<映画レポート>「ワン・モア・ライフ!」
【ネタバレ分離】昨日観た映画、「ワン・モア・ライフ!」の鑑賞レポートです。
もくじ
映画基本情報
タイトル
「ワン・モア・ライフ!」
2019年製作/94分/G/イタリア/原題:Momenti di trascurabile felicita
配給:アルバトロス・フィルム
キャスト
パオロ:ピエルフランチェスコ・ディリベルト/アガタ:トニー・エドゥアルト/天国の役人:レナート・カルペンティエーリ/アウオラ:アンジェリカ・アッレルッツォ/フィリッポ:フランチェスコ・ジャンマンコ
スタッフ
監督: ダニエレ・ルケッティ /脚本:ダニエレ・ルケッティ
公式サイト
ワン・モア・ライフ!
(公開後、一定期間でリンク切れの可能性あり)
映画.comリンク
作品解説
「ローマ法王になる日まで」のダニエレ・ルケッティが監督・脚本を手がけ、イタリアで大ヒットを記録したコメディ。思いがけず人生のロスタイムを手に入れた中年男性の奮闘を通し、「幸せとは何か? 家族とは何か?」を描き出す。主演は「マフィアは夏にしか殺(や)らない」など監督としても活躍するピエルフランチェスコ・ディリベルト。
あらすじ
シチリア島パレルモで暮らすパオロは、いつも通る交差点で交通事故に遭ってしまう。死の瞬間、彼の脳裏によぎったのは愛する妻や子どもの姿ではなく、恋人に告げられた深すぎる言葉や客待ちタクシーの列の謎など、他愛のないことばかり。予想以上に短い寿命に納得できず天国の入口で猛抗議すると計算ミスがあったことが発覚し、92分間だけ寿命を延長してもらえることに。地上に戻った彼はこれまでの自分勝手な生き方を改め、限られた時間の中で家族との絆を取り戻そうとするが……。
満足度
(2.5/5.0点満点)
鑑賞直後のtweet
映画「ワン・モア・ライフ!」
タイトルと予告とストーリー見たら、まあテーマとかは想像できてしまうので、過程を楽しむんだけど。
なんだろな、最初はよかったのに地上に戻るあたりから上手くパチリとはまらなかった。イタリア人の感覚なのかな。テーマは同じで世界共通なのに、描き方の差なのかな。 pic.twitter.com/xCe4w5zqJG— てっくぱぱ (@from_techpapa) March 26, 2021
感想(ネタバレあり)
なんとも中途半端な映画だった。イタリア映画、との事だけれど。イタリア流なのか。あるいは作りが甘いのか、よく分からない。途中、少し船を漕いでしまった。宣伝ビデオと、チラシなんかの宣伝文句、そしてタイトルを見ていれば、大体どんな話かは想像できてしまう。「素晴らしき哉人生」とか「ゴースト」じゃないけれど、この路線の映画…一度死んだ人が、何らかの理由で人生をやり直すチャンスを与えられる…というのは、もうお決まりパターンだ。だから、その過程が大事。主人公がどうやって「人生の尊さ、大切さ」に気が付くのか、その過程が大切なのだけれど。その描き方が、ちょっと雑過ぎるなぁ、という感覚を否めなかった。
冒頭のシーンは、かなり興味惹かれる。バイクが車に轢かれて、「20年前のあの女性はどうしてあんなことを言ったのだろう」「冷蔵庫のランプはドアを閉じると本当に消えているのか?」なんて事を考える。大切な事より、そんな「どうでもいい事を」を思い出してしまう。どこか哲学的な問いに、「おっ、面白い映画に当たったな」と期待を膨らませてしまう。
加えて、たどり着いた天国の出発ゲート、係員とコンピューターでのやり取りも面白い。「死期を決めるのはこちらの係員。死因は手頃なものを選ぶので、死因と死期は関係ない」っていう設定に興味惹かれて、しかも「(健康にいい)スムージーを飲み続けていたのに、寿命算出の考慮に入っていなかった」という理由で、寿命が92分延びる(笑)。…天国の割には、80年代の旧式コンピューター使って、分厚いノートパソコンではじき出される「残りの寿命」。天国の係員と共に、エレベーターで92分過ごすために、地上に降りていく。設定がバカバカしく面白くて、お、これはいい感じな映画、と思ったのだけれど。
ここから先が期待外れ。
地上に降りて残りの92分を生きる生き様が、雑過ぎる。この男は実はダメ男で、不倫…というか女の事しか考えていないのはよく分かったけれど。それにしたって、途中で挟まれる回想シーンも、若返った感じもしないし、時には少年時代の回想をオッサンがオッサンのまま演じてて…見ていて、何が言いたいんだYo!と、思わず突っ込んでウンザリしてくる。
しかも、19時が期限で天国に帰るはずなのに、何故か16分くらい延長されているし(理由説明してたあたり、少し寝てしまった。説明あった?)。もう一度事故を起こせ、と言われるも、事故は起きずに戻ってきてしまう…のに、特に夢落ち、という訳でもない。結局あの天国へのゲートと付き添い係のオッサンは何だったんだよ…と突っ込んでしまうのと。…なんだろ、虚構だって分かって見ている我々の「その世界を理解しよう」っていう親切心を、ことごとく裏切って、不倫系の話に持ち込んでしまう。んー、何だかなぁ、というのが正直なところ。テーマが古典的なだけに、とにかく残尿感が多すぎる結末に見えてしまった。
主人公のナレーションの声が、妙に太くて、デカい。実際の生活のシーンの上に回想シーンで声を重ねられると、そのたびにナレーションの方に意識を持って行かれてしまう。もう少しボリュームや音圧を落とせばいいのに、とか考えてしまう。
この、子供のプールでの思い出も「とにかく、男女の仲に持ち込んで考える」のは、イタリアならではなのかなぁ。イタリア人は「人生をやり直す事」=「恋しなおす事」みたいに捉えているのかなぁ、なんていうステレオタイプな事も思ったけれど…。やっぱり納得いく結論は、この映画は雑過ぎて、イタリアも含めた全世界共通的に「イマイチ」、という結論が一番しっくりくる。そんな作品だった。