<観劇レポート>チームホッシーナ「なにをシェアするハウスター」
【ネタバレ分離】
2020年01月23日 14時15分
観た芝居の感想です。
もくじ
公演前情報
公演・観劇データ
団体名 | チームホッシーナ |
回 | チームホッシー第四回劇場公演 |
題 | なにをシェアするハウスター |
脚本 | 保科 由里子 |
演出 | 保科 由里子 |
日時場所 | 2020/01/22(水)~2020/01/26(日) 赤坂RED/THEATER(東京都) |
団体の紹介
こんな紹介があります。
チームホッシーナとは。
保科由里子が創りたい演劇を、
自由にノビノビと創作するために必要な人たちが集まったチーム。
最強に素敵で最強に自慢の、7人のメンバーたち。小池みのり・谷内愛・藤田光之・藤原彰子・保科由里子・山﨑将平 の6人。
事前に分かるストーリーは?
こんな記載を見つけました
未婚・子無しの花園が経営する、ヨガの先生見習い、地味なコスプレイヤー、ホストクラブで働くゲイの男性などが住む女性専用シェアハウスに、離婚したてのシングルマザー・西澤が中2の娘・美咲と入居してくる。そこで知り合う「普通の大人たち」のカッコ良さに勇気を得て、美咲は「私は明日からズボンで学校に通います」と突然宣言する。しかし、その美咲の一言により、カッコイイと思っていた「普通の大人たち」の無自覚な偏見や差別心が見え隠れし始め、西澤親子の為の歓迎パジャマパーティの雲行きが怪しくなっていく。。。チームホッシーナ約4年ぶりの劇場公演、新作オリジナルミュージカル。
観劇のきっかけ
チラシがきになっての観劇です。
ネタバレしない程度の情報
観劇日時・上演時間・価格
観劇日時 | 2020年1月23日 19時00分〜 全席指定 |
上演時間 | 110分(途中休憩なし) |
客層・客席の様子
男女比は1:9で女性多し。若い人~アラフォーあたりの女性客層が多かったです。一人観劇が多かったように思いました。
観劇初心者の方へ
観劇初心者でも、安心して観る事が出来る芝居です。
・ミュージカル
・笑える
・ハッピー
・考えさせる
観た直後のtweet
チームホッシーナ「なにをシェアするハウスター」110分休無。
コンパクトだけどちゃんとミュージカル。座組み、キャストのグルーヴ感はいいな。歌もいい。ただ脚本が今ひとつ?三つ。甘々で感情移入は出来なかった。そのアンバランスさが残念な感触大。俳優さんは、どんなバックグラウンドなんだろ。 pic.twitter.com/BFCaPktqyT— てっくぱぱ (芝居好き) (@from_techpapa) January 22, 2020
映像化の情報
情報はありません。
満足度
(3/5点満点)
CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
感想(ネタバレあり)
ストーリーは、事前記載の通り。
大家の花園みゆきが切り盛りする、割とホンワカした雰囲気のシェアハウス「ア・トップスター」 に暮らす人々。そのシェアハウスに、離婚したばかりの親子、西澤儷子、西澤美咲が入居してくる事をきっかけに巻き起こる、ちょっとした騒動のお話。ヨガインストラクターの森出衣明日は、潤と付き合っているけれど、潤のワガママにちょっとイライラしつつも、別れられず惰性で付き合っているように見える。花園ゆうきは、花園みゆきの弟で帰国子女。最初英語しか話さず、日本語は出来ないのかと思いつつ、途中から日本語を理解する。ゲイのザキヤマは、何処か達観して全体をみていて。コスプレイヤーの優は、普段は地味。赤い下着が盗まれた・・・と途中から騒ぎ出す。そこで浮き彫りになる、「差別」や「他者との違い」に関する物語。
殆ど事前知識を入れずに、ミュージカル、というのだけ確認して観に行った。セットは、シェハウスの共用部のみで、コンパクトでシンプル。ストーリー展開は、しっかりとしたミュージカル。シェアハウスの、のほほん、とした部分を舞台にした物語なので、ポップな軽い歌が多い。歌とセリフは、いいバランス。役者さん達の歌も台詞も所作もとても観やすくて魅力的。おー、日本でもこんなミュージカルあるんだな、いいなぁ、と思う。・・・と、帰宅中にパンフレットを観てみたら、出演者は私が知らなかっただけで錚々たるメンバー。宝塚歌劇団や劇団四季出身者、独立系のミュージカルの舞台を踏み続けたばかり。ああ、こりゃ上手いはずだ、と納得。
気になった役者さんについて書いておくと。
秋園美緒。元宝塚の方。か細くて、独特の雰囲気がある女優さん。大家さんとしてはちょっと頼りない雰囲気だけれど、それがまたシェアハウスの雰囲気をよく出していて。
上田亜希子。元劇団四季の方。記憶がすぐに繋がらなかったけれど、おそらく彼女の「ライオンキング」のナラ役、私見たことある気がする。今回の役所はちょっとおばさんだけれど。コミカルさと、親の表情とがとてもメリハリあって気持ちいい。
遠藤瑠美子。こちらも元劇団四季の方。憂う美人っていうのがとても似合う。前半、早い展開で美咲に心を開いていく様と、潤とのシーンの表情が印象的。
笠井日向。子役からミュージカルに出演されていた方かな。朗らかな表情と歌のうまさが印象的。
高橋卓士。元劇団四季の方。この中では悪役っぽい感じだけれども、妙にワルっぽい表情がいい。舞台下手に座って、客席をみながら悪ぶるのが印象に残る。
富永雄翔。劇団四季他いろいろな舞台経験がある方。英語の発音うまいから、ネイティブか実際にも帰国子女かと思ったら違うのね。美咲と潤の会話に、英語でイチイチ割り込むのが印象に残った。
魅力的な役者さんでの、コンパクトなミュージカル、という分には楽しかった。特に、出演者同士の何気ない会話のシーンは、コミカルだし面白かった。
ただ残念ながら、ストーリーがあまり面白みがなくて、飽きる前の、興味を持つことが出来ずに終わってしまった感覚。
ゲイやトランスジェンダー、外人などのマイノリティの話だったり、自分が自分らしくある、という事を語ろうとしているのかもしれないけれど、どこか「シェアハウスのお洒落な会話に、いま流行りのジェンダー問題を取ってつけた感」が否めなかった。特に感情の線として理解できなかったのがいくつかあった。1つは、美咲が潤を嫌悪するのだけれど。どうしてこの子、大人を嫌悪しているんだろう、というのが伝わってこなかったこと。思春期特有の「怒りのあたりちらし」なのか、何か明確に嫌いな理由があるのかが、一向に繋がってこなかったので、唐突に「キモイです、おじさん」と言い出すと「いや、お前の方が、突然キモイやん」という視点に立たずにはいられず。その流れなので「学校にズボンを履いていきたい」という後半の告白が、あまりにも唐突に感じられた。何の前触れも感じなかったし、それまでの行動とに因果関係みたいなのを見れなかった。もう1つ。潤をステレオタイプの「悪い人」として扱っているのも、どうにも解せない。ジェンダーや多様性の問題について考えているのだから、彼も多様性の一人なのだけれど、分かり易い悪役と化していた。更に、花園みゆきが、赤い下着を盗むっていうのも、あまりリアリティに乏しい。・・・一言でいえば「物語が浅い」という事なんだけれども。あまり難しくない舞台が観たい、という人もいるかもしれないので、軽いミュージカルも相まっての、こういう路線も需要はあるのかもしれない。
前述の通り、役者さん達と、そのグルーヴ感が素晴らしかったので、出来ればもう少し深みのある脚本、テーマ、ストーリーを、このスタイルでミュージカルにして欲しい、という想いが強く生まれた。このスタイルの、コンパクトなミュージカルをもっと観てみたいな、と思った。
ミュージカルの観点ではもう一つ。役者の声の収音に、ワイヤレスヘッドセットマイクを口元につけるタイプだったけれど。音量の調整が上手くいっていなかったように思えたのが残念。私の席が、スピーカーに近かったからかもしれないし、赤坂RED/THEATERの特性かもしれないけれど、スピーカーから出てますな、という感覚の強い音声が終始劇場に響いていた。スピーカーのつり位置、替えれないのかな。あるいは、もう少し地声を強調する音量にした方が良かった。