<観劇レポート>吉祥寺GORILLA「誰か決めて」
【ネタバレ分離】昨日観た芝居、 吉祥寺GORILLA「誰か決めて」の観劇レポートです。
もくじ
公演前情報
公演・観劇データ
項目 | データ |
---|---|
団体名 | 吉祥寺GORILLA |
回 | 吉祥寺GORILLA第3回公演 |
題 | 誰か決めて |
脚本 | 平井隆也 |
演出 | 平井隆也 |
日時場所 | 2021/07/07(水)~2021/07/11(日) 花まる学習会王子小劇場(東京都) |
団体の紹介
劇団ホームページにはこんな紹介があります。
吉祥寺 GORILLA とは、主宰・平井隆也、平井泰成、中村緋那子という成蹊大学劇団円想者の卒業生3人による演劇団体。東京・吉祥寺をメインに活動しているが、公演会場は別の町ばかり。
旗揚げ公演『くるっていきたい』では女子プロレス団体の興亡を描き、第 2 回公演『グロサリー』ではスーパーを中心に起きた殺人事件をテーマに無自覚な罪を描いた。
作品の特徴としては、辛い状況に関して投げ出してしまえば楽になる人間が、自意識や真面目さゆえに狂いきれない姿を描く。過去と現在の対比を用い、後悔と未来への希望を混ぜた作品を描くことが多い。また、多くの現場で勉強をした知識と経験を活かし、作品作りを行う。演劇は、あくまでも俳優と一緒に作るものだと考え、俳優から出たアイデアを積極的に取り入れる。
過去の観劇
- 2022年09月10日吉祥寺GORILLA「夜鳴く鳥は朝に泣く」
- 2021年12月11日吉祥寺GORILLA「溺れるように走る街」
事前に分かるストーリーは?
こんな記載を見つけました
高倉は市役所の生活福祉課を一年で退職後、便利屋でアルバイトをしている。今回の仕事は、孤独死した男性の遺品整理。物で溢れた家を片付けるうちに高倉は気づく。声が聞こえてくるのだ。田舎に置いてきたはずの声が。部屋で一人、高倉は死んだ男の言葉を語りだすのだった。
太宰治『人間失格』をモチーフに過去と未来が交錯する物語。
「これは悲しいお話ですか?これは楽しいお話ですか?」
ネタバレしない程度の情報
観劇日時・上演時間・価格
項目 | データ |
---|---|
観劇日時 | 2021年7月9日 18時50分〜 |
上演時間 | 135分(途中休憩なし) |
価格 | 3500円 全席指定 |
チケット購入方法
劇団ホームページからのリンクで、Webで予約しました。
当日、現金でお金を払い、指定席券をもらいました。
(クレジットカード決済も出来たようです)
客層・客席の様子
男女比は5:5。
40代upの男性が目立った感はありましたが、様々な年代の人がいました。
観劇初心者の方へ
観劇初心者でも、安心して観る事が出来る芝居です。
・シリアス
・会話劇
・考えさせる
・シンプル
観た直後のtweet
吉祥寺GORILLA「誰か決めて」135分休無
劇団初見。面白かった。ズッシリと来た。演技の緻密さ、空間作りの濃さが、演劇として心地よかった。太宰「人間失格」ベースの物語だけれど、それにはあまり心動かされず。むしろ未来と交錯する物語の帰結先がいい。太宰の若さみたいなのも感じたり。オススメ! pic.twitter.com/RbqJpuwq9p— てっくぱぱ (@from_techpapa) July 9, 2021
満足度
(4/5点満点)
CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
感想(ネタバレあり)
「誰か決めて」ってタイトル。「ナイゲン」みたいな、あるいは「会議は踊る」的な、なかなか決まらないぞオラっ的なコメディを、勝手に想像していたけれど、全然違った。太宰治「人間失格」をベースラインに、現代で生きる、今一つ「自分の顔」を持ちきれない人を描いた作品。「人間失格」・・・だいぶ前に読んだきり。細かい内容をもう忘れてしまったので、どの程度ベースにしているのかは、パっとソラでは言えないけれども。太宰作品に、現代に生きる人の孤独・・・的な要素も織り込む。
演劇として緻密に作られていて、観ていて飽きない。舞台装置らしきものは殆どないといっていいシンプルな舞台だけれど。それでも、ぐるぐると回るだけで、主人公をとりまく人間模様が浮かび上がる。
「人間失格」をなぞる物語部分は、あまり感情みたいなものはうまれてこなかった。私自身元々、太宰治があまり好きではないっていう要素も強いかもしれない。淡々と淡々と、でも力強く語られる物語を、ただ横から観ているように思う時間が続く。描かれてい世界は深いのだけれど、特に感情が出てこない。
それが、現代の、死後の遺品清掃の時間と重なると、世界観が開けてくる。「何かになる・顔を持つ」事と「他人からの期待」とに押しつぶされる感覚が、元々の「人間失格」とはほんの少し質の異なる所にある「現代の孤独」と繋がる。むしろ、太宰治の物語が、悩みが内向的過ぎて、どこか幼いようにさえ感じてくる(まあ、そういう物語だけれど)。それでも、どこか底の方でつながっている、孤独な感覚。ラスト、盲目の香織(うろ覚え)が、絵本を読み聞かされるシーンが、とにかく切ない。何に生き、何に死ぬのか、みたいなことを改めて考えた。
死後の遺品清掃、最近の演劇や映画では、割とよく出てくる題材。4作くらい挙げられるけれど。どこか、物語に惹きつける題材なのか。今回は、太宰作品がベースで、自分のストライクゾーンとはすこしズレていたけれど、この劇団の作品、他にも観てみたいな、というのを強く感じる。作品創りの緻密さが印象に残る。
役者さんが皆上手い。第3回公演で、ここまて上手い役者さん集めるのがすごいな。特に印象的だったのは。平井泰成、居候している時のあのとぼけた演技と、終始どこかニヤニヤとにやけている感覚が好き。石澤希代子、冒頭から狂気をにじませていて、やっぱり狂気が・・・っていう妙な納得感のある狂気が印象的。あの位置に照明が。星秀美、ほんと七変化する女優さんだなぁ。この作品の2役も、大分違う印象で。体の関係を迫る描写がものすごく生々しい。黒沢佳奈(?)、ラストの盲目のシーン。お話全体からすると地味なポイントだけれど、盲目の演技のリアルさは忘れられず。