<観劇レポート>DULL-COLORED POP「丘の上、ねむのき産婦人科」

#芝居,#DULL-COLORED POP

【ネタバレ分離】昨日観た芝居、 DULL-COLORED POP「丘の上、ねむのき産婦人科」の観劇レポートです。

公演前情報

公演・観劇データ

項目データ
団体名DULL-COLORED POP
第23回本公演
丘の上、ねむのき産婦人科
脚本谷賢一(DULL-COLORED POP)
演出谷賢一(DULL-COLORED POP)
日時場所2021/08/11(水)~2021/08/29(日)
ザ・スズナリ(東京都)

CoRich 公演URL

団体の紹介

劇団ホームページにはこんな紹介があります。

2005年、主宰・谷賢一が旗揚げ。日英の大学で学んだ演劇学を基礎に置き、古今東西の演劇的手法を積極的に摂取。「演劇だから何でもできる!」と絶叫しながら、「演劇でしかできないこと」を追求し続ける純粋演劇集団。
DULL-COLORED POP3つの誓い:
1.純粋演劇 演劇至上主義に基づき、純粋に演劇的な純粋演劇を作り続ける。
2.研究・伝播・接続 書物や実地に学んで得た知識・技術を広く伝え、仲間を増やす。
3.観客関係の再検討 演る側/観る側という旧来の観客との関係を見直し、「体験としての演劇」を創出する。
劇団名の読み方は「だるからーど・ぽっぷ」です。

DULL-COLORED POP

事前に分かるストーリーは?

こんな記載を見つけました

駅の北側、商店街を抜けた先、丘の上にある「ねむのきさん」は、昭和のはじめ、古くから続く産婦人科で、私も私の母も祖母もここで産み、生まれたらしい。今日のロビーは少し混み合っていて、私たちを含めて12人の男女が座っている。年齢も服装も表情もバラバラ。みんな一体何を考えているのか。しかし決して会話は起こらない。6組の悩み、いや12人の別の考えが、誰も喋らない静かなロビーにぽっかり浮かんでいる。

少子化・晩婚化・ジェンダーロールやジェンダーギャップ・若者の貧困・不妊治療・中絶・ひとり親など、妊娠・出産をとりまく様々なテーマを、数十名の実在の声に取材しつつ、とある架空の地方都市を舞台に描くDULL-COLORED POPの最新作。「自分と異なる性/生を想像する」というテーマに基づき、男女入替えA/Bキャスト2バージョン上演します。

ネタバレしない程度の情報

観劇日時・上演時間・価格

項目データ
観劇日時2021年8月24日
19時00分〜
キャストA
上演時間125分(途中休憩なし)
価格4000円 全席指定

チケット購入方法

劇団ホームページからCoRichで予約しました。
当日受付で、現金でお金を支払いました。

客層・客席の様子

男女比は5:5くらい。
様々な年代がいましたが、男性は30代up。女性は20代upが少し目立ちました。

観劇初心者の方へ

観劇初心者でも、安心して観る事が出来る芝居です。

芝居を表すキーワード
・シリアス
・会話劇

観た直後のtweet

満足度

★★★★★
★★★★★

(4/5点満点)

CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
ここから先はネタバレあり。
注意してください。

感想(ネタバレあり)

あちこちで名前は見かけていたけれど、初めて観る劇団。ストーリーは事前紹介の通り。田舎町の産婦人科に集まるカップルの、出産にまつわる様々な事情を、オムニバス的に描く。タイトルは産婦人科の名前だけれど、カップル同士は、ほぼ交わらない。むしろ別々の物語が展開する形式。展開される物語は、1場:田舎から抜け出す前に子供が出来てしまった若い夫婦、3場:主夫の夫とキャリアを目指す女の2人目の出産、4場:ハイスぺ男と可愛い妻、5場:趣味の合わない2人の間の子供、6場:子供が出来たら海外に旅行したい夫と妻、7場:不妊治療中のカップル、8場:1970年代の出産の風景、9場:2071年の出産(2場は上演時には削除されたとの事)。A/B両キャストあり、Bキャストはカップルの男女が入れ替わって同じ芝居を演じる形式。観たのはAキャスト。

観ていて思ったのは、観る人によって、捉え方の幅が大きい物語だろうなぁ、という事。たまたま周りに座った客が、おそらく出産経験がないだろうな、という若い女性が多かったのだけれど。近くで反応を感じていて、きっと私とは全然物語の印象が違うんだろうなぁ、という事に、思いを馳せずにはいられなかった。・・・まぁどんな物語でも、人によって捉え方は異なるだろうけれど、特に「出産する、子供を持つ」という事が、個人的な経験の中に納まる閉じた出来事なんだ、という、ごくごく当たり前の事に気が付く。

私自身、息子1人。不妊治療を経験したし、妻は元々描いていたキャリアとは微妙に違う道を歩んでいる。なにより妻が、こういった出産に関わるような仕事をしている事もあり、そういう情報に普段から触れる機会が多い、という事もあるのか。展開される物語には、意外なもの、みたいなものはなくて、どちらかというと「そうそう、こういう事あったね」っていう、過去の経験を再現されているような感覚が強い。例えば「不妊治療と妊婦治療の診察待合室は分かれている事もあるし、待合室は水を打ったように静かな事」とか。あの不妊治療クリニックの、独特の匂いまで思い出すようなリアルさが、細かい台詞に散りばめられていた。インタビューに基づいて作成された演劇のようだけれど、出産にまつわるリアルさは、観ていてすごいなぁ、と感じる。だからこそ、きっと経験をしているかしていないかと、男女の性別の差で、この芝居は見る光景が全く違う、違うに違いない、という確信が沸き起こってきた。

「子供をつくる」事を経験していない人にとっては、想像するための手がかり、みたいなものがあったのかな、とも思う。ただ私自身は、「そうそう、こういう事あったね」っていう共感のレベル以上に、気持ちが離陸できないままだった。一言で言ってしまうと「そうだけれど。だから何?」。緻密で面白い芝居だけれど、舞台に日常の再現以上の何かを求めている自分としては、かなり物足りない、という感覚も強かった。

5場、6場が好きだった。
5場、全然趣味の合わないカップルが、お互いの妥協点を見つける話。githubのアカウントが名刺代わりの割には年収が低いな…は思ったけれど(笑)。子供をつくるって、価値観のすり合わせ作業であって、「価値観の違いを、お互いに違いを認め合う」…みたいな奇麗な話には、絶対にならない。2人で1つの答えを、必ず導き出さなといけないよなぁ。コミカルな展開の中で、そんな事をふと思う。
6場、「旅行行こう」っていうノンキな男の気持ちが、男の視点としては、よく分かる。そして、泣いている女の気持ちも、今だから何となく分かる(気がする)。男女は見ているものが全然違う。…それが、悪いとは思わないけれど。どこか既視感のある、微笑ましい会話を目の当たりにして、こちらもほころんでしまった。