなさ」の断絶を表している。こんなにも近いのに、理解できない人。その切なさと「勇気を出して自分の意見を言う」という大切さが描かれる。
加えて外せないのが、ヤナギーという他者を通すと、突然理解できる…理解するための一歩を踏み出せるような、そんなきっかけの感情を沸き起こさせてくれるのも面白い。
個々のエピソードで語られる「信頼」にしても「理解」にしても、目新しいテーマが提示されている物語ではない。一つ一つのテーマを、書き連ねていくと、どこか、人間として当たり前の事、ありふれた説教、的な陳腐な主題に行きついてしまいそうだ。しかしそのありふれたテーマが、独特な会話のテンポの中で創られる世界がとても緻密で、魅力的なキャラクターに支えられて、芝居として、演劇として、ひとつの独特で特徴のある、愛おしい空間に変化しているように感じた。
気になった役者さん。・・・役者さんそれぞれの個性が全開!といった芝居なので、一人一人が強烈に残った芝居。記録も含めて配役と共に書くと。小野寺ずる・・・ジュン役。上手いなぁ。感情が揺さぶられるのが、こちらで観ていてもすごく伝わってくる。メガネを外したところをもう少し見ていたかった。小日向星一・・・木村役。途中、自らの苦悩を吐露するシーンが印象的・・・というか空恐ろしさを感じた。泉政宏・・・お父さん役。チラシより少し老けた役だったけれど、ダンディ。日本酒1人で飲んでるシーンが哀愁漂ってるのに旨そうで、昼間っから飲みたくなった。名嘉友美・・・ユリコ役。怖い。この手の役がとてもハマる方なのかな。豊田可奈子・・・マリ役。タバコと、ケーキを受け取るシーンが印象的。確かに蓮舫さんにも似ている。横手慎太郎・・・ケイゴ役。何度か拝見している役者さん。本当に上手いし、味がある。ずっと見ていたい。細井じゅん・・・ヤナギー役。あの底抜けなストレートさが、結構物語のキーだったように思う。最後サインもらう時の切ない顔が忘れられない。ファンじゃない。梁瀬えみ・・・ヨウコ役。声と喋り方がとても印象的。山田のぼる君を思い出したりもした。中尾ちひろ・・・小野ちゃん役。要領いいところと、優しい所の対比が好き。中田麦平・・・田中さん役。ちょっと印象薄?「共依存」って割と怖い事をサラッというのが残る。
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