<観劇レポート>埋れ木「THE ROLE OF」

#芝居,#埋れ木

【ネタバレ分離】


観た芝居の感想です。

公演前情報

公演・観劇データ

団体名埋れ木
THE ROLE OF
脚本久保 磨介(埋れ木)
演出久保 磨介(埋れ木)
日時場所2019/12/18(水)~2019/12/22(日)
Geki地下Liberty(東京都)

団体の紹介

公式ツイッターには、こんな記載があります。

主宰・久保磨介 // 俳優・新開知真、 工藤夏姫、佐瀬ののみ // 音響・工藤香菜 // 総務・原汐音の6人による演劇集団。 ''変わったことはしない'' を理念とし、 久保磨介(@masuke_k)の作り話の立体化のために活動

という事で。
劇団ホームページはなく、ツイッターが公式サイトのようです。
https://twitter.com/_umoregi

事前に分かるストーリーは?

ストーリーの記載を見つけられませんでした。

観劇のきっかけ

これまでの作品が好きで、続けて観ている劇団です。



ネタバレしない程度の情報

観劇日時・上演時間・価格

観劇日時2019年12月18日
19時30分〜
上演時間105分(途中休憩なし)
価格3000円 全席自由

チケット購入方法

CoRichのサイトから、チケットを予約しました。当日に受付で、前売り料金を払いました。

客層・客席の様子

男女比は半々くらい。一人観劇が多く、年齢層はバラバラで特に傾向はありませんでした。

観劇初心者の方へ

観劇初心者でも、安心して観る事が出来る芝居です。

芝居を表すキーワード
・会話劇
・考えさせる
・ヒーロー

観た直後のtweet

映像化の情報

情報はありません。

満足度

★★★★★
★★★★★

(4/5点満点)

CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
ここから先はネタバレあり。
注意してください。

感想(ネタバレあり)

ストーリーは。
カウンターバーがあるお洒落な居酒屋。大学の美術サークルの面々が集う。作品展を開いているらしく、打ち上げの様子。町にヒーローが出ているとか、超能力・・・的な特殊能力を持っている人が最近出ている・・・、何ていう話が日常的な会話として出ていて。主人公は、年上の彼女と付き合い出しそうだけれど実は主人公はヒーローの特殊能力を持っていて。ちょっとしたキッカケで、ヒーローとして活躍しだしたら、止められなくなってしまって。美術サークルも、バーのバイトも心入らずの状態が続き。そんな中、サークルの友達のも、実は超能力を持っていて。それを守るためなのか、もう一人のサークルの男は、ヒーローの活躍を阻むような行動をしていて・・・こんな世界で起こる「ヒーロー」に対する期待と、それに応えるための物語。

埋れ木は4作目。私的には、初めて観た「降っただけで雨」が、かなり衝撃的だった。今回は、その系譜の作品というか、「ヒーロー」のモチーフが前面に出た作品。ごく普通のバーだったり、大学のサークルを描いているのに、ただ一つ、「ヒーロー」っていうモチーフだけが、日常から突出して異様に存在して、でもそれがある程度当たり前に受け入れられる世界の物語。今回は、ピチピチのタイツ・・・というか革ジャンは出てきたけれど、よくある「ヒーローもの」に出てきそうな要素は全く出てこない。ごく日常、お洒落なバー雰囲気の居酒屋で起こる物語。

3月に観た「降っただけで雨」は、既にバリバリ活躍していて、みんなから頼りにされていたヒーローが疲れてしまった時の物語。突然ヒーローを「辞める」と言い出した時の、周りの葛藤を描いたものだった。今回「THE ROLE OF」は、その前の段階の話。ヒーローがヒーローとして活躍しだすまでの話だった。(お話的に、同一人物だった・・・とかまでは、まだ確認できておらずだか、・・・おそらく別人物だと思う。)

私としては、今年、埋れ木以外に、「ヒーロー」をモチーフにした作品、と思えるものを他にも観た。


比較してみると。
「ビッグ・フィッシュ」は、いろいろな解釈が出来るものの「父が、息子に対して語る自分の物語の中での、比喩としてのヒーロー」だった。最終的には、父が話を息子向けて分かり易くしたり、自分の人生を息子に対して「冒険の物語」として語る時にヒーローになっていた。
「地球防衛軍 苦情処理係」は、正にストレートに、地球に怪獣が攻め込んでるので政府組織としての軍隊的な「ヒーロー」だったし、その正体は、ナントカ星雲から、実際に派遣されてきた戦士としてのヒーローだった。
一方、埋れ木の「THE ROLE OF」のヒーローは、それとは異なる。どうやら悪とは戦っている様子なのだが、場面は殆ど「バー居酒屋」から動かないので、その詳細は一切語られない。ヒーローの同業者にはスポンサーがいたり、超能力と関係があったりするし、顔出ししているヒーローもいたりする。

ヒーローであるという事は。誰かに何かを過剰に期待されたり、ヒーローの日々の生活で無理をしてみたり。「ヒーロー」という特殊能力を持っているが故に、その能力に苦悩したり。「ヒーロー」として活躍することについて、大切な誰かに認めてもらえるか怯えたり。・・・ヒーロー、ヒーローとここまで何度も書いているけれど。結局のところ、日常にある人間が感じる「苦悩」については、ヒーローだろうと、そうじゃなかろうと、変わらなくて。むしろ「ヒーロー」という要素を通すと、その苦悩が明確に浮きだってくる。誰だって、誰かの「ヒーロー」なのだから。埋れ木の描く「ヒーロー」は、そんな「ヒーロー」。演劇としてのモチーフとして、他のどれとも異なり、とても秀逸だった。

芝居としては、前半、エンジンがかかるまでがちょっと間延びしていたようには感じたが。声量のある、迫力のある声をどの役者さんもしているのに、会話が自然に紡がれていて。登場する人物一人一人が、ヒーローというモチーフを食わない程度に、程よく魅力的だった。

気になった役者さん。藤本康平、やはりラスト。カッコいいなぁ、と思った。まあ、カッコよくなくても、ヒーローとしてはいいんだけれどね。大垣友、マチルダアパルトマンで何度か拝見している役者さん。なんか妙に明るくて好き。高村颯志、シアターミラクルで拝見している方かな。打ちあわせをすっぽかされた時の演技がとても印象的だった。これ、自分が出会ったら絶対に相手を罵っているんじゃないか、っていうシーンで、抑え目で。でもヒーローは、なぜ自分が忙しいのか言えなくて。外から「ヒーロー」のモチーフを輝かせる演技。大瀬さゆり、何処で拝見したのか思い出せなかったのだけれど・・・先天性promiseかな。割と男視点のキャラクターというか「かわいい彼女」というのを具現化しているかのようで、可愛い。物語としては、彼女が可愛く見れなくなってしまったときの「ヒーロー」とか、興味があるのだけれど。星野花菜里、コンプソンズで好きな役者さん。何処にいても、すぐに分かる。舞台映えする役者さんだなぁ。

今回の公演。開演時間がかなり変則的だ。これは賛否両論ありそうだけれど。個人的には良い印象は持てなかった。やはり開演時間たと思ってたどり着いたのに、15分待たせれてしまうのは、何だか物凄く損した気分だ。しかも、上手側の席一列、遅れて来た人用として確保されていて・・・。そこまで遅れてくる人に対して配慮しないとダメなのかなぁ。手痛いクレームでも受けた経験があるのだろうか。何か、大切なものの優先順位を間違っている印象、大。

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