<観劇レポート>劇団肋骨蜜柑同好会「殊類と成る」
もくじ
公演前情報
公演・観劇データ
団体名 | 劇団肋骨蜜柑同好会 |
回 | 劇団肋骨蜜柑同好会第12回 |
題 | 殊類と成る |
脚本 | フジタタイセイ(劇団肋骨蜜柑同好会) |
演出 | フジタタイセイ(劇団肋骨蜜柑同好会) |
日時場所 | 2019/12/05(木)~2019/12/10(火) Geki地下Liberty(東京都) |
団体の紹介
劇団ホームページにはこんな紹介があります。
劇団肋骨蜜柑同好会とは
げきだんろっこつみかんどうこうかいとは
東京を中心に演劇活動を行う。2010年の旗揚げから現在に至るまで、手探りで、暗中を模索するように活動中。主宰フジタの標榜する「演劇とは方法論ではなく存在論である」という言葉のもとに 、言語による世界の腑分けを試み、「生きづらさ」を抱えた人たちの救いとなることを考えている。
頭のねじがどこか緩んでいるようなズレた登場人物と、捩れたメタフィクション的な構造、既製品を多用したシンプルで分裂的な舞台構成が特徴。
ストーリーやメッセージを極端に廃し、あるいは換骨奪胎し、あるいは解体し、その先の地平にたどり着くべく、過剰に論理的に「なぜ演劇なのか」を問い続ける。問い続けたい。問い続けられますように。
コミュニケーションはいつも、祈りの形に。
事前に分かるストーリーは?
こんな記載を見つけました
酔わねばならぬ
気がついたら、見知らぬ駅のホームだった。
ここがどこなのかも、どうやって来たのかもわからない。
ぼんやりした意識の中で、男はやがてこんなことを考える。
一体これはどんな始末だ。
自分はもう、完全に人間ではなくなってしまったのだろうか。偶因狂疾成殊類
災患相仍不可逃今宵もあの山のどこかで
十六夜の月に照らされて
醜い獣が短く噑える
観劇のきっかけ
周りの演劇好きの方の評判が高いのと、お誘いを頂いたのと、気になる役者さんが出演しているから、の観劇です。
ネタバレしない程度の情報
観劇日時・上演時間・価格
観劇日時 | 2019年12月5日 19時00分〜$$ |
上演時間 | 125分(途中休憩なし) |
価格 | 3500円 全席自由 |
チケット購入方法
劇団のホームページから、PassMarketを選択して、同サイトで予約をしました。ヤフーのIDが必要でした。
事前決済でしたので、クレジットカード決済をしました。
メールで、QRコードのチケットが送られてきました。
客層・客席の様子
男女比は6:4か、7:3くらい。ひとり客が多かった印象です。年齢は男女ともにバラバラで、特定の客層は掴めませんでした。
観劇初心者の方へ
観劇初心者でも、安心して観る事が出来る芝居です。
・シリアス
・笑える
・会話劇
・考えさせる
観た直後のtweet
劇団肋骨蜜柑同好会「殊類と成る」125分休無。
劇団初見。山月記を基に今の時代向にアレンジ。不思議と?涙は出なかったけど。観ていてものすごく苦しくて、でも楽になれるような、そんな話だった。
音楽はほとんど使ってないのに華麗に流れるような舞台。役者さんがキラキラしすぎてた。超オススメ! pic.twitter.com/7eoZnGRW0c— てっくぱぱ (芝居と酒好き) (@from_techpapa) December 5, 2019
映像化の情報
情報はありません。
満足度
(5/5点満点)
CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
感想(ネタバレあり)
ストーリーは。いろいろなものが交錯するけれど。
3人。サンゾウと、ナカヤマと、乞食と。人より勉強はできたが、どこか他人を見下すような。そんな男。真面目だけど、どこか人との間合いが分からず。そんな3人が、どうしてそのような境遇になったのか・・・という物語。小説「山月記」をベースにした物語。(青空文庫で無料で読める。30分かからない)
いつもはツラツラと、ストーリーらーしき感情の流れを書いてしまうのに、この芝居はストーリーを追って書くのが難しい。いや全般的に書くのが難しい。・・・「山月記」は高校生くらいの時に読んだことがあるったと思う。もう忘れかけていて、よく覚えていないのだけれど。どちらかというと、鼻持ちならないエリート的な人が、若い頃に自らを客観視できなくて崩れていく。・・・今回読み直していないと、正しいかどうか分からないけれど、そんな話だったように記憶している。
芝居全体。さして難しい訳ではない。難解な話だった訳でもない。でも、物語が飛んだり、混ざったりするので、何が本筋だったのか、と問われると難しい。で、書けなくなった時は、いつもは最後まで読まない当日パンフを紐解いてみる。・・・いろんな物語を、混ぜ合わせたと書いてある。ああ、そうなのか。それでいいのか。と納得したりする。・・・まあ、別に納得しなくてもいいんだけれども。
山月記。前述の通り、記憶の中では、自らの行いを悔いているような物語だったと記憶しているけれど。今回の「殊類と成る」は、どちらかというと、何かに馴染めなかった。社会とどこか何かがズレていて、別に悪い訳でもないのに上手く生きていけなくなってしまった、そんな人の物語に思えた。
主に出てくるのは、臆病で羞恥心が強いのか何も踏み出せないサンゾウと。自意識過剰で自信家のナカヤマと。2人を通して語られる、やっぱり踏み出せなかった二人。乞食の人生ともシンクロしつつ、虎になってしまう様。涙が出てくるわけではないのだけれど。ものすごく苦しい現実を見せられているのに、一方、その事実を突きつけられることで、ものすごく楽にもしてもらっている感覚。ラスト。SNSや何やら、自意識を意識することが多い現代。そこに対して、まるで駄々をこねるように抵抗をしているような、そんなものを感じ取った。
「同じ匂いを持っているような気がする。」っていう言葉が、とても印象に残る。
気になった役者さん。あーもう、全員まとめて大好きなのですが。藤本悠希、最後まで淡々と淡々と喋る様。ラストの叫びも、切実なのにどこか淡々としていて、淡々がとても印象に残り。室田渓人、「ナイゲン(暴力版)」で部屋住みとして初めて拝見して、2度目。座っていた位置がよかったのかな。流れ流れ、溜めていく感情の末の涙して崩れているシーンが、光の中でものすごく美しかった。安東信助、上手く言えないのだけれど、印象的。何だか、演じているのが辛そうにも見えたけれど、それがむしろリアリティがあったようにも感じ。林揚羽、しあわせ学級崩壊で拝見した時とは全く異なり驚き。何だかドキドキしながら観た感覚。杏奈、何だか一人だけ違う時間を生きている感覚があって面白い。サンゾウを責める様は、ちょっと怖かったけれど印象的。終始白衣っていうのは、意図的な意味かな。
今は言葉に出来ないけれど、この後の人生で、ジワジワと来そうな作品。