<観劇レポート>コメディアス「段差インザダーク」
【ネタバレ分離】昨日観た芝居、 コメディアス「段差インザダーク」の観劇レポートです。
もくじ
公演前情報
公演・観劇データ
項目 | データ |
---|---|
団体名 | コメディアス |
回 | コメディアス第4回公演 |
題 | 段差インザダーク |
脚本 | 鈴木あいれ |
演出 | 鈴木あいれ |
日時場所 | 2021/08/11(水)~2021/08/15(日) こまばアゴラ劇場(東京都) |
団体の紹介
劇団ホームページにはこんな紹介があります。
東京を拠点にコメディを専門として活動する劇団。
作品作りの最大の特徴は「物理的な要素」と「ミクロな要素」を舞台上に持ち込み、実際に観客の目の前で俳優とそれらの要素を戦わせている点にある。
過去作品では「入り組んだダクトを役者が這い回るコメディ」「HDMIやD-subを用いビデオカメラのデータをモニターに映し出すまでを描くコメディ」「暗中で60Lサイズのザックから乾電池を探し出すコメディ」などがその代表的な例。
いずれも舞台上で役者自身が題材と奮闘するさまを楽しむ構造を用いている。また演劇作品とその手法を劇場以外へ展開することも重要な活動方針の一つとして位置付け、ステージパフォーマンス、落語、漫才、ZOOM演劇、VR演劇などにも積極的に取り組んでいる。
事前に分かるストーリーは?
こんな記載を見つけました。ストーリーは2通り記載を発見。
資源が全て政府に管理される近未来、"ある物"を盗み出す男たち。
計画は順調だったが、搬出予定の裏口には段差があった。
「もっと前輪浮かせて!そこ足でちゃんと踏んで!」
狭すぎる踊り場、急すぎるスロープ。
段差VS人間の因縁の対決を描く、前代未聞の段差コメディ!
新大陸の古代文明の遺跡にて、王位の象徴「レガリア」が発見される。
研究のために運び出そうとする考古学者たちであったが、遺跡の段差が行く手を阻むのであった。
「もっと前輪浮かせて!そこ足でちゃんと踏んで!」
狭すぎる踊り場、急すぎるスロープ。
段差VS人間の因縁の対決を描く、前代未聞の段差コメディ!
ネタバレしない程度の情報
観劇日時・上演時間・価格
項目 | データ |
---|---|
観劇日時 | 2021年8月11日 19時00分〜 |
上演時間 | 90分(途中休憩なし) |
価格 | 3000円 全席自由 |
チケット購入方法
CoRichで予約しました。
当日、現金でお金を支払いました。
客層・客席の様子
男女比は、6:4くらいで男性が多め。
年代は、40代upが目立ったように思いました。
観劇初心者の方へ
観劇初心者でも、安心して観る事が出来る芝居です。
・コメディ
・会話劇
・段差
観た直後のtweet
コメディアス「段差インザダーク」90分休無。
緻密で目が離せない。開いた口が塞がらないシュールさ。こんな演劇観たことない。でも話は9割方予想通りで、コメディなのにそれ程笑えない。どう受け止めればいいのか当惑中。笑えないのについ集中して観ちゃう。Björkもびっくりだな。他の方の感想求む。 pic.twitter.com/JIP2x2NLoH— てっくぱぱ (@from_techpapa) August 11, 2021
満足度
(4/5点満点)
CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
感想(ネタバレあり)
折り込みで、チラシを見てズッコケた。「段差インザダーク」。ふざけてるのかオイ。Björk主演のド暗いミュージカル映画「ダンサー・イン・ザ・ダーク」のモジリで、軽い笑いを取るなんて…。しかも、あの映画の暗さとは全く逆を行く、チラシとあらすじ。こりゃ期待出来るぞと予約。結局やはり、映画とは何の関係のない話だったけれど(当然か)。
神殿から盗み出したご神体?(忘れた)。手のひらサイズかと思ったら、とにかくデカくて重い(ドラム缶くらいの大きさ。多分なかはドラム缶)。台車で運び出したのはいいけれど、出口までに段差がある。台車は、段差の緩いところしか持ち上げられない。劇中時間いっぱいかけて、段差をうまくやりくりしながら、ご神体を運び出すお話。
台車で何とか重いものを運ぼうとする物語。それをただただ、観ている観客・・・という構図。いやー。下らない。圧倒的に「どうでもいい状況」で、途中二度ほどあくびするような退屈があったけれど、それでも不思議と舞台からは目が離せない。こんな演劇観た事ない、初めて観る体験。しっかりと物語として成立している演劇・・・要は観客をちゃんと意識した物語・・・だけれど、どこか演劇のワークショップとか、エチュードのような風景にも見えたりする。
芝居としての作りが、とても緻密だった。段差の高さと、台車の幅・長さ・高さを、緻密に計算しつつ全体を作らないと、お話そのものが成立しない。舞台美術で作られた段差と、どういうルートを通るのか、どこでどう台車が行き詰まるのか・・・、といったことが全て物語に含まれている。
その中での演技が、とても自然。どちらかというと、即興劇的な要素をそのまま持ち込んだように見える。全体のストーリーや、台車を動かす方向、行き詰り方、キーとなるセリフなどは定めつつも、役者さんに自由に演じてもらっているのかもしれない。・・・とこの文章を一度書き切った後、当日パンフレットに、制作過程が書かれているのを読んでみる。劇の制作過程らしきことは書いてなかったけれど、台本がリターンになっているクラウドファンディングをやっている。・・・この芝居の台本、どう書かれているのか?はとても興味がある。
コメディとしては、ちょっと致命的な要素もあった。開始15分位で「あ、この物語、ご神体を運ぶだけなんだ」というのに気が付いた後に、舞台装置に目を向けると、自ずとストーリーが読めてしまった事。「ここを通って、ここでつかかって、引き返して・・・ひょっとしたらここを渡す板とか登場する?」って漠然と思ったら、そのまんまのストーリーでビックリ。舞台美術が緻密すぎるが故、もう先々のストーリーを隠しようがなくなっている。カンの鈍い人でも、さすがに読めてしまう気がする。オチが読めてしまうコメディほど、笑えないものはない。なので、役者たちの台車動かしの奮闘を見つつ、どこか冷めてしまっている感覚がある。・・・ラストに登場するミイラは、さすがに予想してなかったけれど。
加えて、笑いのポイントがとにかく安定しない。即興劇・・・要はアドリブの積み重ね・・・で作っているという推測が正しいとすると、会話で緻密に笑わせる感覚とは、かなりかけ離れてしまう。けれど「コメディアス」だし、「段差インザダーク」のタイトルだしで、私は笑う態勢になってる。その部分のチグハグさが、どうにも気になってしまった。ひょっとしたら、創る側は「笑わせる」つもりは無いのかもしれない。笑いたいのに笑えない。でも目は離せない、っていう、どこに感情を向けてみたらいいのか迷うような感覚が、客席全体に漂っていたように感じた。
・・・と、観ていて不満も大きくあったけれど、今まで観た事が無いタイプの演劇、というのは確か。新鮮で、興味深かった。団体紹介にある、「HDMIやD-subを用いビデオカメラのデータをモニターに映し出すまでを描くコメディ」とか、観てみたい。むしろ、「コメディ」という要素を少し抑え目に期待して観に行く方が、面白く観れるかもなぁ、と思った。
加えてメモ。観たのは、初日の舞台。ご神体が段差から落ちて倒れてしまい、もう一度段差を運びなおすシーンがあったが、これはハプニングだと思った(ストーリー通りなのか…いやそんな事はないはず)。上演時間が、予定より10分ほど長かったのは、この回復で段差を運び上げる流れが追加されたからかもしれない。結構重いものが倒れたのでビックリしたけれど、役者さんの回復の演技、淡々と運びなおすのが素晴らしい。即興劇的な作り方をしているのかな、と思ったのはこの回復の様子を見ての事。