<観劇レポート>浅利演出事務所/劇団四季「ミュージカル 李香蘭」
もくじ
公演前情報
公演・観劇データ
|団体名|浅利演出事務所/劇団四季|
冠 | 浅利慶太 追悼公演 |
題 | ミュージカル 李香蘭 |
脚本 | 浅利慶太 |
演出 | 浅利慶太 |
|日時場所|2019/07/27(土)~2019/08/12(月)
自由劇場|
劇団四季/浅利演出事務所
劇団ホームページに、四季について説明があります。
言わずと知れた、日本最大の劇団かと思います。
[https://www.shiki.jp/:title]
浅利演出事務所は、劇団四季を退任後に活動する際の事務所名です。
[http://www.asarioffice.com/:title]
事前に分かるストーリーは?
劇団ホームページには、こんな記載がありました。
中国に生まれ育った山口淑子は十三歳の時、日中友好の夢を父親から託され、中国人である李将軍の養女となり「李香蘭」の名前をもらう。そして、類まれなる美貌と歌の才能を認められ、満州国映画協会(満映)から中国人女優としてデビューし、中国はもとより、日本でも熱狂的に迎えられる大スターとなった。その人気を日本軍の宣伝に利用された彼女は、終戦後、中国で祖国反逆者の罪で軍事裁判にかけられてしまう。「夜来香」「蘇州夜曲」「何日君再来」などの名曲のメロディと共に、昭和という激動の時代を綴る。
観劇のきっかけ
四季のチケット購入プリペイドカードを頂いたので、一度は観てみたかった「李香蘭」を観劇することにしました。
ネタバレしない程度の情報
上演時間・チケット価格・満足度
|観劇した日時|2019年8月1日
14時00分〜|
上演時間 | 170分 (85分-20分休-65分) |
|個人的な満足度|★★★★★
(5/5点満点)|
客席の様子
ミドル~シニアの女性の客が多かったです。お母さんに連れられた、中学生位の息子さん、というパターンも結構見かけました。
観劇初心者の方へ
観劇初心者でも安心して観る事が出来ます。
観た直後のtweet
劇団四季「ミュージカル 李香蘭」170分休20含。
カテコ4回スタオベ。中国、パリのテロ、上皇、韓国、安倍総理、その他いろんな事を考える。いい作品。
客シニア層多いのが残念。若い人是非観て。後のウィキッドと類似が多いのに気づく。野村玲子すごい。後継者作り、語り継いで欲しい作品。オススメ!— てっくぱぱ (@from_techpapa) August 1, 2019
感想(ネタバレあり)
ストーリーは、劇団記載の通り。特に同時代を生きた川島芳子が語り部として物語を回していくスタイル。25年くらい前だろうか。まだ舞台のDVDやビデオが手に入らない時代。NHKでたまに放送している舞台中継を食い入るように見ていた時に出会った作品。印象が強くて、録画を何度も何度も繰り返し見ていたが、今回実際の舞台で初観劇。ほとんどのミュージカルナンバーを、自分からは歌えなくても、目の前に展開されれば口ずさんで出るくらいに覚えていたので、少し諳んじながら観る。そんな観劇だった。
中学生くらいに観ていた時と、やはり物語の捉え方が少し違って見える。戦争というか、ひねた考え方を持つ人が、時代的に多くなったからだろうか。観ながら、中国はもちろん。韓国の事とか、パリの乱射事件の事とか、安倍総理の事とか、先日退位された上皇明仁の事とか、いろんなことが頭を巡った。いろんなことがフラッシュバックして見えた。
感想らしきものと言えば・・・一番近い例でいえば、確かに中国人と日本人は、国民性はどこか違ったところがあるけれど、仲良くしないといけないよなぁ、という、割と単純な感想。・・・戦争時代って、結局この単純な感想を、見栄や外聞を憚って言えなくなることで起こることだと思うから、そのくらい単純でいいのかな、とも思っている。
戦地に行く若者のシーンが印象的だった。「自由主義は、負けるとは到底思えないが・・・」というくだり。戦争中、誰もが戦争を心から賛美していたわけではなくて、「心の中ではこんな戦い皆負けると思っていた」という説が最近では有力だけれど、25年前はそこまででもなかったように思う。当時、あそこまで赤裸々に語るシーンが実は不自然にも感じたりしたが、今の時代のコンテキストでは(あるいは歴史学か何かの成果としては)自然と受け入れられる。その中で、「今日、自由主義者が一人死んでいきます」というのは、ものすごく痛ましい台詞だなと思った。
そして、ラストの裁判長のセリフ。あのセリフは、史実に基づいているのかは分からないけれど、ある種の不自然さがある。「この不幸な出来事が後の世の為の教えとなるように憎しみを捨てて考えよう、徳を以って怨みに報いよう」っていうのを、中国の人が裁判で言えるかというと、そうではないような気がする。ただ、このセリフが、この芝居のテーマなんだろうな。ふと、パリの乱射事件の時の人々の対応を思い出した。テロとの戦いだって、いつも同じなのだ。ひょっとしたら、最近起こっている、無残な殺人事件も、どこか同じことなのかもしれない。
少し物語と話がそれるが、この物語の構造というか演出は、どこかミュージカル「ウィキッド」に似ている気がする。初演は、李香蘭が1991年、ウィキッドが2003年だから、当然、李香蘭の方が早い。怒りのシーンや、李愛蓮とのシーン、その他もろもろ、思わずウィキッドを連想してしまう。ウィキッドは、実は演出の段階で、「李香蘭」を参考にしたという事はないだろうか、という仮説が頭の中に生まれた。誰か知っている人がいたら教えてほしい。
役者さん。野村玲子の李香蘭役はすごい。役の上では26歳。実際は・・・という気もする。高音や、ファルセットがちょっと辛い時もあるけれど、体が小さいのに存在感がものすごい。おそらく彼女にとっての最もハマった役なのだろうけれど。この作品は、今後も四季のレパートリーとしてぜひ上演していって欲しいので、引き継いでくれる役者も、育てていってほしいなぁ、と思った。今回は、他にもこの役の候補の人っているのだろうか。