<映画レポート>「ミッドナイトスワン」
<映画レポート>「ミッドナイトスワン」
【ネタバレ分離】昨日観た映画、「ミッドナイトスワン」の鑑賞レポートです。
もくじ
映画基本情報
キャスト
凪沙:草なぎ剛/桜田一果:服部樹咲/瑞貴:田中俊介/キャンディ:吉村界人/アキナ:真田怜臣/桑田りん:上野鈴華/桑田真祐美:佐藤江梨子/桑田正二:平山祐介/武田和子:根岸季衣/桜田早織:水川あさみ/洋子ママ:田口トモロヲ/片平実花:真飛聖
スタッフ
監督: 内田英治 /脚本:内田英治/エグゼクティブプロデューサー:飯島三智/プロデューサー:森谷雄,森本友里恵/ラインプロデューサー:尾関玄/撮影:伊藤麻樹/照明:井上真吾/録音:伊藤裕規/整音:伊藤裕規/美術:我妻弘之/装飾:湯澤幸夫/衣装:川本誠子/コスチュームデザイン:細見佳代/ヘアメイク:板垣美和,永嶋麻子/編集:岩切裕一/音楽:渋谷慶一郎/音響効果:大塚智子/助監督:松倉大夏/バレエ監修:千歳美香子/制作担当:三浦義信,中村元
2020年製作/124分/G/日本/配給:キノフィルムズ
公式サイト(公開後、一定期間でリンク切れの可能性あり)
映画.comリンク
解説
草なぎ剛演じるトランスジェンダーの主人公と親の愛情を知らない少女の擬似親子的な愛の姿を描いた、「下衆の愛」の内田英治監督オリジナル脚本によるドラマ。故郷を離れ、新宿のニューハーフショークラブのステージに立つ、トランスジェンダーの凪沙。ある日、凪沙は養育費目当てで、少女・一果を預かることになる。常に社会の片隅に追いやられてきた凪沙、実の親の育児放棄によって孤独の中で生きてきた一果。そんな2人にかつてなかった感情が芽生え始める。草なぎが主人公・凪沙役を、オーディションで抜擢された新人の服部樹咲が一果役を演じるほか、水川あさみ、真飛聖、田口トモロヲらが脇を固める。
あらすじ
新宿のニューハーフショークラブ、スイートピー、では、メイクしステージ衣装に身を包み働くトランスジェンダーの凪沙(草彅剛)。洋子ママ(田口トモロヲ)が白鳥に扮した凪沙、瑞貴、キャンディ、アキナをステージに呼びこみ、今夜もホールは煌びやかだ。
「何みとんじゃ!ぶちまわすど!」
広島のアパートでは、泥酔した母・早織(水川あさみ)が住人に因縁をつけていた。
「何生意気言うとるんなあ!あんたのために働いとるんで!」
なだめようとする一果(服部樹咲)を激しく殴る早織。心身の葛藤を抱え生きてきたある日、凪沙の>元に、故郷の広島から親戚の娘・一果が預けられる。
「好きであんた預かるんじゃないから。言っとくけど、わたし子供嫌いなの」
叔父だと思い訪ねてきた一果は凪沙の姿を見て戸惑うが、二人の奇妙な生活が始まる。
満足度
(4.5/5.0点満点)
鑑賞直後のtweet
映画「ミッドナイトスワン」
美しい。哀しい。切ない。のめり込みすぎて、時計を一度も見なかった。ハッキリとしたストーリーがあるのに、動機が明確でない、ぼかした箇所があって。それがむしろ、解釈に幅を持たせてくれていいのかな、と思う。草なぎ剛、服部樹咲、演技最高だな。オススメ! pic.twitter.com/G6qgNKeFoZ— てっくぱぱ (芝居が好き・映画も好き) (@from_techpapa) September 26, 2020
感想(ネタバレあり)
ラスト、どう落とすんだろう。そんな疑問が、途中で沸き起こった。
物語中盤、水川あさみ演じる一果の母が、東京まで迎えに来る。バレエの発表会、客席で観る母を前に、、白鳥の湖(?)を踊る直前に固まってしまう一果。一果を舞台上で抱きしめる、母。ああ、やはり母の方が強い絆を持っているのかとは思いつつも、母の愛は強い、母の愛には勝てなかった・・・なんて結論は、この物語にはあまりにも平凡すぎる。結局、母を選んで・・・というか、母を選ばざるを得なくて。その後の一果の生活は、断片しか語られないも、卒業式の表情や、バレエの先生が広島までレッスンに来てくれている様子もあり、母はまともな生活に戻り、娘のバレエを続けさせたのだな・・・という事は分かる。ただ、最後にはどちらを選ぶのだろう、何を選ぶのだろう、そんな「選択」の結末を、途中から考えずにはいられなくなる。
冒頭から、トランスジェンダーで、生きづらさのかたまりのようなものを抱えてトゲトゲしている、凪沙と、これまでの酷い境遇のせいか、自分の感情を上手く表現できない、一果。バレエを踊る一果の姿を見て、キヤッチコピー通り「母になりたいと思った」、凪沙。ただ、この時の凪沙の感情は、実は本人にもハッキリしないんじゃないか、と思う。この子を守ろう、という事を決めたことは分かるのだけれど、実はその感情が何だったのか、本人さえはっきりしていなかったのではないか。観客から・・・少なくとも私から見ると、凪沙が感じた感情は、どちらかというと「恋」とか「憧れ」に近いものだったように映る。自分には到達しえない女性としての美だったり、バレエの美しさだったり、そういった得体のしれない美。「イデア」、みたいなものか。それを守ろうとして、母になろうと思ったのだろう。
ただ、その思いは、実の母の登場で、裏腹な方向に進んでしまう。性転換手術を受ける決心をして、なぜ病気になったのか(ちゃんと(手術のあとの)手入れをしなかった、というセリフが聴こえたけれど、定かではなく)、その部分も、あまり詳しくは語られていなくて。そういった事を、少し曖昧にしつつ、こちら側に想像する余地を残してくれているように感じる。
ラスト近くの、海辺のシーン。もう眼がほとんど見えないはずの凪沙にも、踊っている姿がきっと見えて。「実の母と、絆の母、どちらを選ぶのか」みたいな事を考えてしまった自分が、ちょっと恥ずかしくなってしまった。お互いがお互いの弱さを抱えたまま、相手に見出した「美」が、きっとこの作品が描きたかったことだろう。そんな事を思いながら、ラストシーンを見た。
しかし、映像が奇麗だ。かなりの時間、都会の片隅の汚い部分を映しているのに、奇麗だ。そして、草なぎ剛、服部樹咲、の二人の演技が、とにかくすごい。草なぎ剛の、疲れもにじませながらトランスジェンターの悲哀を表す表情と、髪をバッサリ切って働く姿と。服部樹咲の、表情を一切変えれなくなってしまったほどに、疲弊した心を表す表情。その世界が、とにかく、とにかく、美しい。
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