演劇ユニットくものした「呼ばれぬ者の声を聴け」「散歩道」
【ネタバレ、分離しています】
どもっ\(´▽`*)。てっくぱぱです。昨日観た芝居の感想です。
もくじ
公演前情報
公演・観劇データ
演劇ユニットくものした 旗揚げ公演
「呼ばれぬ者の声を聴け」「散歩道」
脚本・演出 なるせなるきよ
2019/02/14 (木) ~ 2019/02/17 (日) 荻窪小劇場
観劇した日時 | 2019年2月14日 19時00分〜 |
価格 | 3000円 全席自由(事前にネット予約) |
上演時間 | 125分(75分-10分休憩-40分) |
Corich満足度 | ★★★☆☆(3/5点満点) |
客席の様子・観劇初心者の方へ
若い人も多くいれば、私のようなスーツ姿もチラホラ。一人で来ていた方が多かった気がします。
観劇初心者でも安心して観ることができる舞台です。
くものした?
ホームページの劇団紹介をみると、このように書かれていますね。
新しい角度から演劇を見つめ、作品を創っていくユニットを目指します。
劇団ではなく演劇ユニットなのは、企画や人を中心とするのではなく、作品、台本、戯曲、テーマを中心として創造活動をするためです。
既存の作品、新作、古典、新劇、アングラ、小劇場。
ストレートプレイもミュージカルも!!
とにかく、ユニットメンバーがやりたいと思ったのもを形にする
ユニットを目指します。
ツイッターで旗揚げ公演の宣伝が目についたので、観に行くことにしました。
事前に分かるストーリーは?
今回は、「呼ばれぬ者の声を聴け」と「散歩道」の2話オムニバスのよう。
ストーリーはチラシに出ているのですが、テキストがありませんでした。チラシはこちら。
感想(ネタバレあり)
2話オムニバス。
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「呼ばれぬ者の声を聴け」
演劇の専門学校の同級生の男女が集まって、誕生日を迎えた仲間を祝っている。同級生は、役者を続けているモノもいれば、田舎に帰ったもの、就職したもの、何をしているのか語らないもの、様々。そこに、SNSで伝わるお世話になった演技の先生の訃報。葬式も終わっているという。あんなに親しくしていた先生の葬式に、自分たちはどうして呼ばれないのか。先生の思い出を語るうちに、今ここで勝手に先生の葬式をする、という話に。それぞれの思い出を先生に語りかけながら、最後は、卒業間際に上演できなかった芝居の一シーンをすることに。それぞれがそれぞれ、先生への想いを叫ぶ声に乗せて伝える。・・・ストーリーをまとめてみるとこんな感じだ。
葬式に呼ばれなかったので、自分たちで葬式をやってしまう、というストーリーは面白い。私自身、恩師の訃報に触れて、同じような経験をしたことがある。仲間と笑うしかない状況。葬式って誰のためにするものなんだろうか、などという事も考えてしまったり。この1点のモチーフだけに集中して、葬式ゴッコもっと本気でやる、というドタバタでも、恩師への想いは十分に表現できた気がする。
一方、全体の物語。個々のキャラクターもしっかり設定されてい、頭では物語を理解出来るのだが、どういう訳か心にすんなりと入ってこない。原因はいくつか思い当たる。演劇の中で演劇を話題にする、というのは、どこか「小さな世界」を描いてる感があって、内輪ネタっぽかったり。役者さんは上手く、個々のセリフは自然に見えても、全体の会話がつながっていないぶつ切れ感があったり。最後に「叫ぶ」というシーンは、伏線が不十分で唐突に感じたり。部屋飲みという状況設定から仕方ないのかもしないが、舞台の動きがどうしても乏しかったり。こんな感じで、途中から、物語のすっきり入ってこなさを自問してしまう、評論モードで観る目線になってしまい、やはりどこか楽しめなかった、というのが正直な感想だった。
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「散歩道」
男女として、付き合い出してから、死ぬまで。夫婦の半生を、二人の会話を通して鮮やかに描いた会話劇。不思議な時間の遷移を楽しめた。
会話の中で、時間がどんどん進行する。
話し始めた時は「付き合い始めて1か月でしょ」と話していたのに、すぐ10秒後くらい、会話を終えるにはもう1年経ってる、っていう設定に変わっている。気が付けば結婚して5年、10年。たった5~10分の会話で、衣装も場転もなく、時間の経過を表していく様。この「時間の移ろい」の表現は非常に秀逸。また、女を演じている関原吏紗の会話のペースがとても心地よい。ペースを作る妻、それに乗る夫役の黄地憲人。夫婦の表現が面白い。
強烈に感じたのは「夫婦って、そんなに奇麗な側面だけじゃないよ」という、41歳既婚、私てっくぱぱの立場からの思い。いつまでも「好き」っていう感情でいれれば、もちろんそれに越したことはないけれど。実際の夫婦ってもっとドロドロしている。ドロドロしているげとれ、反目するわけじゃなくて、信頼関係もある。そんな矛盾した関係の中で、夫婦の人生って紡いでいくもんなんじゃないかな、と思う。50代、60代になれば、また別の夫婦観、が出てくると思うし、それが自然だと思う。一方物語では、どこか結婚に幻想を追い求めている10代~20代の視点が強くて、その年齢の檻を、想像力で突破する試みをした跡が見つけられずだった。死までの一連の流れを描いた作品として、その点が、表現としてとても気になってしまった。
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演劇学校の要素だったり、理想的な結婚観だったり、両ストーリーの脚本ともに、観念的な要素が強い。身の回りの事象の描写から一歩外に出れていない、若さと青さ。旗揚げ公演の不慣れな運営の雰囲気も相まって、全体的に「粗削り」という雰囲気の演劇体験だった。
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今回、旗揚げ公演の、くものした。観に行こうと思ったのは、ツイッターに面白い投稿が流れていたから。子供の観劇についてのアナウンスや、脚本の事前公開の投票、クラウドファンディングなど、旗揚げとは思えないくらい、いろいろと考えているのが伝わってきた。
例えばマスク。入場時に、希望者にマスクが配られた。なんでも、演出効果で粉塵が飛ぶかもしれないから、との事。制作的にもいろいろと配慮した結果なのだとは思うけれど、結論としては、あの程度の粉塵でマスクを配っていたら、制作の仕事は大変なことになる・・・と思う。
どのようなバックグラウンドがある人が集まって劇団をはじめたのか不明だけれど、ユニットとしての表現したい想いと、制作的な面も含めた技術が、まだ同じレベルに一致していないのかな、と感じる。とはいえ、上手く表現できないが、いろいろ試行錯誤している中に、まだ届いていない想いはいつか届くかも、という可能性も同時に感じた。素人風情が偉そうなことを言っている・・・気もするが、次回の公演に期待して、注目しておくことにする。