<観劇レポート>東宝「ウェイトレス」
【ネタバレ分離】昨日観た芝居、 東宝/フジテレビジョン/キョードー東京「ウェイトレス」の観劇レポートです。
もくじ
公演前情報
公演・観劇データ
項目 | データ |
---|---|
団体名 | 東宝/フジテレビジョン/キョードー東京 |
題 | ウェイトレス |
脚本 | ジェシー・ネルソン |
演出 | ダイアン・パウルス |
日時場所 | 2021/03/09(火)~2021/03/30(火) 日生劇場(東京都) |
団体の紹介
日本を代表する、エンタメ製作会社です。
東宝グループは、「映画」「演劇」「不動産」を柱とする全ての事業において、お客様の立場で考え続け、皆様に望まれるものを鮮やかに提案してまいります。いつも「何かを 企(くわだ)てて画(え)にする」=「企画」する会社であり続ける、そうした毎日の弛(たゆ)まぬ努力で成長を実現する、それが我々の目指すところです。
「朗らかに、清く正しく美しく」。創業者・小林一三の精神を原点に、東宝グループはこれからも、新しい可能性へ向かって挑戦を続け、お客様にわくわくして頂けるような最高のエンタテインメントを提供してまいります。
事前に分かるストーリーは?
こんな記載を見つけました
アメリカ南部の田舎町。そこにとびきりのパイを出すと評判のレストランがある。ウェイトレスのジェナ(高畑充希)はダメ男の夫・アール(渡辺大輔)の束縛で辛い生活から現実逃避するかのように、自分の頭にひらめくパイを作り続ける。そんなある日、アールの子を妊娠していることに気付く。訪れた産婦人科の若いポマター医師(宮野真守)に、「妊娠は嬉しくないけど産む」と正直に身の上を打ち明ける。
ジェナのウェイトレス仲間も、それぞれ自分のことで悩む日々。ドーン(宮澤エマ)は、オタクの自分を受け入れてくれる男性がこの世にいるのかと恋愛に臆病だが、出会いを求め投稿したプロフィール欄にオギー(おばたのお兄さん)からメッセージが届き困惑する。また、姉御肌のベッキー(Wキャスト:LiLiCo/浦嶋りんこ)は、料理人のカル(勝矢)と毎日のように言い争っている。ベッキーは病気の夫の看病と仕事を両立しているのだった。
ある日、店のオーナーのジョー(村井國夫)が、ジェナに「全国パイづくりコンテストに出場し、賞金を稼いだらどうか?」と提案する。その言葉をきっかけに、ジェナは優勝して賞金を獲得できたら、アールと別れようと強く決心する。
診察を受け、身の上話を語るうちに、ポマター医師に惹かれはじめるジェナ。ポマター医師もまた、ジェナへの想いを抑えられず、二人はお互いが既婚者と知りながら、一線を越えてしまうのだった。
そして、ジェナの出産の日は、刻一刻と近づいていく……。
過去の観劇
- 2023年11月05日東宝「のだめカンタービレ」
- 2023年08月20日東宝「SHINE SHOW!」
- 2019年11月05日観劇・感想レポート/「ビッグ・フィッシュ」2019年東宝ミュージカル“12 chairs version”
ネタバレしない程度の情報
観劇日時・上演時間・価格
項目 | データ |
---|---|
観劇日時 | 2021年3月12日 13時00分〜 |
上演時間 | 170分(途中25分の休憩含む) |
価格 | 14000円 全席指定 |
チケット購入方法
東宝のホームページから予約、クレジットカード決済しました。
セブンイレブンで予約番号を伝えて、チケットを受け取りました。
客層・客席の様子
男女比、98%女性。
平日マチネでしたので、シニア層と、大学生くらいの若い層が目立ちました。
観劇初心者の方へ
観劇初心者でも、安心して観る事が出来る芝居です。
・ミュージカル
・コメディ
・ハッピー
・考えさせる
・シンプル
観た直後のtweet
東宝「ウェイトレス」170分、休25含
イギリスで観て2度目。原作は映画。往年の名作ミュージカルに比べるとダイナミックさはなく万人受けはしなさそうだけど。ものすごく焦点のあたりにくい状況・感情を、丁寧に描いてるのがいい。心が自然に流される。四つ打ちのテーマも好き。ドーン好き。オススメ! pic.twitter.com/8pGhJO1B6a— てっくぱぱ (@from_techpapa) March 12, 2021
満足度
(4/5点満点)
CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
感想(ネタバレあり)
2019年の春に出張でイギリスに行ったときに、キャサリン・マカフィーが主演していて、気になって観たミュージカル。良かったので、いずれ日本に来るだろうな、と思っていたら、やはり来た。ので観てみた。
ちなみに、原作は、映画。ミュージカルではないけれど、こちらもいい。ウェイトレス~おいしい人生のつくりかた (吹替版)
往年の大作ミュージカルと比較すると、小じんまりしているというか、迫力の観点では今3つ及ばない感覚は否めないものの。ミュージカルにしては珍しく、ジェナを中心とした女性の心の動きみたいなものが、かなり内省的に飛躍なく描かれている。どこかラブコメっぽい要素もあるけれど、実は「コメディ」と呼べるほど、能天気な題材の作品でもない。そんな中で、前を向いて生きる幸福感を、幸せな曲にあわせて歌い上げる、人生への賛歌のミュージカルだった。
描いているのが、アメリカの田舎に住む女性。実際、そういう人に会ったことは無いのに、何故かリアルに感じる存在。海外ドラマや映画なんかで、たまに見るからだろうか。「女性はウェイトレスくらいしか仕事がない」なんて言われていた、低賃金で何も成さないまま、夫に依存して生きていくしかない、みたいな象徴として描かれているのだと思う。主人公ジェナが、パイを作るのだけは得意。自尊心をなかなか持てず、夫のアールとの子供が出来ても、とても幸せにしてあげれない、と素直に喜べない。そんな劣等感の塊のような女性が、友人や、知り合った産婦人科の医師とのふれあいで、自分の生きる意味を見いだしていく。
「ウェイトレス」という言葉自体が、女性を少し下に見ているような響きがある。ウェイトレスをする店で得意の「パイづくり」をするジェナ。この設定だけ聞くと「ケーキ屋さんになりたい」みたいな「甘い」空想的な要素が満載の話のように見えるけれど(ビジュアルもそんな感じだけれど)。1幕で見えてくるのは、パイづくりにどんなに逃避しても、人生はそんなに「甘くない」状況。母から教わったパイづくりに、唯一の生きる場所を見出しているような感覚。アメリカの田舎の女性は、こんな閉塞感を味わうのかな、という事を思ったり。あるいは、アメリカの田舎に限らず、自らの生き方を決めれない状況にいる女性は、こういう「疎外感」を味わうのかな、とか想像したりする。
その「疎外感」「閉塞感」から、なんとか抜け出そうともがくジェナ。きっかけはまわりの人々。友人のドーンが、キモいけれど誠実で相性ピッタリな出会い系サイトで知り合った男オギーと結婚。店のコックのカルは、あれだけ喧嘩ばかりしているベッキーと不倫している。そんなきっかけもあり、主治医との不倫。そこから、人生で何が大事なのか、みたいなことを漠然と考えていく。ベッキーのセリフ「不倫は確かに間違っているけれど、人生は一度しかない。楽しまないと。私は、正しく間違っている。」みたいなセリフが、結構グサリと来る。
ジェナ。なかなか踏ん切りがつかないけれど、娘ルルの顔を見たらすぐにアールと別れる決断をする。子供の存在の力は、大きいな、なんて事を思いつつも。このミュージカル全体、やはり女性寄りの視点で描かれている(感想ツイートを見ていて知ったけれど、この作品、ブロードウェイのクリエイティブスタッフは全員女性だったらしい)。男性の私は、どちらかというと女性特有の「疎外感」や「子に対する愛情」を、追体験しながら見ている感覚がある。男性には、どこかよく分からない割り切れなさ、みたいなものが付きまとう。他のミュージカル同様、客席の大半は女性だったけれど、女性の視点での感想を聞いてみたい。
高畑充希のジェナの演技・歌唱が素晴らしかった。宮澤エマのドーンが愛らしい。イギリスで観た時は、ジェナ役はKatharine McPhee、ドーン役はLaura Baldwinという女優さんで、どちらも忘れられないインパクトだった。日本版に馴染めるかが心配だったけれど、二人ともとてもいい感じ。心配し過ぎだった。ドーン役のキャラはとてもいいな。オギー役の、おばたのお兄さん、とても良かった。笑いみんなかっさらっていたけれど、笑いの中の誠実さ、みたいなのが損なわれていないのも良かった。英語だと、なんで二人が古い服を着てくるのか聞き取れなかったんだけれど(なんかのコスプレだ、というのはニュアンスで分かったけれど)、合衆国憲法の制定劇を演じている訳ね。(笑)
イギリス版でも、開演前の「携帯切って」のアナウンスのコーラスあり。舞台上下に、パイを保存しておくガラス型の冷蔵庫が並んでいるのも同じだけれど、イギリスではパイが回ってた気がする。日本では回らず。