<観劇レポート>排気口短篇公演「いそいでおさえる嘔気じゃない」
【日時】2020年8月7日(金)~10日(月)
【場所】阿佐ヶ谷アートスペースプロット
もくじ
公演前情報
公演・観劇データ
項目 | データ |
---|---|
団体名 | 排気口 |
回 | 排気口短篇公演 |
題 | いそいでおさえる嘔気じゃない |
脚本 | 菊池穂波 |
演出 | 菊池穂波 |
日時場所 | 阿佐ヶ谷アートスペースプロット 2020年8月7日(金)~10日(月) |
団体の紹介
劇団ホームページにはこんな紹介があります。
東京を中心に公演を行う演劇団体。
事前に分かるストーリーは?
簡単に読み切れるような、ストーリー記載は見つけられませんでした。
観劇のきっかけ
こちらの対談で、話題にあがったからです。
カンゲキ座談会 第一回
ネタバレしない程度の情報
観劇日時・上演時間・価格
項目 | データ |
---|---|
観劇日時 | 2020年8月9日 16時00分〜 |
上演時間 | 115分 (短編3話。各話間に3分の換気休憩) |
価格 | 3000円 全席自由 |
チケット購入方法
twitterサイトからのリンクで、事前にWebで予約しました。
当日、受付でお金を払いました。
客層・客席の様子
男女比は半々くらい。特定の客層は、見分けられませんでした。
観劇初心者の方へ
観劇初心者でも、安心して観る事が出来る芝居です。
・コメディ
・シリアス
・会話劇
・考えさせる
観た直後のtweet
排気口短篇公演「いそいでおさえる嘔気じゃない」115分
短編3話。言葉が巧み。リフレインしつつ世界を貫く感覚で、素直に受け止めていいのか戸惑う。時に情報多めで追いつけん。テーマや構成、どこかで見た話と同じな気もするも、ずっしり重い漬物石をお土産にくれた感覚。誰か他者の劇評が読みたい。 pic.twitter.com/pJ15PWySPV— てっくぱぱ(芝居好き) (@from_techpapa) August 9, 2020
映像化の情報
情報はありません。
満足度
(4/5点満点)
CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
感想(ネタバレあり)
3話短編集。それぞれの強引なストーリーは。
「明るい私たちのりびんぐでっど」
どうやら、世界の人々がゾンビ化している、"Living dead"の世界になっている模様。噛まれてもすぐにはゾンビ化せず、徐々にしていくらしい。そんな中、かつてつき合いかけた、あきらとかおりと、友達のポポちゃんが、花火大会を見に来た。ゾンビ化で、開催されるかもわからないけれど。友達は、ゾンビになって自分の鼻くそを食ってる。あきらが好きな女は、あきらに噛みついてきた。そんな中で、ゾンビになって変わるもの、変わらないもの。ゾンビになるとはどういうことか、という事の物語。「サッド・ヴァケイションはなぜ死んだのか」
国境に隣接した?町の風俗嬢の待合室。うさ子は店長に、文句を垂れている。同僚風俗嬢のしのは、上客をしっかり惹きつけて金ずるにしているぞ、とたしなめる店長。そこにしのが表れて、今日で風俗店を辞める、という。貢いでいたホストクラブのサブジと、神に選ばれて布教に出るという。どうやら、サブシは借金が払えず、しのをだまして保証人にして、国外に売りとばすつもりらしい。そこに、しのの上客のタカシが表れて、しのを止めようとするが。・・・そんな、金貸しと風俗が、1件ずつしかないような、国境のケチで小さな街の物語。「右往私達左往」
あきらとくみこは、死んでしまった幽霊。大学時代の友達のかおりの家に、お盆だというので遊びに来た。そこには、ハカセという幽霊がいて。かおりは、普通の派遣社員になっていて。よく分からない、ヤスというサラリーマン風の幽霊も合流し、それぞれの事情、それぞれの身の上が明かされていく物語。
短編集という事で、普段の長編とは異なるのかもしれない、という事があたまをよぎりつつ。3本全体を貫いた感想を書いてみる。
3作とも、とにかく言葉が鋭い。汚い言葉や性的な言葉も躊躇なく織り交ぜつつ、その言葉で、丁寧に物語を編み込んでいく印象。リフレインする言葉が、言葉の持つ印象を強めている。初めて見る劇団だったので、最初はその言葉の繊細さに注目できていなかったが、観ていくうちに、一つ一つの言葉が物語の中でその後どう展開していくのか、という事を思って観ている事に気付く。
鋭くて巧みな表現。決して聞いていて心地よい台詞ばかりではないけれど、鋭さに耳と目を奪われてしまう感覚。こういう感覚、なんか今まで観た事が無いかもな、という風に思う。半面、言葉に裏やメタファーがあって、受け取った言葉を、そのままの言葉通りに受け取っていいのか、という悩みもうまれてくる。
各話の休憩時間、冷静に思いを馳せてみると、お話自体は、それ程、目新しいテーマを描いている訳ではない。1話目「明るい私たちのりびんぐでっど」は、正にAMCのドラマ「リビング・デッド」が描こうとしていた命題をなぞっていた感覚があるし、2話目 「サッド・ヴァケイションはなぜ死んだのか」は、私が知っている範囲の卑近な例だと、「闇金ウシジマくん」っぽい設定のようにも思える。3話目 「右往私達左往」は、それこそ、古今東西、幽霊が下りてきて死にそうな人間を諭すという話はたくさんある。言葉の鋭さが特徴的なものの、テーマの目新しさはそれ程感じていないんだな、という事に、冷静になると気が付く。
笑いの要素も多々ある。コロナの影響で客数が少なかったこともあるのか、客が笑っているケースはそれほど多くなかったものの、鋭い会話の中で、細かい笑いを、チョイチョイ外さずに取っていく。どこか、演劇に近いコントの様相も呈している。活動後半の、ラジカル・ガジベリビンバ・システムのような感覚もあるし、その後のシティボーイズの初期の、思わず苦笑してしまって笑えない、シュールなコントのようでもある。
そんなコントのような芝居なのに、結果として投げかけられるものが、人間の生きる重さだったり、軽さだったり。その生きる重量そのものを、客に容赦なく投げつけてくる。観終わった後、3,4枚の軽いパンフレットしかもらっていないのに、どうも漬物石をお土産にもらったような、そんな鈍い重さがあった。
役者が、その言葉を紡いでいる感覚がとても心地よい。汚い言葉も含めて、セリフを飲み込み切っているように感じた。
帰路に尽きながら、得体のしれない重さを感じつつも、何が残ったのかと問われると、やはり物語である以上、私の場合はテーマが大事。前に書いた、既存の物語との類似点みたいなものが、どうしても、何度も、何度も、思い出されてしまう。短編集で今回だけが特別なのか、この劇団の作風なのか、この作品だけでは分からない。独自の価値観が物語の中で提示されたら、どうなるのか。その時の公演を観てみたいと思うようになった。
他の感想なり劇評が、どのような事を書いているのか、とても気になってしまった。普段、私はあまりそういう事は感じないのだけれど、この作品は、解説というか解釈を、他人が書いた文章で読んでみたい、という思いに駆られる。逆に言うと、私にとっては、比較的解釈のし様が狭かった、という事かもしれない。この記事を書いた段階ではまだ探せていないのだけれども、劇団の作品について書かれた文書を、読んでみたい。
気になった役者さん。佐藤あきら、三作共に出演。七変化ぶりが面白い。小野カズマ、こちらも三作出ていて、全く違う役を演じ分けていて、目が離せない感覚。東雲しの、2話ラスト、3人でザーメン共和国に行く、という話をしている時の立ち姿が忘れられず。中村ボリ、3作の中では割と普通な役柄かもしれないけれど、派遣で妊娠していて絶望しているっていうのが、終盤の種明かしを待たず、説明されなくてもどことなく伝わっていたのが印象的だった。
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