らまのだ「明後日まで内緒にしておく」人間性を浮き彫りにする会話劇。
二面性を持ちながら、あがなえない人間の本質を浮き彫りにする会話劇。
ネットでお芝居が見れる「演劇動画配信サービス「観劇三昧」」。
今週本公演のある、らまのだの2016年公演「明後日まで内緒にしておく」を観たのでレビューします。
この記事を書いている段階では、「観劇三昧」でスマホ・パソコンで観劇出来ます。
らまのだ?
らまのだは、作家の南出謙吾の作品を、演出家の森田あやはが演出するユニット。
2015年活動開始という事で、まだ若いユニットですが。
南出謙吾は、「触れただけ」が第22回劇作家協会新人戯曲賞を受賞。
森田あやは、本作「明後日まで内緒にしておく」にて、若手演出家コンクール2016優秀賞を受賞。
正に優秀な若手のホープの劇団です。
田舎町の全寮制予備校の物語
観劇した「明後日まで内緒にしておく」は、田舎町にある、全寮制の予備校の物語。
予備校に集う教師と、生徒、卒業生たちの物語。業績不振の予備校。生徒も、先生も、まるで吹きだまりに迷い込んだかのような閉塞感を抱える中、大小、様々な事件が人々の心を揺さぶる。
ストーリーだけ強引にまとめると、こんな感じです。
誰もが持つ「二つの面」
この物語に登場する人物は、誰もが「二つの面」を持っている。
明るく振舞うも、生徒と密かに付き合う教師。
教師となし崩し的に付き合うも、どこか醒めていて機械のように勉強出来ればいいのにと考える女子生徒。
元気いっぱいだけれど、家庭の事情で授業料が払えなくなる女子生徒。
ベンツを買うくらい成功したように見せかけているけれど、実は会社を辞めて逃げてきた元予備校の生徒。
本部に言われた事を現場に厳しく突きつけつつも、実は家に残してきたペットの鳩が気になって仕方がない単身赴任の予備校教師。
本当は本部で現場に無茶な仕事を突きつける事にうんざりしているけれど、会社の意向に従わざるを得ない女教師。
予備校に集う人たちの「二つの面」を、緻密な会話によって明らかかにし、人間の本質的な部分を見せつけつつ、人が人に「寄り添う」とはどういう事かを問うている作品のように思えた。
ラスト、この予備校は一体どうなってしまうのだろう、という、歯切れの悪い場面で幕切れとなる。
日常の壊れた瞬間をあえて見せずに終わる訳だが、むしろその方が、その壊れてしまう過程を見るよりも、人間の本質を浮き彫りにする。
物語を語ることによって「浮き彫りになる何か」を、この劇団は目指しているように感じる。
話の分かりやすい会話劇として進行します。演劇初心者にも、深い作品を求める玄人にも、この作品はお勧めできる一本です。
演技派の役者たち
らまのだ3かいめ公演
『明後日まで内緒にしておく』無事、全公演終了しました。
ご来場くださったみなさま、応援してくださったみなさま、支えてくださったみなさま、本当に有難うございました。ひとまず、打ち上げ!#らまのだ #3かいめ pic.twitter.com/OjwXOEGD2s
— らまのだ (@lamanoda) 2016年12月4日
少人数での会話が繰り返されるシーンが多く、出演している役者は演技派ぞろい。気になった役者さんをピックアップしてみます。
斉藤麻衣子は、生徒たちのためと熱意に燃える予備校教師。受験を前にして突然本部に栄転になってしまう苛立ち。周りの教師たちに熱意の欠けらもないことへの苛立ち。そんなやり場のない苛立ちが、芯の強い女性の人格とともに表現されてました。
井上幸太郎は、ちょっと不真面目で生徒に手を出しちゃったりしている予備校教師。でもその実、実は結構優しくて、気を使っているっていうナイスガイな役どころ。小劇場だけでなく、幅広く活躍されている方ですね。
渋谷はるかは、本部からやってくる「社畜」な会社員。実生活でこんな人に会ったらお近づきには絶対になりたくない・・・な、嫌な面を前面に出す演技が、非常にマッチしていました。文学座の女優さん。
そして、らまのだ所属の西井裕美。安定と不安定の間で思い悩む浪人生の感じが、よく表れていました。残念ながら、彼女はらまのだ、は退団されているようですが、演劇活動は続けられているようですね。ピュアだけれど、どこか不純、な感じがよく似合う女優さんだと思います。
今週末の公演は…
らまのだ、2018年11月の今週末、シアタートラムにて、「青いプロペラ」を上演しますね。取り上げた俳優さん、斉藤麻衣子、井上幸太郎も、今回も出演されますね。是非観に行ってみたいと思います!
もう少しです。
楽しみにしててくださいね。 pic.twitter.com/M1EmvI1FLj— らまのだ (@lamanoda) 2018年11月18日
小劇場のチェックは観劇三昧で
小劇場の劇団。
知らない劇団に、最初に足を踏み出すのって、
勇気要りますよね。
「観劇三昧 」で過去の公演をチェックして、
好みに合うかどうかを調べてから行くと、
お気に入りの劇団にあたる可能性が上がるかも。