<観劇レポート>東京夜光 「奇跡を待つ人々」
【ネタバレ分離】昨日観た芝居、 東京夜光「奇跡を待つ人々」の観劇レポートです。
もくじ
公演前情報
公演・観劇データ
項目 | データ |
---|---|
団体名 | 東京夜光 |
題 | 奇跡を待つ人々 |
脚本 | 川名幸宏 |
演出 | 川名幸宏 |
日時場所 | 2021/07/24(土)~2021/08/04(水) こまばアゴラ劇場(東京都) |
団体の紹介
劇団ホームページにはこんな紹介があります。
下北沢演劇祭の若手支援企画「下北ウェーブ2018」に川名幸宏が選出され、それを機に2017年設立。
同企画で2018年2月「裸足の思い出」を上演。普遍の人間ドラマに重きを置いた創作を目指す。
2018年12月、初単独公演となる「世界の終わりで目をつむる」を上演。風呂なし三畳一間のアパートに住んだ自身の経験を元に、三畳一間に住む貧困ミニマリスト男と宗教女の恋を描いた。
2019年8月、「ユスリカ」を上演。「仲の悪い妹の結婚式で感動して泣いた」という経験から着想を得て、結婚直前の妹夫婦の家に、「余命宣告された」と言って風俗嬢の姉が住み着く、憎しみ合う姉妹の物語を描いた。
2020年8月、(公財)三鷹市スポーツと文化財団「MITAKA “NEXT” Selection 21st」に選出され、三鷹市芸術文化センター星のホールにて「BLACK OUT」を上演。ある演劇青年が演出助手としてついた、コロナ禍2020年4月本番予定の舞台の、稽古期間1ヶ月の物語を描き話題を呼ぶ。
一貫して自身の経験や、そこで得た感覚を普遍の物語に昇華し、繊細で綿密な会話劇と、ムーブメントによる空間演出を織り交ぜる試みをしている。
2021年4月、劇団化。
過去の観劇
- 2020年08月26日 東京夜光「BLACK OUT」
事前に分かるストーリーは?
こんな記載を見つけました。
2020年、夏。
コロナ禍を背景に、ある演劇青年と彼を取り巻く世界を描き、
“少し”話題をさらった作品『BLACK OUT』から一年。
次に東京夜光が描くのは、「何年後か、未来の、ある女の一室。」〈あらすじ〉
「いつからだろう、この部屋を出ていない」
遠い未来、絶対安全都市。
想像の全てが叶うこのヴァーチャル世界で、静かに眠り続けるひとりの女。
安定、安全、安心、永遠、不老不死。
ある日、過去から男が迷い込んでくる。
そして、あまりにも不確かな生きる意味を探しはじめる。
ネタバレしない程度の情報
観劇日時・上演時間・価格
項目 | データ |
---|---|
観劇日時 | 2021年8月3日 14時00分〜 |
上演時間 | 110分(途中休憩なし) |
価格 | 3500円 全席指定 |
チケット購入方法
ローソンチケットで予約、決済しました。
ローソンのロッピーでチケットを発券しました。
客層・客席の様子
男女比は5:5。
平日マチネなのに、様々な年代のお客さんがいました。
観劇初心者の方へ
観劇初心者でも、安心して観る事が出来る芝居です。
・SF
・シリアス
・考えさせる
・シンプル
観た直後のtweet
東京夜光「奇跡を待つ人々」110分休無
劇団2回目。面白かった。前作とはかなり方向違って驚いた。不思議とノスタルジーを強く感じる。何故だろうと思ったけど、90年代くらいのSF作品によく似てる気が。スタートレックTNG、世にも奇妙な物語、海外系ドラマ。ふと’90の沢山の作品を思い出す。オススメ。 pic.twitter.com/dZJPRHJiFe— てっくぱぱ (@from_techpapa) August 3, 2021
満足度
(4/5点満点)
CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
感想(ネタバレあり)
かなり遠い先の未来。「絶対安全空間」と呼ばれる、地球の衛星軌道上の施設で、それぞれが一人だけの部屋で安全に暮らす人類。そこに、ついにタイムトラベルを成し遂げた、人間とAI(アンドロイド)が、未来人から地殻変動抑制装置を受け取るためにやってきた。しかし、未来人はもう「神」で、全ての事から興味を失っていて、「時間」とか「瞬間」とか「歴史」という概念すら持っていなかった。そんな人々?のやり取りを通じて見えてくる、人間とは何なのか、というお話。
昨年話題になった「BLACK OUT」が良かったので、今回も観劇。あまり細かく記載されていないあらすじからも、コロナに近い同じような話を想像していたのだけれど、全く違った。遠い未来のSFだった。少し驚きはあったけれど、面白かった。人間とは何なのか。人間とAIとの違いは何なのか。既に脳だけしか生きていない人類が、脳内で全ての事柄をシミュレーションして生きる世界。そこに「古代人」が迷い込んだことで、「恐怖」を避ける事、「魂」とも呼べる何かを信じることが、人間なのではないか、という事を描く。
観ていて不思議だったのは、強烈なノスタルジーを感じた事。どうしてだろう、、、と思って気が付いたのが。ロボット(アンドロイド)やAIといったものの実現性がもてはやされた90年代。その頃、多く描かれたSFモノに、世界観が似ているなぁ、という事。AIや「人間の条件」を描くさまは、どこか「新スタートレック」のデータ少佐のやり取りのような気がしたし、途中で「ひょっとして、この人達、脳だけ生かされているんじゃない」って思ったのは「世にも奇妙な物語」に、バーチャル・リアリティをテーマにした同じような話があったので、ふと連想してしまったし。機械と人間、不安をテーマにした話は、ドラマ「バイオミック・ジェミー」なんかにも同じような話があったのを思い出す。私自身、幼少の頃に見たその手の作品が問うている、「人間とは何か」の哲学的な問いが好きだったので、強烈に覚えていたこともあり。どこか’90なSF作品を思い出さずにはいられなかった。普遍的なテーマだし、「AI」っていう(この文脈で語るAIは)割と新しい言葉なのに、ノスタルジーを感じる、というのも、面白いな、と思う。
論理的には存在し得ない何かの存在を、愚かにも信じることが、人間にとっては最も重要な「人間らしさ」の要素。「魂」とでも呼ぶものなのかもしれない。でも、コロナで増えてきた「リモート」「バーチャル」の世界では、そういった、実感を伴った世界が難しくなっていく・・・と、テーマ言葉にしてしまうと、身も蓋もなく恥ずかしいけれど。劇中、コロナに関する言及は全くないけれども、コロナですっかり内向きになってしまった我々の意識に対する危惧みたいなものを、ノスタルジーなSF要素にサラリと混ぜ込んで描いているようにも感じた。