<観劇レポート>演劇プロデュース『螺旋階段』「静寂に火を灯す」
【ネタバレ分離】昨日観た芝居、 演劇プロデュース『螺旋階段』「静寂に火を灯す」の観劇レポートです。
もくじ
公演前情報
公演・観劇データ
項目 | データ |
---|---|
団体名 | 演劇プロデュース『螺旋階段』 |
回 | かながわネクストvol.1 |
題 | 静寂に火を灯す |
脚本 | 緑慎一郎 |
演出 | 緑慎一郎 |
日時場所 | 2022/05/05(木)~2022/05/08(日) スタジオ「HIKARI」(神奈川県) |
団体の紹介
劇団ホームページにはこんな紹介があります。
2006年小田原にて。
居酒屋にて緑慎一郎、田代真佐美、上妻圭志、三春瑞樹の 四人で集まり劇団をやることを決意。酒の勢いで最初は 「マッチ小屋」という名前だったが朝起きたらこれは駄目だと緑が演劇プロデュース『螺旋階段』に改名。
以後、年に二回のペースで公演している。 小田原を秋公演、横浜を春公演に現在は落ち着いている。 全て緑慎一郎が脚本と演出のオリジナル作品を上演。 2016年に演劇プロデュース『螺旋階段』十周年を迎えた。
事前に分かるストーリーは?
こんな記載を見つけました
2000年代初頭。
かつて店頭販売していたみちのく製菓は通信販売とネット販売に業務形態を切り替えた。
大ヒット商品「海猫サブレ」はメディアにも取り上げられて従業員を雇えるようになった。
2002年3月に三十五歳の東北智明は自ら命を絶った。
智明は二十三歳の時から自宅に引き籠って暮らしていた。
ごくごく平凡なある日、智明はこの世からいなくなった。
あまりの唐突さに上手く受け止められない家族と従業員たち。
四十九日で集まった家族と友人たちは智明を想い出すようにして語り始める。
いるのに、いなかった息子。
いるのに、いなかった兄。
いるのに、いなかった友達。見えていなかったことが見えてきたとき、一人の男の人生がわかってくる。
ネタバレしない程度の情報
観劇日時・上演時間・価格
項目 | データ |
---|---|
観劇日時 | 2022年5月6日 14時00分〜 |
上演時間 | 110分(途中休憩なし) |
価格 | 2500円 全席自由 |
チケット購入方法
公演のページからのリンクで、CoRichで予約しました。
当日、受付で現金てお金を支払いました。
客層・客席の様子
男女比は5:5くらい。
様々な年代のお客さんがいました。
観劇初心者の方へ
観劇初心者でも、安心して観る事が出来る芝居です。
・会話劇
・考えさせる
観た直後のtweet
演劇プロデュース『螺旋階段』「静寂に火を灯す」110分休無
小田原のサブレー屋を舞台にした、螺旋階段らしい人情劇。スロースタートで離陸にかなり時間かかったけど、ラストの展開はいろいろ考えた。結局分からなし、分かり様もないのだけれど、それでも理由を求めてしまう。肉親なら尚のこと、かな。 pic.twitter.com/1KuttVKSyE— てっくぱぱ (@from_techpapa) May 6, 2022
満足度
(4/5点満点)
CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
感想(ネタバレあり)
小田原の「海猫サブレ」を販売している、家族経営の会社。姉妹は家業に精を出しているけれど、兄は、工場兼自宅の奥に引きこもっているらしい。幼馴染や、長く働いている事務のおばさんや、姉の夫、兄の幼馴染など。兄と関係があった人が、自然と集まっているその場所。しかし兄はある日、自殺をしてしまう。四十九日の法要の中で、兄について語るお話。
本編の2/3くらいは、「海猫サブレ」を扱う小さな会社を舞台にした、螺旋階段が得意とする人情劇がメインなのかと思っていた。緻密に組み上げられた「みちのく製菓」の事務所エリアのセットで展開される、人々の営み。ただ、特に何か物語が展開する訳ではないので、分からない事は何もないのに、何の話だろう?と、ちょっとイライラする。一度だけ登場する、引きこもりの兄。この雰囲気だと、再度人生を歩み出す、前向きな物語のようにも思うのだけれど、兄は自殺してしまう。皮肉にもそこから、眠っていた物語が動き出す。
四十九日の法要で語られるのは、一言で言えば「兄への疑問」。何故彼は引きこもったのか。何故死なねばならなかったのか。で何も語らずに死んだ兄を前に、その疑問は誰にも分からない。兄の部屋に一番出入りしていた妹でさえその事は分からず、妹に心を寄せている幼馴染が、兄にかけた最後の言葉が引き金だったのでは?と疑心暗鬼になっている。
結局のところ、兄の問題は兄が解決すべき事だった。寄り添う事は出来ても、自分の脚で歩き出す事は、兄自身にしか出来なくて。・・・でも、何か出来たんじゃないのか、自分が悪いんじゃないのか・・・という罪悪感のようなものも付きまとって。その割り切れない感情の中、四十九日の法要で語られる、それぞれの「兄の姿」を浮かび上がらせる作品だった。2/3くらいの日常の描写がないと、兄の死後の描写が出来ないのは、観終わった後には合点いったけれど、物語の比率として、兄の死後の時間を、もう少し長く描いて欲しかったな・・・という想いを持った。
気になった役者さん。劇団スクランブルでも拝見した中根道治、ボーリングの球は持たずも、ちょっと不敵な笑みが印象的。木村衣織、姉の考え方が私自身に近いのもあってか、表面上は素っ気ない態度に納得。岡本みゆき、あ、こんな事務の人いるいる、って感覚。キーボードを確実に打つ後ろ姿が、会話のシーンの背後に見えているのが、何だか生々しかった。