<観劇レポート>埋れ木「プラスチックは錆びない」
観た芝居の感想です。
もくじ
公演前情報
公演・観劇データ
団体名 | 埋れ木 |
題 | プラスチックは錆びない |
脚本 | 久保 磨介(埋れ木) |
演出 | 久保 磨介(埋れ木) |
日時場所 | 2019/08/28(水)~2019/09/03(火) 北池袋新生館シアター(東京都) |
劇団紹介
劇団ホームページにはこんな紹介があります。
主宰・久保磨介 // 俳優・新開知真、 工藤夏姫、佐瀬ののみ // 音響・工藤香菜 // 総務・原汐音の6人による演劇集団。 ''変わったことはしない'' を理念とし、 久保磨介の作り話の立体化のために活動
事前に分かるストーリーは?
劇団ホームページには、こんな記載がありました。
この作品は同公演期間中に、2作が上演されます。日によって、回によって演目が違います。
《あらすじ》
木造家屋の縁側で起こる、まったく関係ない2つの物語。《瓶に詰めるから果実》
高校演劇部は夏合宿をしながら部長選です。
ちゃんとした人ってどんな人なんだろう。ちゃんとした部活?ちゃんとした演劇って?
ちゃんとした振りをした人はちゃんと出来ているのでは?演劇部だし。
《プラスチックは錆びない》
旅行に来た大学生は、災害で帰れなくなってしまって滞在が延長。大喜びです。
あれ?でも帰りたそうな人もいるみたい。
でも花火とかめちゃくちゃ楽しいよ?
こんなに楽しいのに、悲しんでる人がいたら我慢?
観劇のきっかけ
前回作品が、あまりに面白すぎての観劇です。
ネタバレしない程度の情報
上演時間・チケット価格・満足度
観劇した日時 | 2019年8月28日 19時30分〜 |
価格 | 2800円 全席自由 (事前にネット予約) |
上演時間 | 95分(途中休憩なし) |
個人的な満足度 CoRichに投稿 | ★★★★☆ (4/5点満点) |
客席の様子
男女比は、7:3くらいで男性多めな印象。年齢層は様々。観劇好きから、出演者の知り合いまで、いろんな方がいる印象でした。
観劇初心者の方へ
初心者の方でも、安心して観劇できる舞台です。
観た直後のtweet
埋れ木「プラスチックは錆びない」95分休無。
この微妙な感情を、ここまで膨らませて話にするのは素直にすごい。楽しめたけれど。
何かどこかが、絡み合わぬ印象。細かなワザや魅せ方も気になり。意図的と思うがセリフ音量あってない?結果「台本のあるテラハ」的な。前回作でハードル上げ過ぎたかな。— てっくぱぱ (@from_techpapa) August 28, 2019
感想(ネタバレあり)
ストーリーは、チラシ記載の通りだが、補足しておくと。災害・・・というより、怪獣が小田原あたりで暴れて、死者1万人でているのをニュースで知り、伊豆の海に面した旅行先から帰れなくなった大学生達。緊急時だからそのまま部屋を使ってもいいと言われたし、生活物資も困っているわけでもなく、まあまあ普通の生活。だからこそなのか、身動きできない割には、大学生達、どこか楽しそう。この「楽園」で、本当に楽しんでいいのか?不謹慎じゃないか?とかに悩みながら、楽しい事を見つけていく大学生たち。気がつくと、遊び人の渓太郎は李佳に告白し、徐々に距離を縮めるも「楽園」がなくなった後、帰宅した後どうなるのかで悩み。レズカップルの真夏と美鈴は、タイミングを逃していたけれど、これを期に付き合っていることを発表し。陽太は、友人に気を使った誤解も解けて、涼子と付き合いだし・・・と。人の細かな感情を捉えつつ進む、シチュエーション会話劇。
埋れ木、2度目の観劇。久保磨介の脚本の特徴なのだろうか。前回に続き「怪獣」が設定として出てくるのも特徴だが。それよりも更に、人間がある場面にいる時に出てくる、すごーく細かな「感情」を取り上げて、それを膨らませて物語を紡いでいく感じで、こんな作風は、他には見たことがない。物語を語る時、よく「ああなって、こうなって」と事の進展を話すが、この物語では「ああ思って、こう思って」という表現が相応しい気もする。今回も「え、こんな細かな感情のやり取りだけで、一シーン作っちゃうの?」と思う場面が、何度かあって。「あるある」的な共感もあれば、「そうだったの」的な驚きの感情変化もあり。何も「コト」が起こっていないのに、想いのやり取りだけで進むというのは、とても会話劇的。演じる役者にも、かなり細かい感情が要求されるに違いない。ストーリーが、カップルが出来るかできないか、の話の要素が大きかったこともあり、二人だけのシンプルなシーンでも、役者さん同志の感情の肉弾戦な部分があり、今回の作品の見所の一つだと思う。
一方、状況の展開としては。「怪獣」が暴れて、死者が1万人出ている世界。「こんな非常時に、こんな事したら、不謹慎?」という話題がたびたび登場する。展開として「この大学生達の中に、怪獣のせいで肉親を亡くした人が出るのかな・・・」、といった物語を想像するのだけれども、そんな「シリアス」な方向には、話は全く進まない。どちらかというと、「怪獣」が暴れている事は、「楽園」を作るキッカケにもなっていて、ちょっとラッキー的な、どこか遠くの国での戦争のニュースのような現実のないモノとして扱われている。どちらかというと「現実なのに、現実じゃない」という感覚が襲ってきて、のっぺりと薄い虚無感を感じる。怪獣が出てくるなら、「現実じゃないけれど、現実ならどうなるか?」という方が、効果的な気もするのだけれど。
結果的には、誰が誰に惚れた腫れた、という、恋心の感情が、物語のメインのになっていく。会話劇ながらも、セリフをハッキリと大きな声で発生する役者さんたち。おそらく、そのような演出がされているのだとは思うが、もう少しヒソヒソと話す方が、いろいろと自然なんじゃないかなぁ、などと思う。気が付けば、夏の滞在先は、皆がハッピーエンド的な真の「楽園」となっていて、・・・何だか妙に予定調和的で、妙にセリフの声量がデカい、台本のある「テラスハウス 埋れ木伊豆編」を観ているような、そんな感覚に陥ってしまった。舞台セットも写実的なのか抽象的なのか、ちょっとはっきりせず、このアンマッチさが、どうも気になって、気になって、気になっているうちに、手放しで作品を楽しめたのか、自分の中で疑問になってしまった、変な感じだった。
前回公演の印象が強くて、自分の中で、期待値上げ過ぎちゃったかな、という思いがひしひしと。涙でも、笑でも、それ以外でも、何でもいいので、もう一押し、客席に感情の波を投げかけて欲しいなぁ、と。・・・そこそこ作品を楽しめたのに、そんな不満足を抱えながらの帰路になった。
気になった役者さん。見米克之、ミクドクでの演技は見たことないけれど、なんかミクドクっぽくない気もする(笑)役者さん。ナヨナヨでチャラくて、でもちゃんとしている、ひょろっとした感じが好き。五十嵐彩夏、キスシーンと、ラストのモジモジした感じははよかったなぁ。浅見梨佳、細かい感情まで見えつつも、演技はダイナミックなのが好き。
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