<映画レポート>「チィファの手紙」
もくじ
映画情報
あらすじ
映画紹介にあったあらすじは、こんな記載でした。
姉、チィナンが死んだ。彼女宛に届いた同窓会に出かけ、そのことを伝えようとした妹、チィファだったが、姉に間違えられた上、スピーチまでするはめに。
同窓会には、チィファが憧れていたイン・チャンも来ていた。途中で帰ったチィファをチャンが追いかけ、呼びとめる。
チャンがチィナンに恋していたことを知っていたチィファは姉のふりを続けた。連絡先を交換するが、チャンが送ったメッセージのスマホ通知を、チィファの夫ウェンタオが目撃。激昂し、チィファのスマホは破壊されてしまう。仕方なくチィファは、チャンに住所を明かさないまま、一方通行の手紙を送ることに。かくして始まった「文通」は、思いもかけない出来事を巻き起こす……。
満足度
(5/5点満点)
鑑賞直後のtweet
映画「チィファの手紙」
静かなラブストーリー。すごくよかった。久しぶりに岩井作品見たきがする。ノスタルジー。既に過去のことを丁寧に描く視点なんだなぁ。過去の大切な何かを。カメラワーク、音楽、「花とアリス」に諸々似てるなぁと思ったら、音楽は岩井氏。幼少の妹の子役、好き。オススメ! pic.twitter.com/D6nKl55XEX— てっくぱぱ(芝居好き) (@from_techpapa) September 13, 2020
感想(ネタバレあり)
当たり前のことかもしれないけれど、この映画、過去に向きあう物語だなぁ、と思う。回想の中で、小学校時代までさかのぼって垣間見るそれぞれの恋の物語。冒頭、半ば強引に、そして唐突に始まる、手紙の一方通行な"やりとり"は、どこか現在進行形の物語、これからいろいろな出来事が始まる予感、更なる恋とか、再会の物語なのかな、と思ってしまう。スマホ時代なのに、手紙かよ、なツッコミも難なくクリアーすると、尚更に。幼い頃の回想シーン、わりと物語がひと段落してから、やっと出てくるくらい、スロースタートだったし。
でも、気が付くと、たどり着くのは必ず過去。今の出来事の描写が多い割には、今の出来事を描いている映画では、ない。過去を再認識して、再配置して、未来に生きるための「記憶」を手にする。そんな物語。次々といろいろな出来事が明るみに出るわりに、それは、もう既に起こってしまった事ヘの追想にっている。現在進行形のようでいて、追想。そのギャップが面白い。事実が、どこか常に淡々と進んでしまうのも、効果的だなぁ、と感じ。
ラスト、小学校の講堂でのチィナンとイン・チャンの二人のシーン。川沿いを歩きながら、それを思い起こすイン・チャン。記憶とは、生きていく時に背中を押すものであってほしいし、そういう記憶を大切にしたい、という思いが、岩井俊二の奇麗な映像とともに、全編にあふれていたように思う。
だからこそなのか、息子の逃避行シーンが唯一、毛色が違ったシーンに思えた。映画全体のイメージとは異なるのに、思いのほか、強烈に印象に残った。一連のシーンだけ、突如、現在進行形になる。映画の中では何の区別もないシーンだったけれど、そこだけ、唐突にリアルなものが浮き上がった。何となく先の展開が読めた時に、「んー、このエピソード必要かな」なんて事もふと頭によぎったけれど、ラストまで見ると、暗い階段を駆け上がるシーンが、かなり印象に残る。このシーンと、サーランが恋に恐怖して登校拒否する事が分かるシーンが、今、の悩みを描いているからな、と思った。
岩井作品は、最近遠ざかっていた。2004年の「花とアリス」以来かもしれない(2017年のアニメ版、「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」は、カウントせず)。今回の作品、どこか「花とアリス」に似た所が多いな、と感じた。カメラワークなんかも、花とアリスっぽい。それがしばらく岩井作品を見ていないからそう思うのか、判断がつかなかったが、音楽に関しては、ラストのクレジットで、岩井俊二自身がやっているのを見て、ああ、と思った。「花とアリス」同様ピアノとバイオリンの美しい音色だったけれど・・・今回の作品は、そこまで強烈に残るメロディーがなかったのが、ちょっと残念。この作品自体はどうやら「ラストレター 」という作品と関連があるらしいけれど、この作品は未見。今度見てみようと思う。
中国映画だから、知ってている俳優さんはほとんどいなかったけれど。チン・ハオ(秦昊)、豊川悦司みたいでカッコイイ。カッコ悪い様なのに、どこか様になってしまうのが、ズルい。チャン・ツィフォン(张子枫)、姉の分かり易い美人顔とはちょっとちがう、鼻ぺちゃ顔が、恋するも叶わない物語にとてもマッチしている。幼少期の回想と、現在と。何だか見ていて、目が離せない女優さんだった。私自身は、中国には行った事がなくて。中国の現代の生活を描いている、という点でも見ていて面白い。
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