<観劇レポート>青年団「東京ノート・インターナショナルバージョン」
もくじ
公演前情報
公演・観劇データ
団体名 | 青年団 |
題 | 東京ノート・インターナショナルバージョン |
脚本 | 平田オリザ |
演出 | 平田オリザ |
日時場所 | 2020/02/06(木)~2020/02/16(日) 吉祥寺シアター(東京都) |
東京ノート・インターナショナルバージョン | 演劇・ミュージカル等のクチコミ&チケット予約★CoRich舞台芸術!
団体の紹介
劇団ホームページにはこんな紹介があります。
青年団は平田オリザを中心に1982年に結成された劇団です。私たちは、平田オリザが提唱した「現代口語演劇理論」を通じて、新しい演劇様式を追求してきました。このまったく新しい演劇様式は、90年代以降のわが国の演劇シーンに大きな影響をあたえ、演劇界以外からも強い関心を集めてきました。
従来の日本演劇に対する平田の批判の中核は、西洋近代演劇の移入をもとに始まった日本の近代演劇は、戯曲の創作までもが、西洋的な論理で行われてきたのではないかという点にあります。このために、日本語を離れた無理な文体や論理構成が横行し、それにリアリティを持たせるために俳優の演技までが歪んだ形になってしまったと平田は考えてきました。
「ときには聞き取れないような小さい声でしゃべる」「複数の会話が同時に進行する」「役者が観客に背を向けてしゃべる」などが青年団の演劇様式の外見的な特徴であり、当初は、こういった点だけが強調して伝えられてきました。しかし、これらの特徴はすべて、これまでの演劇理論を批判的に見直し、日本語と、日本人の生活様式を起点に、いま一度、新たな言文一致の新鮮な劇言語を創造し、緻密で劇的な空間を再構成していこうという戦略にもとづくものです。青年団は、確固とした演劇理論にもとづいた舞台づくりのなかから、常に演劇の枠組みそのものを変えるような、新しい表現を創りあげていこうとしています。
また、青年団は、所属する演出家が、劇団内で不定形のユニットを作り、平田オリザが支配人を務める「こまばアゴラ劇場」を中心に、独自の企画を行う公演として、2002年度より「青年団リンク」を立ち上げました。企画、制作、広報などは、芸術監督平田オリザを中心に、本公演に準じる形で行われます。「青年団リンク」を通じて、青年団は、複数の演出家、劇作家、多数の俳優を有し、多彩な演目を観客に提供するという日本では珍しい「シアターカンパニー」を目指します。
近年は特に、その活動を海外に広げ、毎年のように海外ツアーを行ってきました。特にフランスでは、平田オリザ戯曲に対する評価の高まりと共に、青年団の演劇様式と、粒の揃った俳優の演技力が高い注目を集めています。
『東京ノート・インターナショナルバージョン』『東京ノート』|公演履歴|公演案内|青年団公式ホームページ
事前に分かるストーリーは?
こんな記載を見つけました
舞台は近未来の美術館。
ヨーロッパでは大きな戦争が起こり、そこから避難してきた絵画を前に、家族や恋人たちが、両親の世話や相続問題、進路や恋愛などについて断片的な会話を繰り返す。遠い戦争という大きな背景を前に、日々の生活を送る現代人の姿が克明に描写され、その中から現代社会の様々な問題点と危機があぶり出される。『東京ノート・インターナショナルバージョン』は、国際都市として変貌し、その変貌ゆえに苦悩も抱える近未来の東京を立体的に描き出す。
観劇のきっかけ
平田オリザ、若い頃から避けてきました。正直なところ、私の好みとは対極の演劇です。歳を重ねて、いろいろと聞きかじったり、アゴラ劇場の芝居を観たりするうちに、今観たら観方が変わっているかな、という思いが心を占めてきました、また、映画/小説「幕が上がる」が素直に良い作品で感動したので、行ってみよう、という気持ちになりました。
ネタバレしない程度の情報
観劇日時・上演時間・価格
観劇日時 | 2020年2月6日 19時00分〜 |
上演時間 | 115分(途中休憩なし) |
価格 | 4000円 全席自由 事前付与整理番号順 |
チケット購入方法
青年団のホームページには、いろいろな買い方、プレイガイドへのリンクがありました。
事前に決済をしたかったのと、整理番号が一番若かったのと、チケット発券に手数料がかからなかったので、
武蔵野文化事業団の予約サイトで予約し、VISAカードでカード決済をしました。
当日、受付でチケットを受け取りました。
客層・客席の様子
男女比は7:3くらい。女性が少なかったのが意外でした。全体的に、30代より上の方の一人観劇が目立つ客席でした。
観劇初心者の方へ
観劇初心者でも、安心して観る事が出来る芝居です。
インターナショナルバージョンということで、多言語で話が進むのが心配でしたが、日本語以外は翻訳がスクリーンに表示されるので、映画字幕が見れるのであれば、問題なく観劇できるかと思います。
・会話劇
・静か
観た直後のtweet
青年団「東京ノート・インターナショナルバージョン」115分休無。
多言語心配だったけど概ね誰でも楽しめる。
自分の中の強敵な作風と対決な感覚。とても緻密。色々なものが交錯するのすごい。殆ど意識途切れる瞬間がなかったけど。少し刺激が足りないかなぁの感覚が拭えず。50過ぎたらまた変わるかな pic.twitter.com/SQvRSoyrY6— てっくぱぱ (芝居好き) (@from_techpapa) February 6, 2020
映像化の情報
情報はありません。
満足度
(3/5点満点)
CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
感想(ネタバレあり)
ストーリーは。事前記載の通り。
プーチンが82歳になる、近未来。日本のどこか小さな美術館の休憩スペース。様々な国籍、様々な言語で繰り広げられる会話を通して、その時代だったり、戦争のことだったり、いろんなことが見えてくる。7カ国後くらいが飛び交っているのかな?。日本語以外には、全て字幕がつく。かつ、(英語以外には)英語字幕もつく。舞台左右の袖と、舞台上方の空間にあるスクリーンに表示される形式。同時並行で進む、ごくごく自然な会話で、人々の心情模様をはじめ、戦争のこと、日本のこと、世界のこと、そこで生きている人が悩んでいることを浮かび上がらせていく芝居。
平田オリザの演出した作品を観るのは初めて。「東京ノート」も初めて。
1994年の初演以後、いわゆる平田オリザの「静かな演劇」が流行り、模倣したんだろうなぁという芝居が散々上演された時期があった。学生劇団もこぞってそんな芝居をしていた・・・その時観た芝居の記憶が、私はどうも苦手で、直接の平田オリザの演出した作品を観ていないのに、今まで敬遠しいてた。今日は、意を決して、対峙してみた。
芝居がとても緻密だなぁ、と思った。字幕をシンクロさせることを考えると、ものすごく自然な会話なのに、アドリブは殆どないのだろう、と想像する。外国人の俳優さんも、全く違和感なく溶け込んでいた。ちょっとした会話の中から、匂い立ってくるいろいろな事。…戦争のこと、志願して戦争に行く人が今まさに身近にいるし、日本に働きに来ている外国の人々は沢山いる。それでも日本や韓国は、割と平和に恋の事を話してて、そもそも会話していない者同志も、どこかかみ合っていない感があり。ラストに出てくる「人の心は人それぞれだから、大事なものは目に見えないっていうのは、分からない」っていうテグジュペリの言葉へのアンチテーゼ的な主張。この言葉が、よく分かる。ちょっとした美術館の片隅で交わされている会話でさえ、実は「同じ風景」、同じパースペクティブでものを語っているものなんて、殆どないのだから。大きなテーマはそこなのかなぁ、と感じた。
観る前に思っていたことがあった。…7ヶ国語が展開される芝居なら、「ある言語を理解する能力を持つ人がその場に居る事を知らないで、その言語でうっかりヤバイ話してしまう」っていう展開があるんじゃないかなぁ、と思ったけれど。あった。4箇所くらい気が付いた。それ程巧妙に隠していたわけではないので、一つのテーマとして扱われている、と思っていいのかもしれない。特に、由美がラスト、「星の王子様」の話を話し出すのは面白い。正直、あの話は唐突な訳だけれど、何となくこの人、「たどたどしい挨拶以上に」韓国語を理解しているんじゃないだろうか、という気がしていた。どうしてそう思ったのか、今思うと、その理由を上手く言えないのだけれど。
いろいろと興味深いなぁ、と思い、2時間殆ど意識が途切れる事は無かったのだけれども。かつて平田作品の模倣を一杯見た時と同じように、「演劇を観る事で得たい刺激」という意味では、強烈に弱いのかなぁ、と思った。圧倒的に緻密だし、いろいろなところに解釈できる余地のあるテーマが隠されているのだろうとは思う。だからこそ、集中して、のめり込んで見る事が出来るのだけれど。いつしか、「この劇場にいる自分が、芝居観ながらそういう解釈を考えている」っていう、メタ的な視点の中にいる事、そのものに、気が付いてしまってしまった(ややこしい)。簡単に言うと…、あれどう?これどう?と考える余裕があり過ぎて、考える事が主眼になってしまっている芝居を観ている感覚。その事が災いしてか、「戦争」なんかのモチーフがここかしこに匂わされているのに、劇場の外に想像力を飛ばせる瞬間が無かった。通常、いい芝居を観ると、観ながら、精神がその劇場の外に飛び出ている「フワフワした」自分を発見するのだけれど。目の前の芝居の技巧とは裏腹に、劇場の場から精神が飛び立つ気配がなかった。その点が残念だし、私自身にはあまり合わないスタイルなのかなぁ、と感じた。
思ったより男性、特にシニア層が多くて。もう少し歳を重ねたら分かるかな。ても、歳を重ねたら分かる演劇っていうのも、どうなのかなぁ。
英語字幕だけは、常に、表示が出ていたので、英語を母語とする人への観劇を促しているのだろう。ただ、あれは本当に必要なのかな。字幕は、2センテンス位の単位で表示が切り替わるので、日本語のセリフより、英語字幕の方が表示が、若干早い。そこに、日本語のセリフの「間」がまどろっこしいと、ついつい、英語字幕を先読みして、次何喋るのか想像しちゃう。…字幕を視界から消すのも難しかったし。できれば無くしてほしい、あるいは、英語字幕を表示する回を、限定してほしいなぁ、と思った。