<観劇レポート>キ上の空論「朱の人」

#芝居,#キ上の空論

【ネタバレ分離】昨日観た芝居、 キ上の空論「朱の人」の観劇レポートです。

公演前情報

公演・観劇データ

項目データ
団体名キ上の空論
#15
朱の人
脚本中島庸介(キ上の空論)
演出中島庸介(キ上の空論)
日時場所2022/04/13(水)~2022/04/17(日)
本多劇場(東京都)

CoRich 公演URL

団体の紹介

CoRichにはこのような記載がありました。

キ上の空論とは、
2013年12月旗揚。 リジッター企画 中島庸介の別ユニット。 言葉遊びや、韻踏み、擬音の羅列や呼吸の強弱など、会話から不意に生まれる特有のリズム『音楽的言語(造語)』を手法に、ありそうでない『日常』をつづる。
・・・HP製作中。

公演HP

過去の観劇

事前に分かるストーリーは?

こんな記載を見つけました

おしゃべりだった兄の話をしようと思って、

兄は1999 年の夏に、はじめてセックスしたらしくって、それは全然好きな女じゃなかったらしいんだけど、見栄を張る為だけに、その、“いたした”らしくって。見栄が兄のだいたい全部だったので・・・そう、それで、中学2年生の兄は底抜けに明るい男で、制服のズボンをケツまで落として、父のマルボロをくわえて、それは僕からしたら『無敵』だった。あの時は本当に、兄は世界の中心だったと思うんです。
それで、兄が高校1年生の時、ええ、演劇に出会ったのが、兄の不幸の始まりでした。

先に言っておくと、兄はこの先、壊れます。

それで、あともう一つ言っておきますと、これは「演劇」の話ではなくて、まずそれは違くて、まずこれは、「兄」という「人間」の話で。壊れていく「兄」と、滅んだ「僕」と。あと、兄に関わった、兄を愛したり、憎んだりした「周りの人達」の。

まぁ別に大した話じゃありません。

ネタバレしない程度の情報

観劇日時・上演時間・価格

項目データ
観劇日時2022年04月14日
19時00分〜
上演時間125分(途中休憩なし)
価格6700円 全席指定

チケット購入方法

カンフェティでチケットを購入しました。

客層・客席の様子

男女比は3:7くらいで若干女性が目立つ。
年齢は、女性は様々。男性は、40upが目立ちました。

観劇初心者の方へ

観劇初心者でも、安心して観る事が出来る芝居です。

芝居を表すキーワード
・シリアス
・会話劇
・考えさせる

観た直後のtweet

満足度

★★★★★
★★★★★

(5/5点満点)

CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
ここから先はネタバレあり。
注意してください。

感想(ネタバレあり)

キ上の空論は、昨年観た「ピーチオンザビーチノーエスケープ」に続いて2作目。ストーリーの冒頭は、事前記載の通り。兄は、この後兄は劇団を作り、演劇を極めようとする。お金の問題や、他者への嫉妬の中で、徐々に狂っていくお話。

演劇を通して、表現をつくる時の人のどうしようもなさ。そして、観客が表現の中に何かを求めてしまう事のどうしようもなさを、暗部から光をあてて描いたような作品に思えた。

演劇を「観る」立場の観客として、観ていてとても、痛くて仕方なかったが、受け取る側によって大きく感想が変わる作品だとも思う。演劇にそれ程親しみの無い人であれば、演劇を創るって大変なんだなぁ、という個別の事例に映るかもしれないし。あるいは演劇を「創る」側にいる人であれば、余りに身を斬られるような内容に映るかもしれない。

私自身は当然、観る立場、観客の視点で物語を捉えるとすると。

劇中、主人公が主宰する劇団の渾身の作の公演中に、東日本大震災が襲う。震災をどこか「劇的」であるように描かれる。その後しばらくして劇団は、震災をテーマに組み込んだ劇を上演するが、それが「客の心を動かせば、テーマは何でもいいのか」という反論を呼ぶ。「震災は大変だった。がんばろう日本」的な演劇にも、そこに傷つく人が必ずいるし、それは一種の「感動を呼び起こすための題材のひとつ」でしかない。

客は感動したがっている。それが、何に由来したかなんて、実はそれほど気にしていないし、気にしたところですべてが分かる訳でもない。話し好きだった兄が、劇団の女優にパワハラをして、自分の弟と元彼女の死をネタにしたとしても、それを知り様もない。その期待に応えようとして、あるいは応えたいと望んで、主人公はどんどんと狂っていく。

客はプレッシャーの存在を、どこか心の底で気が付いているのかもしれない。それでも感動したくて、その存在に…創り手の苦悩に、お金という対価を払う事で、目を背けようとしているのかもしれない。…その実際の裏側を、つまびらかに見せつけてくる、嫌な部分をえぐり出すような作品だった。

「まぁ別に大した話じゃありません。」というストーリーの通り、その苦悩はスポットライトを浴びることは稀だ。観客は、そんな「内側の苦悩」なんて、望んでいないから。私自身は、観ていて、一度も涙する事は出来なかった。泣くことがとても偽善に思えたからだ。ひょっとしたら誰かが狂っているのかもしれない。それでも、「大した話じゃない」と弁解しながら、これからも演劇を観続けて「消費」するのかもしれない。その自分の行動を思うと、とても涙なんてでない。むしろ「消費」する事を求めている自分自身の強欲さと、対峙するしかなかった。

圧倒されて、役名を記憶できてない。テツキを演じた、村田充、藤原祐規、が、どちらもとても印象的。久下恭平の狂言回し的な弟も印象的。