<映画レポート>「イン・ザ・ハイツ」
【ネタバレ分離】昨日観た映画、「イン・ザ・ハイツ」の鑑賞レポートです。
もくじ
映画基本情報
タイトル
「イン・ザ・ハイツ」
2021年製作/143分/G/アメリカ/原題:In the Heights
配給:ワーナー・ブラザース映画
キャスト
ウスナビ:アンソニー・ラモス/ベニー:コーリー・ホーキンズ/ニーナ:レスリー・グレイス/バネッサ:メリッサ・バレラ/アブエラ:オルガ・メレディス/ダフネ・ルービン=ベガ/グレゴリー・ディアス4世/ステファニー・ベアトリス/ジミー・スミッツ
スタッフ
監督: ジョン・M・チュウ /製作:リン=マニュエル・ミランダ,キアラ・アレグリア・ヒューディーズ,スコット・サンダース,アンソニー・ブレグマン,マーラ・ジェイコブス/製作総指揮:デビッド・ニックセイ,ケビン・マコーミック/原作:リン=マニュエル・ミランダ/脚本:キアラ・アレグリア・ヒューディーズ/撮影:アリス・ブルックス/美術:ネルソン・コーツ/衣装:ミッチェル・トラバーズ/編集:マイロン・カースタイン/作詞:リン=マニュエル・ミランダ/作曲:リン=マニュエル・ミランダ/振付:クリストファー・スコット/音楽監修:スティーブン・ギジッキ
公式サイト
イン・ザ・ハイツ
(公開後、一定期間でリンク切れの可能性あり)
映画.comリンク
作品解説
ミュージカル「ハミルトン」でも注目を集めるリン=マニュエル・ミランダによるブロードウェイミュージカルで、トニー賞4冠とグラミー賞最優秀ミュージカルアルバム賞を受賞した「イン・ザ・ハイツ」を映画化。「クレイジー・リッチ」のジョン・M・チュウ監督がメガホンをとり、「アリー スター誕生」のアンソニー・ラモス、「ストレイト・アウタ・コンプトン」のコーリー・ホーキンズ、シンガーソングライターのレスリー・グレイスらが出演。
あらすじ
変わりゆくニューヨークの片隅に取り残された街ワシントンハイツ。祖国を遠く離れた人々が多く暮らすこの街は、いつも歌とダンスであふれている。そこで育ったウスナビ、ヴァネッサ、ニーナ、ベニーの4人の若者たちは、それぞれ厳しい現実に直面しながらも夢を追っていた。真夏に起きた大停電の夜、彼ら4人の運命は大きく動き出す。
満足度
(4.5/5.0点満点)
鑑賞直後のtweet
映画「イン・ザ・ハイツ」
最高なミュージカル!好き嫌い分かれるかな。細かいストーリー云々より、街の記憶、尊厳、生を歌い上げる。特撮要素もあるが、ハイツを解像度高く想像できるのがすごい。映像でこれなんだから舞台はどんなのか気になる。終始ラテンのビートで、ちと疲れはする。超オススメ! pic.twitter.com/W988TIYs3g— てっくぱぱ (@from_techpapa) August 1, 2021
感想(ネタバレあり)
久々にいいミュージカル映画見た。見終わった後、心地よい疲れの中で客席を後に。久々だなぁ、こんな映画。終始、ラテンのビートがノリノリで、140分と長めなので、見ていてちょっと、疲れる部分はあるけれど。ニューヨークのマンハッタン島の北の端に実在する街。あの、ハーレムよりも北に位置する「ワシントン・ハイツ」。ヒスパニック系が多く住む街に生きる移民たちの、生を、街の景色と共に歌い上げるミュージカル。音楽がとにかくいいのと、映像が、街の雑然とした感じも切り取りつつ、しかも美しい。
身も蓋もない事を言ってしまうと、ストーリーはそれ程、重要じゃない・・・というか、割と、ありきたりな葛藤かなぁ、と思う。主人公のウスナビは、コンビニを切り盛りしながら、いつか故郷に帰ってビーチに自分の店を持つことを夢見ている。街で育ったエリートとしてスタンフォード大学に進学したニーナは、「ハイツ」の外の差別に直面して自信を無くしている。ウスナビの幼馴染のバネッサは、差別や境遇と闘いながら、なんとかデザインの道で生きていけないか、模索している。ベニーは、タクシー会社の自分の仕事を大事にしながら、ニーナとの恋を温めている・・・。ヒスパニック系への差別とか、貧困でどうしようもない状況とか、そういう描写は、切実だけれど、それ程ねちっこく描かれている訳では無くて。むしろ、群像に近いように、薄く薄く切り取られている。ニーナのスタンフォードでの差別の話は涙を誘うし、ソニーの真面目で健気なところも詳しく見たくなるけれど、そういう特定の「苦悩」を掘り下げたりせずに、サラサラ描く。
そうして登場人物たちのそれぞれの生き様を、サラサラとミュージカルで歌い上げると、祖父母の時代から脈々と続いている、その街の共通の「記憶」みたいなものが、自然と浮かび上がってくる。ひょっとしたら、ニューヨークの南の方と同じように再開発されて、やがて「ワシントン・ハイツ」という街は、無くなってしまうかもしれない。たとえ不法滞在でも、街に人が生きた「記憶」は残る。そしてこのミュージカルは、その「記録」でもある。「ワシントン・ハイツ」という街が、今の時代に存在していた事。ただその事を、強くビートの効いた音楽で歌い上げる。そんな「街の記憶の物語」に思えて、細かなストーリーよりも、むしろ「記憶」の表現に感動した。
「ウスナビ」の名前の由来のシーンが、とてもグッときた。祖父がアメリカに移住した時、初めて見たアメリカ海軍の船(US Navy)の文字を見てカッコイイと思って、「USNAVY(ウスナビ)」にした、というエピソード。・・・ふと思い出したのが、ドラマ「アグリー・ベティ」に出ていた女優さん、アメリカ・フェレーラ、の名前の由来。彼女も移民の子だけれど、アメリカに着いたときに両親が、アメリカ社会に受け入れられる子になってほしい、と、そのまま「アメリカ」と名付けたという。どちらも、「アメリカ」に強い思い入れがある文脈でつけられたことに、アメリカンドリーム的な強さと、現実の寂しさも感じる。
ラストに近いシーン。ベニーとニーナのシーン、二人が愛を語り合う時に、アパートの壁を歩き出すシーン。SF要素が詰まってて、ミュージカルにはびっくりなシーンだけれど。後ろに見えるジョージ・ワシントン・ブリッジが、あまりにも奇麗。このシーンも、二人の愛と同時に、街の姿をファンタジックなのに現実感がある方法で描く。凄い表現だなぁ、と思った。