<観劇レポート>庭劇団ペニノ「笑顔の砦」
【ネタバレ分離】昨日観た芝居、 庭劇団ペニノ「笑顔の砦」の観劇レポートです。
もくじ
公演前情報
公演・観劇データ
項目 | データ |
---|---|
団体名 | 庭劇団ペニノ |
題 | 笑顔の砦 |
脚本 | タニノクロウ |
演出 | タニノクロウ |
日時場所 | 2022/09/10(土)~2022/09/19(月) 吉祥寺シアター(東京都) |
団体の紹介
劇団ホームページにはこんな紹介があります。
■劇団プロフィール
2000年1月、昭和大学演劇部メンバー有志にて「庭劇団ペニノ」を結成。自宅マンションを改造した劇場スペース「はこぶね」や野外での公演など、作り込んだ舞台美術とともに上演空間には透徹したこだわりを持つ。「フェスティバル/トーキョー09秋」や「ふじのくにせかい演劇祭」、「KYOTO EXPERIMENT」など国内の主要な国際舞台芸術祭に多数招聘。『苛々する大人の絵本』は09年にベルリン(独)、10年にチューリッヒ(スイス)、グロニゲン(オランダ)などで上演され、スイスの著名な演劇賞ZKB Patronage Prize 2010 にノミネートされた。また『誰も知らない貴方の部屋』のアメリカ5都市ツアーを行い好評を得た(2014年)。2015年『大きなトランクの中の箱』がウィーン芸術週間、世界演劇祭にて招聘され、ウィーン地元紙で五つ星の評価を得た。2016年『地獄谷温泉 無明ノ宿』ではヨーロッパ4カ国ツアーを行ない、高い評価を得た。2018年、ジャポニスム2018の公式企画としてフランス・ジュヌビリエで「ダークマスター」と「地獄谷温泉 無明ノ宿」を連続上演し、話題となる。また、近年VR演劇作品「ダークマスター VR」を発表するなど、活躍の場を広げている。
過去の観劇
- 2023年05月15日 KAAT神奈川芸術劇場「虹む街の果て」
- 2021年06月12日 KAAT神奈川芸術劇場「虹む街」
事前に分かるストーリーは?
こんな記載を見つけました
「この人生、酒のツマミになればいい。」
ただ食って、ただ飲んで、ただただ笑っていたかったー。
小さな漁港町にある平屋のアパート。
地元の漁師たちが寝食を共にし住み込んでいる。
そのアパートに認知症患者を持つ家族が引っ越してくる。
賑やかに過ごす漁師たちと、介護に奮闘する家族の部屋が隣り合う。
まるで対照的な二つの部屋、二つの時間。
だが、両者は互いに影響しあい、日常が変化していく。
2016年岸田國士賞を受賞したタニノクロウの、物語作品の原点。
昨年のフランス公演を経て、いよいよ国内最終公演へ。
ネタバレしない程度の情報
観劇日時・上演時間・価格
項目 | データ |
---|---|
観劇日時 | 2022年9月15日 19時00分〜 |
上演時間 | 130分(途中休憩なし) |
価格 | 4500円 全席自由 |
客層・客席の様子
男女比は、8:2で男性多し。
全体的に40代upが多く。女性は若い人もチラホラ見かけました。
観劇初心者の方へ
観劇初心者でも、安心して観る事が出来る芝居です。
・情景の描写
観た直後のtweet
庭劇団ペニノ「笑顔の砦」130分休無
劇団2度目。前回観た「虹む街」がストーリーより情景描写で。今回もそんなのかなと思ったけど。思いの他情景に意図を持たせてる感が見えて理解しやすい。引き込まれて、日常はちょい退屈なのでちょっと船漕いで、起きてやはり日常。緒方さんいいなぁ。オススメ! pic.twitter.com/3wC8yqzJAt— てっくぱぱ@観劇垢 (@from_techpapa) September 15, 2022
満足度
(4/5点満点)
CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
感想(ネタバレあり)
前回観た(正確には、前回はKAATの主催公演で、庭劇団ペニノの公演ではなかったが)「虹む街」以来、タニノクロウ作品二度目の観劇。「虹む街」は、横浜とも異世界ともつかない、どこかの場所の、情景描写のような切り取りをした演劇。これまで観た事がないタイプの演劇だったので、もう一作観てみたいと思い、二度目の観劇。
ストーリー…というより、状況は、事前紹介のストーリーの通り。寂れた漁師町のボロアパート。舞台には横並びに、左右対称ほぼ同じ間取りの部屋が並ぶ。それぞれの部屋で展開する物語を、ただただ抑揚なく、生活感とともに描く作品。
舞台セットが緻密。客入れ時は、幕で仕切られてて見えない舞台。開演後に見える、緻密なセット。台所のさびれ具合や畳の傷み具合までが、ものすごくリアル。生活感・・・というのは正にこの事なのかなと、圧倒される。・・・ちょっと混乱したのは、横並びの二つの部屋は、「演劇として見せるために」、壁に四角い穴が開いているのだけれど(穴がないと、上手の人は下手側の部屋の様子が見えない)、これは「住む人が少なくなって、部屋をぶち抜いて2部屋、スイートルームとして使うようになった」のではないか?と思った事。・・・要は、舞台美術の各所があまりにもリアルすぎて、演劇としての嘘、がどこまで入り込んでいるのかに戸惑う。2つのへやの仕切りの板と、庭に続く窓は、客席から部屋の様子を見せるために取り除かれている。
途中途中で登場する料理・・・おでんや、朝ご飯・・・の匂いが、客席まで漂ってくる。・・・客入れの時、まだセットを見ていない状況なのに、何だか、こういう家に独特な「たくわん」のような匂いがしたのは気のせいだろうか。とにかく、舞台から客席に漂ってくる匂いでもが、「生活感」を演出として浮き立たせて来る。
緒方晋が演じる、小さな漁師の船長と、その乗組員たちとのやり取り。縁側に住みついている猫に餌をあげるが(劇中、明確な説明があったわけでは無いのだけれど)、猫が死んでしまっているのと。その隣に引っ越してくる、認知症の70代くらいの母と、50代くらいの息子。「海が見たい」という言葉に寄り添って引っ越してきたが、生活はままならず。20代の娘は、どこか生活にイライラしながら、それでも父親に寄り添おうとする姿と。
例えば、「独り者の漁師が、突如寂しさを感じる話」とか、「認知症の母にイライラしつつも、息子としての役目を果たそうとする息子と、その娘」とかいう、「意味」「ストーリー」「教訓」として、上記の状況が語られる訳では、まったくもって、無いのだけれど。横から観ていると「多分そういう状況なんだろうなー」の積み上げで語られる、生活。・・・当然、日常の生活は他人への見せものではないのだから、説明なんてあるわけでは無いのだけれど。そういうものを観客に想像させながら、生活感のある世界を一つのありふれた世界観として立ち上げる。そんな、正に他人の人生という「(箱)庭を覗くような」演劇だった。それ故か、やはりどこか独特の「退屈感」があって。途中2度ほど、意識が遠のいて船をこいだ、けれど。他人の日常を覗くって、そもそもそういう事なんじゃないかなぁ・・・と、納得のいく睡魔だったのが面白い。
気になった役者さん。緒方晋。何度か拝見している役者さん。好きだなー。もう。セリフ回しだけで、漁師で、緒方晋で。「役者」と「役そのもの」と。両方に魅了されるってこういう事だろうなぁ。観ていて飽きなかった。