<映画レポート>「靴ひも」
【ネタバレ分離】昨日観た映画、「靴ひも」の鑑賞レポートです。
もくじ
映画基本情報
タイトル
「靴ひも」
2018年製作/103分/G/イスラエル/原題:Laces
配給:マジックアワー
キャスト
ガディ:ネボ・キムヒ/ルーベン:ドブ・グリックマン/イラナ:エベリン・ハゴエル/リタ:ヤフィット・アスリン/デデ:エリ・エルトニオ
スタッフ
監督: ヤコブ・ゴールドワッサー /製作:マレク・ローゼンバウム,ミヒャエル・ローゼンバウム,ヨナタン・ローゼンバウム/脚本:ハイム・マリン/撮影:ボアズ・イョーナタン・ヤーコブ/美術:ヨエル・ヘルツバーグ/音楽:ダニエル・サロモン
公式サイト
靴ひも
(公開後、一定期間でリンク切れの可能性あり)
映画.comリンク
作品解説
約30年ぶりに一緒に暮らすことになった、家族を捨てた父と発達障害のある息子が、本当の親子関係を築くまでを笑いと涙を交えて描いたイスラエル製作の人間ドラマ。イスラエル・アカデミー賞で8部門にノミネートされ、父親役のドブ・グリックマンが助演男優賞を受賞した。
あらすじ
母の急死により、残された発達障害のある50歳の息子。かつて家を出て行った父親が呼び出され、約30年ぶりに親子2人での生活がスタートする。生活習慣へのこだわりが強い息子に、父はどう接したらよいか戸惑いながらも2人は徐々に打ち解けていく。そんな中、父が末期の腎不全と診断され、人工透析が必要となる。特別給付金申請の面接の場で、特別な支援が必要であるとアピールするため、息子が靴ひもを結べないふりをする。
満足度
(5/5.0点満点)
鑑賞直後のtweet
映画「靴ひも」
イスラエル映画。久しぶりに映画館で嗚咽メン。素晴らし過ぎる。父と子の物語。とにかく見て!な作品。
映画の一つひとつに無駄がないというか、ちょっとした呼びかけセリフが、実は後の伏線だったり、隠喩だったりに繋がってて。感情たっぷりなのに緻密なのもよかった。超オススメ! pic.twitter.com/mPpQAm11NF— てっくぱぱ (@from_techpapa) November 30, 2020
感想(ネタバレあり)
今のところ、今年ベストの映画間違いなし、だと思う。もう何というか、後半1/3は涙なしに見れないというか。ただ、お涙ちょうだいの感動もの、というのとは全く違う。自然と涙あふれた感覚。父の人生と、息子への感情の変化と、息子自身の成長とが、余すところなく描かれていた。午前中見た事もあり、映画館から出た時の光が眩しい。そんな清々しい感覚の映画だった。
見ながら、「分け与える」とか「分かち合う」とか。そんな事を考えた。
肝臓疾患で、命が長くない。透析も限界でどうにも腎臓が手に入りそうにない、となった時、息子ガディから肝臓をもらえばいい、という周りの人に対して、父ルーベン返す言葉「産まれて今までほおっておいて、それで今更、腎臓まで奪えっていうのか」という言葉が、印象的。約40年間、避け続けてきた息子との関係。同居したことで、次第に親愛と愛情が芽生える中、今更窮地に陥ったからと言って相手から奪うなんて出来ない、という父ルーベン。それを知ったガディの、決死の抵抗。自分の肝臓を分け与える事で、父に生きて欲しいと願うガディ。
当初は父にとっては「奪う」だった行為が、いつの間にか人生そのものを「分かち合う」「分けてもらう」に変っている。肝臓をもらう事で、自分の人生の中に、それまで無視してきた息子の人生を、再度、置きなおすことが許される感覚。言葉が象徴するものとは逆の感情が、二人とその周囲の人たちの周りに起こっているのが、とても象徴的で、涙を流しながら、むむむ、と唸ってしまった。
ストーリーの路線は全く違うけれど、命に関する感覚が、どこか手塚治虫の漫画「ブラック・ジャック」で感じたのと、似たような構造なのかな、と思い、劇中ふとブラックジャックの言葉を思い出したりもした。
セリフのやり取りが、とても緻密。父ガディに「話がある」と話しかけると、冒頭では「後でだ」と避けるのに、徐々に、避けつつも話を聞くように変っていったり。肝臓外科医に初めてかかる時、ホリ先生の名前を間違えて呼ぶけれど(名前は、うろ覚え)、その後この先生が登場するシーンでは、必ず名前を呼ぶようにしていて、物語が混乱しないようにしていたり。ラストは、冒頭と同じような葬式のシーンで、ガディの言葉に戻ったり。細かい台詞のやり取りが、物語の隠喩や意図を示すために考え抜かれているように感じた。DVDを買って、もう少しゆっくりと見返してみたい所。
役者さん、主演2人、ネボ・キムヒ、ドブ・グリックマンに加えて、先日見た「声優夫婦の甘くない生活」にも出ていた、エベリン・ハゴエルがとても印象的。この映画もイスラエル映画だったけれど、この二作を見るまで、イスラエル映画なんて聞いた事なかった。意外と日本人の嗜好に合うんじゃないかな、と感じた。