<映画レポート>「水上のフライト」
【ネタバレ分離】昨日観た映画、「水上のフライト」の鑑賞レポートです。
もくじ
映画基本情報
タイトル
「水上のフライト」
2020年製作/106分/G/日本/配給:KADOKAWA
キャスト
藤堂遥:中条あやみ/加賀颯太:杉野遥亮/朝比奈麗香:冨手麻妙/村上みちる:高月彩良/高村佳偉人/平澤宏々路/藤堂郁子:大塚寧々/宮本浩:小澤征悦
スタッフ
監督: 兼重淳 /企画:土橋章宏/脚本:土橋章宏,兼重淳/プロデューサー:遠山大輔,田中美幸/スーパーパイジングプロデューサー:久保田修/アソシエイトプロデューサー:小林麻奈実/ラインプロデューサー:原田文宏/撮影:向後光徳/照明:斉藤徹/録音:大竹修二/美術:布部雅人,春日日向子/衣装:加藤哲也/装飾:松尾文子/ヘアメイク:知野香那子/編集:川瀬功/音楽:上野耕路/主題歌:SUPER BEAVER/スクリプター:増子さおり/助監督:渡辺圭太/制作担当:阿部史嗣
公式サイト
水上のフライト
(公開後、一定期間でリンク切れの可能性あり)
映画.comリンク
作品解説
不慮の事故で走り高跳び選手としての夢を絶たれた女性が、パラカヌーとの出会いを通して希望を取り戻していく姿を、中条あやみ主演で描いたヒューマンドラマ。「超高速!参勤交代」シリーズの脚本家・土橋章宏が、実在のパラカヌー日本代表選手・瀬立モニカとの交流に着想を得て、オリジナルストーリーとして脚本を執筆。「キセキ あの日のソビト」の兼重淳監督がメガホンをとった。遥を支える仲間・颯太を「居眠り磐音」の杉野遥亮、母・郁子を大塚寧々、コーチ・宮本を小澤征悦がそれぞれ演じる。
あらすじ
走り高跳びで世界を目指す遥は、事故に遭い歩くことができなくなってしまう。心を閉ざし自暴自棄に陥っていたある日、パラカヌーと出会った彼女は、周囲の人々に支えられながら新たな夢を見いだしていく。
満足度
(4/5.0点満点)
鑑賞直後のtweet
映画「水上のフライト」
よかった!すごく丁寧な描き方の映画。結末自体は宣伝見たら見えてる話だからこそ、かなりの割合を前半のハルカの葛藤に割いてて、それがとても切実で涙。最後のエピソードはおまけみたいな。さりげなく細かい伏線回収が多く好き。一部ご都合主義設定あるがご愛嬌。オススメ! pic.twitter.com/OTwrFMv5um— てっくぱぱ (@from_techpapa) November 15, 2020
感想(ネタバレあり)
「あきらめる過程」を、とても丁寧に描いているのに感動した。
映画館で、何度か予告編を見た。ストーリーの全ては、予告編に全て詰まっている。なので、オチは分かっている。でも、予定調和的な作品ではない、と感じたのは、前半の「あきらめる過程」の描写が、とても丁寧だからだと感じる。
事故にあう前も、あった後も、仏頂面でトゲトゲしい、遥。プライドが服を着て歩いているような人の、挫折。生きる理由、プライドを全て奪われる。・・・映画の中では、この事故で下半身が動かなくなる過程はかなり淡々とスピーディーに描かれて。早い段階で、カヌーのコーチと描写が登場する。お、主人公、すぐにカヌーに飛びつくのかな、と思ったら。・・・そこからが丁寧だった。
ただただ、誰かに怒りをぶつけたい感情だったり。楽しんでいるようで楽しんでいない状況だったり。・・・そして、カヌーを選んでしまったら、走高跳を"捨てる"事になるんだ、という葛藤。その過程が、丁寧に丁寧に、描かれていた。キャンプ場でマシュマロを焼きながら、颯太と「あきらめる事の怖さ」について話す遥。セリフになっている言葉は、とても少ない。少ないのに、感情の動きがヒシヒシと伝わってくる。それが良かった。
後半、パラカヌーに真剣に取り組んで、パラリンピック選考の大会で1位を目指す。奇麗な湖のシーンと共に、競争の場面は爽快だけれど、私自身はこの辺りは「オマケ」だと思って見ていた。大会の結果が「2位」というのも、物語の焦点がブレなくてよい。「優しいね」と言うだけで、颯太に告白したりしないのもいい。大切なのは、一度あきらめたけれど、根本の部分で人生をあきらめなかった事。その点にフォーカスをあててくれていたのが、よかった。
登場人物たちを理解するための細かいヒントのような伏線が、作品のあちこちに散りばめられていて。散りばめたものを、さりげなく、言葉少なく丁寧に、回収していくのもよかった。例えば、カメラアングル的に、明らかに変に映している黒い帽子や、どうやらカヌーの選手?だった父の影、颯太が写真に写っている人を過去形で語っている事、・・・などなど。説明的に話されてしまうと白けてしまうようなことが、自然に織り込まれて、納得できるのがいい。
二つ、ちょっと残念な点があった。
一つは、杉野遥亮演じるヒーローの颯太の登場ストーリーが、どうも不自然な事。図書館での出会いとか、ベタやなー、と思うし。突如カヌーの応援に来たかと思えば、車椅子(などの)職人で、カヌー教室に通う子供たちも彼と仲良しだったりして。若干、ご都合主義な無理がある設定。時間や出演者の制約上仕方なかったのかな、とか考えてしまう。ま、全体の葛藤には影響していないので、映画の嘘、として受け入れれば、大した話でもないのだけれど。
もう一つは、カヌーから落ちた人を助ける風景を映しているシーンが無かった事。乗っている人は足が動かないのだから、落ちる事は死と同然の恐怖だろうし、自力で泳ぐ事が出来ない人を助けるのは、助ける方も大変だと思う。なのに、カヌーから落ちると、すぐに岸にあがって体を乾かしているシーンになってしまう。劇中、カヌー教室の女の子に、落ちる事の恐怖について、遥が質問されるシーンもあるのに、落ちた後の描写がないのが、残念。実際に落ちた時にどんな大変さがあるのか、映像を挟んで欲しかった。
役者さん。中条あやみ、この作品で初めて知った。女優さんというより、モデルのキャリアが長い人のよう。映画前半と後半で、劇的に表情が変わる。少しステレオタイプ的ではあるものの、この作品の描くものにはマッチしていたと思う。小澤征悦、狂言回し的な役所でもあるが、アドリブっぽい会話のセリフがとてもいい。クレジットに記載がない子供たちとのやり取りも、面白い。「お前、車の免許だけは絶対取るなよ」というセリフは、思わず映画館で吹いてしまった。大塚寧々、上手いなぁ。表情一つで母の複雑な思いが見えてくる。大女優。
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