<観劇レポート>オフィスプロジェクトM「世の中と演劇する The three plays」
【ネタバレ分離】昨日観た芝居、 オフィスプロジェクトM「世の中と演劇する The three plays」の観劇レポートです。
もくじ
公演前情報
公演・観劇データ
項目 | データ |
---|---|
団体名 | オフィスプロジェクトM |
題 | 世の中と演劇する The three plays |
脚本 | 丸尾聡、玉村徹 |
演出 | 丸尾聡、鈴木一功、大島寛史 |
日時場所 | 2022/07/28(木)~2022/07/31(日) アトリエ第Q藝術(東京都) |
団体の紹介
プロデュース色が強い公演のようですが、ホームページには以下の記述があります。
「世の中と演劇する」は、前にやっていた劇団の名前についていたものです。
と⾔いつつ、やっていた芝居はこれはもう⾊々でして・・・
ウェルメイドなコメディあり、キャバレーのショーガールたちの話あり、かと思えば死刑の>問題や砂糖をめぐる社会の話、別役さんや岸⽥理⽣さんも。
何をやろうとしているか、わからん劇団と⾔われ、⾃分でも、そうだなあ。
で、しばらく⾃分でプロデュースする公演をやっていなかったのですが、理由はほかにもありますが、また始めるきっかけは『明⽇のハナコ』でした。ハナコはかわいそうな戯曲で、差別的な戯曲であるとされ、戯曲集が回収され、予定されていたテレビ放送はされず、差別的な戯曲ではない、と公式に発表されてからも、放送はされず、その収録 DVD は作者にも渡されません。
恐ろしいのは、この事件が「表現の⾃由」「作家や⾼校⽣の⼈権」の問題あるという意識が、決定を下した⽅々、そして、特に東京を拠点とする多くの演劇関連団体になかったことです。
この福井の⾼校演劇をやらなければいけない、と思い、東京と神奈川で 3 ⽉にリーディング公演をしました。リーディングと⾔いつつ、動き回り、台本を外してやるシーンもあり、割と悪くない評判でした。
そしてハナコ上演の動きは、今も全国に広がっています。
でも、まだこの芝居を⾒た⼈は全国で 1000 ⼈もいないだろう。もう⼀度やらなければ。
もともと演劇は「世の中」を相⼿にやるもの、反権⼒、反体制的な要素を含んでいることが多い。でも、今回はあえて、あえて世の中と演劇します。
昨今は、反権⼒が芝居をダメにした、なんてご意⾒も SNS で流れます。
にも関わらず、戦争は起き、物価は上がり、⼩劇場で芝居をやるにも団体を国に登録して、税⾦を納めなければならないことになってきました。楽しい、⾯⽩い芝居もちろんオーケーです。
そんじゃあ、世の中と演劇しながら、⾯⽩いのをやろうじゃないの、というのが今回の企画。
『茶⾊の朝』と『23分間の奇跡』は、ほぼほぼ⼀⼈芝居。
この 3 本の芝居、The three plays を、世の中と結びつつお届けします。
どうなりますことやら。あ、ハナコは今回もあえてのリーディングです。
その意味は、是⾮ご覧になってお確かめいただければ。ただのリーディングじゃありませんけれど。
どうか劇場に⾜をお運びくださいますよう。
ご無理な⽅は配信もございます。
どうか⽬撃してください。総合プロデュース 丸尾聡
事前に分かるストーリーは?
こんな記載を見つけました
出演:水先案内人 鈴木一功
play1『茶色の朝』
原作:フランク パヴロフ 藤本一勇 訳
演出・上演台本・出演:丸尾聡play2『23分間の奇跡』
原作:ジェームス・クラベル 青島幸男 訳
演出:鈴木一功 上演台本:丸尾聡
出演:松坂わかこplay3 スタンディングアクションリーディング 消されかけた演劇 『明日のハナコ』
作:玉村徹 上演台本:丸尾聡 演出:大島寛史
出演:江花実⾥(架空畳)、⻫藤沙紀(劇団新派)、⼤島寛史(チリアクターズ)、茂⽊修⼆(湘南テアトロ☆デラルテ)、丸尾聡
※大島寛史と茂木修二はWキャストとなります。
28日(木)・29日(金)は大島寛史、
30日(土)・31日(日)は茂木修二が出演します。
ネタバレしない程度の情報
観劇日時・上演時間・価格
項目 | データ |
---|---|
観劇日時 | 2022年7月28日 14時00分〜 |
上演時間 | 110分(途中休憩なし) |
価格 | 3500円 全席自由 |
チケット購入方法
CoRichのページから予約しました。
当日受付で、現金でお金を支払いました。
客層・客席の様子
男女比は5:5くらい。
30代位の客と、50代upの客層にが多い気がしました。
観劇初心者の方へ
観劇初心者でも、安心して観る事が出来る芝居です。
・シリアス
・会話劇
・考えさせる
観た直後のtweet
オフィスプロジェクトM「世の中と演劇する The three plays」110分休無
短編2本と「明日のハナコ」の3本。面白かった。ハナコ、こんな話だったのか。公開を止めたい側の論理も分かる気も(許せんけど)。リーディング公演だけど、後半台本見てないし、普通に演劇でその変化がむしろ効果的。オススメ! pic.twitter.com/yABZCB6TIM— てっくぱぱ@観劇垢 (@from_techpapa) July 28, 2022
満足度
(4/5点満点)
CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
感想(ネタバレあり)
短編演劇2本と、中編(高校演劇)1本。どの作品も、戦争や政治に関連しそうな3本。気がつくとウクライナで戦争がはじまり、「戦争」という言葉が、どこか現実味を帯びてきている世の中で。政治や社会問題への無関心の怖さ・・・みたいなものを描く3本。正に、世の中と演劇する、作品群。水先案内人が作品の合間をつなぎながら、休憩なく3本の作品が上演される。
それぞれの作品についてメモしておく。
『茶色の朝』
"茶色党"の政策で、色が茶色の犬猫しか飼う事が許されず、それ以外の動物を殺した。最初は影響ないと思っていたのに。気がつくと「過去に、茶色以外の色の動物を飼ったことがある人」まで、罪になるようになってしまった。徐々に迫る全体主義の怖さと、政治への無関心を描いた、ひとり芝居。基は小説のよう。茶色・・・という曖昧な何か。なぜ茶色がいいのか・・・どうやら科学者が「いい」と割り出したらしいのだけれど、腹に落ちる説明がされる話でもなく。その得体のしれない「茶色」がジワジワと襲ってくるのが怖い。
『23分間の奇跡』
占領した国の学校。朝の授業開始。敵国から来た女性先生の授業が始まるが…一見優しそうに見えて、それは、同調圧力、集団心理を利用して、ジワジワと子供たちを洗脳していく教育・・・というお話。ほぼ、女性教師の一人芝居。「奇跡」というタイトルで、どう奇跡なのか・・・を分からないまま観たけれど。ラストまで観終わると「奇跡」の意味が皮肉。占領国の教育・・・というと、戦後アメリカに占領された際に確立された日本の教育、を思い出したり。あるいは、教育全般に、こういう怖さを含んでいるんじゃないか・・・という想いがあったり。ロシアでは、今のウクライナの戦争を、子供たちにどう教えているのだろう・・・と思ったり。
スタンディングアクションリーディング 消されかけた演劇 『明日のハナコ』
昨年の9月、高校演劇で上演された作品。コロナで無観客上演だったが、地元ケーブルテレビ局で放送される予定も・・・諸々の圧力で、放送されず、脚本まで改修された作品。そのご、「明日のハナコ」を上演する署名等が広がり、日本各地で上演が始まった作品。東京でも、知っている限り2回上演会があった。本公演の「お目当て」の作品。
原発の問題を、歴史的な事実をベースにかなりストレートに捉えつつも、必ずしも「原発=悪」という捉え方ではなくて、葛藤の一環の問題として描いているのがいい。「演劇やるのには、電気も必要だし、ペットボトルで飲んでるし。原発がないと原発を批判する演劇すらできない」という矛盾。東日本大震災以降、この風潮は当然変わってきているけれど、
リーディング公演との事。冒頭は確かに、殆ど動きの無い、立ったまま台本を読むスタイルから始まるものの、ラストの方は、演者も殆ど台本を持たず、散らかり切った舞台をうまく活用した(リーディングでない普通の)演劇になっていたのが効果的。リーディング脚本の世界が、徐々に演劇として立ち上がってくる様子が、この脚本「明日のハナコ」が黙殺されつつも、これだけ話題になって立ち上がっていく様も含めて、比喩的に上手く表現されているのが巧みだった。