<観劇レポート>カラスミカ企画「だらしなくあいた唇」

#芝居,#カラスミカ企画

【ネタバレ分離】昨日観た芝居、 カラスミカ企画「だらしなくあいた唇」の観劇レポートです。

公演前情報

公演・観劇データ

項目データ
団体名カラスミカ企画
だらしなくあいた唇
脚本ヒナタアコ
演出ヒナタアコ
日時場所2022/07/22(金)~2022/07/24(日)
パフォーミングギャラリー&カフェ『絵空箱』(東京都)

CoRich 公演URL

団体の紹介

団体紹介を見つけられなかったのですが、ヒナタアコさんが主宰している団体のようです。

カラスミカ企画

事前に分かるストーリーは?

こんな記載を見つけました

私の中には ワタシが住んでいる
平気な顔をしている私の足元で
いやだいやだと泣き喚く
まるでこどものワタシが、いる

そのまま歩いていたら
きっとある一定数の幸せを得続けていられた
この気まぐれは「駄目」だと分かっていた
でも 私の指はまるでワタシのものみたいに
スマートフォンの画面を滑っていく

『Noir』
夜の住宅街の寂しさを引き連れて
紛いモノの春を売る貴方が
今日も私の部屋に滑り込む

私に触らないで/わたしをはなさないで
優しくしないで/やさしくして
もう誰も信じない/まだだれかしんじたい

救って欲しい/ねぇ、だれに?

ネタバレしない程度の情報

観劇日時・上演時間・価格

項目データ
観劇日時2022年7月22日
19時30分〜
上演時間110分(途中休憩なし)
価格3200円 全席自由

チケット購入方法

Twitterからのリンクで予約しました。。
当日受付で、現金でお金を支払いました。

客層・客席の様子

男女比は5:5くらい。
様々な年代のお客さんがいました。

観劇初心者の方へ

観劇初心者でも、安心して観る事が出来る芝居です。

芝居を表すキーワード
・シリアス
・会話劇
・考えさせる
・シンプル

観た直後のtweet

満足度

★★★★★
★★★★★

(5/5点満点)

CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
ここから先はネタバレあり。
注意してください。

感想(ネタバレあり)

自分なりの強引なストーリーまとめ

優しい彼氏もいて、仕事も普通で、順調に生きている25歳の女性、亜咲美。母子家庭で育ち、近くに住む夫と子持ちの姉がちょっとうるさいけれど、特に困った事もない。ある日、たまたま見かけた、女性向けの派遣型の風俗の広告に目が行き、魔が差した・・・というか興味本位で頼んでみる。久住、という男に魅了され、何度か頼むうちに、幼い頃のトラウマを共有することがきっかけで、お互いの距離が縮まっていく。それがきっかけで、彼氏とは破局し、姉とはどこか距離が出来てしまう。久住に傾倒してしまえばいい・・・という気もするが、「愛している」とは言うものの、一線を越えてこない久住。亜咲美は、「風俗」としての久住を愛し続け、その隙間を別の男で満たすことを選ぶ。

感じた事

「亜咲美」と、「姉」「彼氏」「風俗キャストの久住」との、ダイアローグが積み重なる形で描かれる物語。そして、亜咲美の中の内面の声・・・のような、どこか理性的な女性が、彼女の心の中の声を代弁するかのように(亜咲美とは別の役者が演じる形で)語りかける。会話と内面の説明のみで展開される物語。気がつくと、客席が水を打ったように静かで、亜咲美の一連の物語を聴き逃がすまいとなっていたのが印象的。

引いた目線で、あえて軽い言葉で表現するなら・・・出来心で風俗に手を出してしまった女性がのめり込み、彼氏を失い、愛する事は歪んだ形でも存在しうる・・・という事を肌感覚として理解する成長過程のお話・・・なのかな。軽く書き下すと、まあ、そういう物語もあるよね・・・という醒めた見方になってしまうのだけれど。内面の心理的な描写や、会話の行間、ちょっとした表情やしぐさに、とてもよく表れていて、一人の女性が何かに「気付く」様を、ものすごく丁寧に描かれたものを目撃した・・・という感覚が強い。

母子家庭で育った亜咲美が、母親が彼氏とする獣のようなセックスをリビングでするのを目撃してしまい、それがトラウマになって、リビングでは手をつなぐ以上の事が出来ない、と久住に告白する。その告白が、二人を親密にするきっかけになると同時に、後半、久住との関係を迷う段では、そんなトラウマは消えてしまっている。幼い頃目撃する親のセックスなんて悪夢でしかないけれど、一方で、そういう歪んだものがある事を受け入れていくのも必要なことで。それは、姉の価値観・・・姉の歪みと、亜咲美自身の歪みが、決して交わることがない事にも対応していて。25歳の亜咲美の視点で、その歪みを、えぐり取るように切り取っているように思える。

作者は、ヒナタアコ。おそらく女性だと思うが、観ている途中から、この脚本を書いたのは何歳くらいの人だろう、と思った。私が観た回は、いろんな年代の客がいたけれども、観る側の年齢でも、あるいは性別でも、見える光景が全然違うだろうな。ただ、25歳の女性の内面に近い描写にも関わらず、幼い視点・・・という気が全くしないのが不思議だな、と思う。歪んだ愛の視点を提示する事で、かなり先の、醒めた部分までも見通しているようにも思えるのが、どこか怖いな、と感じた。