<観劇レポート>iaku「あつい胸さわぎ」

#芝居,#iaku

【ネタバレ分離】


観た芝居の感想です。

公演前情報

公演・観劇データ

団体名iaku
あつい胸さわぎ
脚本横山拓也
演出横山拓也
日時場所2019/09/13(金)~2019/09/23(月)
こまばアゴラ劇場(東京都)
2019/09/26(木)~2019/09/29(日)
in→dependenttheatre1st(大阪府)

劇団紹介

劇団ホームページにはこんな紹介があります。

劇作家・横山拓也による演劇ユニット。横山のオリジナル作品を日本各地で発表していくこと、また各地域の演劇(作品および情報等)を関西に呼び込む橋渡し役になることを指針に、2012年から本格的に活動を開始。作風は、アンタッチャブルな題材を小気味良い関西弁口語のセリフで描き、他人の議論・口論・口喧嘩を覗き見するような会話劇で、ストレートプレイの形態をとる。小さな座組でカフェやギャラリーなど場所を選ばずに全国を巡るミニマルなツアーと、関西屈指のスタッフ陣営を敷いて公共ホールなどを中心に組む大きなツアーを交互に実施。ほとんどの作品で上田一軒氏を演出に迎え、関西の優れた俳優を作品ごとに招くスタイルで公演を行う。繰り返しの上演が望まれる作品づくり、また、大人の鑑賞に耐え得るエンタテインメントとしての作品づくりを意識して活動中。

【大阪・劇団・演劇】iaku(いあく)| 劇作家・横山拓也「エダニク」「人の気も知らないで」「walk in closet」

事前に分かるストーリーは?

劇団ホームページには、こんな記載がありました。

階段しかないマンション。古い間取りの3DK。散らかったダイニング。明日も履くジーパンが脱いだ形のまま放置されている。未開封のダイレクトメール。二年前のままのアロマスティック。トーストの粉がついたマーガリン。終わらない課題。持ち帰った仕事。インクが切れたボールペン。ミシンの音がうるさい。飲みかけのペットボトルと食べかけのビスケットは捨てていいのかダメなのか。ダイレクトメールの束に、再検査のお知らせが混ざっていることにも気づかないような、だらしない娘と母の二人暮し。だけど、今、二人は恋をしている。はじめての恋と、二十年ぶりの恋。高鳴る胸が騒がしい。

観劇のきっかけ

前回の作品が非常に面白かったからの、観劇です。

ネタバレしない程度の情報

上演時間・チケット価格・満足度

観劇した日時2019年9月17日
19時30分〜
価格3300円 全席自由・入場順指定
(先行予約)
上演時間105分(途中休憩なし)
個人的な満足度
CoRichに投稿
★★★★☆
(4/5点満点)

客席の様子

男女比は、7対3くらい。どちらもアラサーUP世代の方が目立ちました。

観劇初心者の方へ

観劇初心者でも安心して観劇できる舞台です。

観た直後のtweet


ここから先はネタバレあり。
注意してください。

感想(ネタバレあり)

ストーリーは。
大阪の街にある、小さな紡績工場で働く昭子。娘の千夏を産んで程なく離婚して、ずっと真面目に勤め上げてきた仕事の甲斐もあり、娘は芸術大学に入学。ホッとしたのか、新しく東京から赴任してきた係長に、ちょっと恋心を感じたりもして。娘の方は、大学で小説を書く課題をこなしながら、同じマンションに住んでいて、中学時代に大きくなった胸をクラスの馬鹿にされた、光輝への感情が一体なんなのか、整理がつかない。モヤモヤを大学の小説の課題にぶつけたりしていて。光輝とは、同じマンションに住んでいたながら、高校が違って疎遠になっていたけれど、大学は同じところに入学したのだ。そんな折、千夏に、大学で受けた健康診断の再検査の通知が届く。どうやら乳癌の疑いがあるらしい。会社を半休した母親と一緒に精密検査を受ける千夏。その結果から、千夏と昭子を取り巻く状況が、少しずつ変化していく…。と、話の前半を強引にまとめるとこんな感じ。

物語のクライマックスは、ラストのラスト。母と娘とが、向き合う場面。娘のガンにショックを受けていて、係長には慰めて欲しかったはずなのに、酷いことを言われる母と、友達の透子と話すうちに、治療方針など全てを母に決められて、自らが「女として」感じる思いまで、無視されているように感じていた千夏。この2人の感情が向き合う。シーンの時間としては、10分程度だろうか。その一点に向けて、物語を帰結させていく。そんなストーリーだったように思う。少し成長して、母の殻から抜け出そうとしている娘と、恋こごろに少し期待しすぎた母。そして、恋をしたり、女として扱われることに対する憧れ的な部分を持つ千夏。それまでの「子供としての娘」から、「女としての娘」へと変わっていく部分であったり。そんな微妙な感情たちのほんの一瞬の機微の感情を、夏の蝉のようにヒョッと虫かごに捕まえて、少し観察して、そしてすぐに逃がしてあげた。そんな一瞬への帰結の芝居だった。母が娘を後ろから抱きしめた後、すぐにステーキの話に戻ったり。ほんと、そういう瞬間って、実際の人生でも、いつも一瞬のもの、なんだろうなぁ、と思う。

観た回は、客席に男性が多い回だったのだけれど、女性のお客さんが涙しているタイミングが、明らかに男性と違っていたように思う。ラストより前の話としては、iakuらしい丁寧な会話劇が紡がれているものの、大きな感情のうねり、みたいなものは、少なかったように思う。あえて言うなら、再検査の結果がハッキリして、ガンがある事が分かるシーン。この部分は、女性客の反応が明らかに違っていたように思えた。どうしても淡々と、冷静に見てしまう自分がいて、何だか歯がゆい思いも覚えた。男性というより、私だけ、感じ方が異なったのかもしれないけれど・・・、女性の視点っていうのもひょっとしたらあったのかもしれない、とも思った。

見終わった後、駒場の商店街を歩きながら、ふと「金八先生」の事を思い出した。15年くらい前の、金八先生の新シリーズ。金八の息子の幸作が、悪性リンパ腫におかされて入院している時に、金八が幸作の部屋からコンドームを発見するシーンがあって。金八が、コンドームを手に実に複雑な表情をしながら「親としては、息子が生きている間に、こういうものを使えるほど真剣に愛してくれた女性と巡り会えていたなら嬉しい」的な発言をしていたのを思い出す。卑近な例かもしれないけれど、男性の感覚としてはそんな感じなのかなぁ、なんて事をふと思い。

あるいは、ラスト。成長した娘と、母のシーン。不思議とミュージカル「マンマ・ミーア」の、"split through my fingers" を思い出したりもする。「マンマ・ミーア」は、この作品とは若干対照的で、基本ラインは底抜けにに幸福な話だけれど、この作品がたどり着いた場所も、母と娘のそれぞれの恋と成長、という意味では、似ているのかなぁ、と思いもした。

アナロジーを長々書いてしまったのは、少し理由があって。

ものすごく、丁寧な丁寧な会話劇だったけれど、「意外な感情描写」みたいなものには、出会えなかったかもしれない。iakuに対して、自分の中でハードルを上げ過ぎているのだとは思うけれど。緻密な感情をと驚きを! 的な部分を期待していた部分もあって、その部分は満たされなかったかなぁ…。とても贅沢な要求をしているのは、自分でも分かっているのだけれども。

気になった役者さん。辻凪子、設定は18歳かな、思春期を終えても、やはり不安定な何かを残しつつの、大人と子供の間の表情がとても表現されていて。表情を見ているだけで、泣きそうになることが何度もあり。枝元萌、テレビなどでもおなじみの女優さん。肝っ玉母さん。係長との恋の場面が切なくて。あと、「見せる」大阪弁がいい。瓜生和成、生真面目で憎めない。あんな事言わなければ、ほんといい人なのになぁ、の感じが好き。田中亨、イケメンだなぁ。若かりし頃の堺雅人を思い出す。

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チラシの裏

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