<観劇レポート>劇団野良犬弾「耳隠して、女隠して、心隠す」
もくじ
公演前情報
公演・観劇データ
団体名 | 劇団野良犬弾 |
回 | 劇団野良犬弾第18回本公演 |
題 | 耳隠して、女隠して、心隠す |
配役 | 「かごめ」バージョン |
脚本 | 千葉あさひ |
演出 | 千葉あさひ |
日時場所 | 2020/03/27(金)~2020/03/31(火) 上野ストアハウス(東京都) |
耳隠して、女隠して、心隠す | 演劇・ミュージカル等のクチコミ&チケット予約★CoRich舞台芸術!
団体の紹介
劇団ホームページは以下のリンクなのですが、アクセスが出来ませんでした。
http://norainu-dan.com
事前に分かるストーリーは?
こんな記載を見つけました
大正8年(1919)東京。
光子と銀之助は恋愛結婚をして数年がたつ。
彼女は家事をしながら出版社でタイピストとして働く職業婦人。この時代ではまだ珍しい経歴をもつ彼女の生き方に寛容で優しい銀之助。
すべてが平和で温かい暮らしが続く。そんなある日・・・ 女子高等師範学校の頃の友人、
静香が嫁ぎ先に離縁を云い渡され光子の もとへやってくる。
この来訪が ふたりの女性を狂わせていく。仕事、愛、家、跡継ぎ、時代の因習が彼女たちを襲う。
忙しき現代女性に贈る、きっとつらいけど気持ちが楽になる。~ 100年前の女性、覗きこんでみませんか? ~
観劇のきっかけ
ストーリーが気になってたところ、出演者の方からお誘いを頂いての観劇です。
ネタバレしない程度の情報
観劇日時・上演時間・価格
観劇日時 | 2020年3月27日 19時00分〜 |
上演時間 | 125分(途中休憩なし) |
価格 | 4500円 全席自由(一部指定席あり) |
チケット購入方法
お誘いいただいた方に、当日チケット取り置きをお願いしました。
客層・客席の様子
男女比は7:3くらい。若い人からミドル層が目立ちましたが、特定の年齢層はなくバラバラな印象でした。
観劇初心者の方へ
観劇初心者でも、安心して観る事が出来る芝居です。
・会話劇
・考えさせる
観た直後のtweet
劇団野良犬弾「耳隠して、女隠して、心隠す」 125分休無。
面白かった。のめり込んだ。事前の予想と感じたテーマが、かなり違うのに驚き。私には、人間のどうにもしようがないサガ、の物語に見えた。キャラクターすごいなぁ。この話に申し訳ない感想だが、女優さんの魅力が特に爆発してた。オススメ! pic.twitter.com/I31dEpTujs— てっくぱぱ (芝居好き) (@from_techpapa) March 27, 2020
映像化の情報
情報はありません。
満足度
(4/5点満点)
CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
感想(ネタバレあり)
ストーリーの前半は、事前のストーリー記載の通り。後半を付け加えると。
高等師範学校で仲良しだった静香を、半ば助けるつもりで家政婦として住まわせたけれど、仕事が忙しくて、銀之助の事や、家事をしなくなった光子。静香が家政婦として働くことでその隙間を埋める中で、銀之助の心の隙間も産まれてきて。それを埋める形で、静香と銀之助は関係を持ってしまう。一方、静香の母は、男関係が派手で有名だったらしく、世間体が悪い(劇中、詳細は語られないものの、売春婦?)というので、家に住まわせることを反対する銀之助と光子の両親たち。静香が銀之助の子を身籠り、二人の女はそれぞれ自立して生きていくことを誓う。・・・強引にまとめるとそんなお話。
ちょうど、大正時代の女性に興味を持っていた。先日観た「見よ、飛行機の高く飛べるを」や「フートボールの時間」を見て、大正時代くらいの制約の多かった女性たちは、何を考え何を思っていたのか。そんな事に興味があった。ストーリーを読んで、その類の話を期待していたけれど、結果的にはちょっと違った。女性達が社会で生きづらい設定を借りた、人間の性(さが)の話。大正時代でなくても、現代でも通用するお話に思える。時代背景は、期待と裏切られたけれど、人間のどうしようもない部分を丁寧に見せつけられた気がして、ちょっと辛くなる芝居だった。
職業婦人として活躍し出す光子には、時間がない。夫のための時間が取れない。銀之助は、大正時代とは思えない程開明的で、優しい男。そんな優しくて理解のある男でさえ、心の隙が出来た時に、違う女の優しさに触れて、抱いてしまう事がある、という事でもある。半ば「優しくて理解のある夫」に甘える形で、自らの仕事に邁進する光子だけれど、それは幻想に過ぎない。人間なんて、結局は弱い。目の前にあるモノを、慰めを、自然と選んでしまうものだ、という事なのかもしれない。ひるがえって現代、まだまだ改善改良の余地があるとはいえ、大正時代に比べたら女性の社会進出は進んできた。文明は進んで、家事は少し楽になったけれど、夫婦のすれ違いや、どうやって時間を共にするかは、依然大きな問題だと思うので、身近な問題のように思う。
人間って、本当に、弱い。銀之助も、静香も、光子に対して悪意があったわけではない。でも、一緒にいれば、心に隙間が出来て、惹かれ合う事だって当然あるだろう。お互いに癒しを求めただけなのだろう。男は、女の母性みたいなものを求めてしまう性があるし、女も、女としてみて欲しいという願望の性が、必ずどこかにあるものだと思う。女性が社会進出する中で、そういった心の隙、みたいなものが増えてくるはずで、それはむしろ現代の方が深刻かもしれない。単に「善良な理解ある夫」なんていうのは虚像でしかない、という事を、思わずにはいられなかった。
大正時代の女性像を描く、という点は裏切られたけれど、舞台の魅せ方が割とてもいい感じ。タイプライターの小道具は効果的だし、衣装がかなり凝っていて、すんなり世界観に入って楽しめた。・・・ただ、女学生がベルトをしていたけれど・・・あれは初めて見たのでちょっとびっくり。そういうものなのかな。
気になった役者さん・・・無料の当日パンフには、役名や配役表がないので、記憶の中の役名で。静香役、着物の所作が本当に美しい。あれ、男は絶対、惚れてしまうがな。登場時、お化けのように乱れた髪と、後半の女としての表情とが、本当に対照的で奇麗だった。関係を持ってしまった銀之助の気持ちがよく分かる。光子役、セリフ回しがちょっと気になるところがあったけれど、元気いっぱいがどんどん崩れていく様、でも職業婦人としての女性の魅力もあってとても気になる。銀之助役、のらりくらりとした感じが、あの時代の開明的な男、っていう雰囲気でとてもいい。なんだか朝ドラとかにいそうなキャラクター。レイカ?役、大正ロマンな雰囲気が凄い。あそこで襲い掛かるとは思わなくて驚きも、美しいシーン。一平役、光子に思いを寄せつつセカセカ動く役だけれど、声がとても印象的。
あ、1つ困ったのが。銀之助が静香を抱くシーンで、坂本龍一の「Rain」は、ちよっとなぁ・・・と思った。あの曲は「ラスト・エンペラー」のイメージが強すぎて、ミスマッチ感が激しかった。
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