塩原俊之自主企画興行「AFTER塩原JUNCTION」
【ネタバレ分離】
どもっ\(´▽`*)。てっくぱぱです。昨日観た芝居の感想です。
もくじ
公演前情報
公演・観劇データ
塩原俊之自主企画興行
「AFTER塩原JUNCTION」
3話オムニバス
『笑の太字』
脚本・演出 冨坂友(アガリスクエンターテイメント)
『天気予報を見ない派』
脚本 南出謙吾(らまのだ/劇団りゃんめんにゅーろん)
演出 森田あや(らまのだ)
『いまこそわかれめ』
脚本・演出 目崎剛(たすいち)
期間 2019/02/15 (金) ~ 2019/02/19 (火) イズモギャラリー
観劇した日時 | 2019年2月15日 19時30分〜 |
価格 | 2500円 全席自由(事前にネット予約) |
上演時間 | 110分(途中休憩なし) |
Corich満足度 | ★★★★★(5/5点満点) |
客席の様子・観劇初心者の方へ
一人観劇が多かったです。小さい小屋なので、関係者も目立ち。
初心者にもお勧めできる公演です。
AFTER塩原JUNCTION?
アガリスク・エンターテイメントの塩原俊之が企画する自主ユニットのようです。
今回が旗揚げ公演のようで、ホームページにキックオフに際してという文が掲載されています。
AFTER塩原JUNCTION
先日観たアガリスクエンターテインメントの作品が面白かったことと、「笑の太字」というタイトルに惹かれた事、先日観た「青いプロペラ」の「らまのだ」のお二人が参加している事、が観劇のきっかけです。
事前に分かるストーリーは?
『笑の太字』『天気予報を見ない派』『いまこそわかれめ』の3話オムニバスのようです。あらすじに関しては、チラシの裏面のみに記載がありました。
感想(ネタバレあり)
3話オムニバス。
「笑の太字」
大学の演劇科脚本専攻の教室。卒業製作に三谷幸喜の「笑の大学」を丸々文字に起こしたものに、「笑の太字」(ふとじ)とタイトルを付けて提出した生徒と、その提出物を受け取った担当講師との物語。三谷幸喜は、自らの作品を出版しないし、他人が上演することを一切禁じている事は有名だが、その事実を逆手に取った物語。
私も「笑の大学」大好きなので、少し冷静に見れない部分もあるが・・・「笑の大学」という作品、そして三谷幸喜への愛、笑いを脚本にする冨坂友の決意がひしひしと伝わってきた。ディティールまで「笑の大学」をオマージュしているセリフや動きが多くて、何度もクスクス笑をしてしまった。
説明するのは野暮だという事は承知の上で説明すると、「笑の大学」は、多重な意味を持っている作品だ。一つは、純粋に戦中日本の「検閲」に交わる話。一つは、劇団の名前である「笑の大学」が、検閲官とのやり取りを通して「笑い」とは何かという事を再認識する、正に学びの場である「大学」になってる物語。そして、どんなに制約事項が発生しようとも、全てその要素を「笑い」に変えてやる、という、三谷幸喜の決意みたいなものを表現している(かに見える)物語だ。何より素晴らしいのは、この「笑い」に対するストイックな姿勢のテーマを、この「笑の太字」も同じように兼ね備えていることだと思う。担当講師と生徒とのやり取りは、プロットこそ違え、向坂と椿の物語そのものだ。「笑の大学」という多重構造の作品を、単にパロディするだけでなく、更にパイ生地を重ねるかのように多重構造にして、しかも決意とオマージュが含まれている。こんな素晴らしい脚本があったのか・・・と思った。
この作品、再演のようだが、2016年の初演の4バージョンを観劇三昧で視聴することができる。今回の作品は、Cチームのキャストと同じ座組での再演。
「笑の太字 Cチーム 淺越岳人/塩原俊之」
「笑の太字 Aチーム 熊谷有芳/前田友里子」
「笑の太字 Bチーム 甲田守/津和野諒」
「笑の太字 Dチーム 鹿島ゆきこ/沈ゆうこ」
「天気予報を見ない派」
結婚して離婚して。四畳半一間のアパートに、大学時代の元彼氏を「同窓会」と偽って呼んで、ひと時を過ごした二人の時間を切り取った物語。
小さな小屋を、雰囲気やトイレも含めて存分に使って。懐かしい空間を蘇らせる事で、追憶と喪失感を余すところなく描く。流れる時間が寂しくて、愛おしくて、そんな一瞬を切り取った作品。
らまのだらしい、というのか。何か決定的に欠けてしまったものを表現することで、その空間への愛おしさ、喪失感を表現する。
どこか、ぎこちなく進む二人の会話。買い物に出かけた女を待つ男や、卵を買い出しに出る男。暗転の中で語られる、言葉にならなかった言葉。何かが欠けた要素が舞台に登場すると、そこで浮き彫りになる不在のモノ。その場所に「居る」というよりは、その場所に「居た」という、過去形の会話。離婚して一人になって、どこか埋めきれない寂しさを満たすために、元カレを呼んでみても、当然そこにあるのは過去系。涙を流す・・・というよりも、二人の時間を観客も一緒に共有することで、その切なさをなぞるような芝居。
松本みゆきの表情が、もうそれだけで泣けてしまう。何かこの時間の「妙にゆったり」した感じに浸ってしまった。
観劇三昧でみれるらまのだの作品はこちら。
「明後日まで内緒にしておく」
「いまこそわかれめ」
卒業式の後に立ち寄った喫茶店。親友の男女が他愛もない話。気が付くと「仰げば尊し」の歌詞の意味を確認しだす。気が付くと浮き彫りになっていく「卒業」。そんな二人の、他愛もない空間を切り取った作品。
大和田あずさが可愛い。彼女の活発な可愛さが、作品の75%を占めているんじゃないだろうか。少女少女していない、どこかにいそうな高校生。「仰げば尊し」の歌詞を追いかけていく構成は、演出を間違えればものすごく「わざとらしい」お話になってしまうけれど、無邪気さと、上手い歌とで、そんな不安は全くなく。「卒業」というのが、二人が男女としての別れを表現しているのだとは思うが、観る側に解釈を委ねる余地も与えているようにも思う。ラスト、クレジットカードで払う下りが、成長している感を出しているのかな・・・。
作者は劇団「たすいち」の目崎剛。知らなかった劇団なので、次回作観に行かなくては。