<観劇レポート>iaku「フタマツヅキ」
【ネタバレ分離】昨日観た芝居、 iaku「フタマツヅキ」の観劇レポートです。
もくじ
公演前情報
公演・観劇データ
項目 | データ |
---|---|
団体名 | iaku |
題 | フタマツヅキ |
脚本 | 横山拓也 |
演出 | 横山拓也 |
日時場所 | 2021/10/28(木)~2021/11/07(日) シアタートラム(東京都) |
団体の紹介
劇団ホームページにはこんな紹介があります。
劇作家・横山拓也による演劇ユニット。緻密な会話が螺旋階段を上がるようにじっくりと層を重ね、いつの間にか登場人物たちの葛藤に立ち会っているような感覚に陥る対話中心の劇を発表している。間口の広いエンタテインメントを意識しながら、大人の鑑賞に耐え得る作品づくりを心掛け活動中。
過去の観劇
- 2024年07月19日 【観劇メモ】iaku「流れんな」
- 2023年12月03日 iaku「モモンバのくくり罠」
- 2023年04月21日 iaku「あたしら葉桜」
- 2022年11月07日 劇団俳優座「猫、獅子になる」
- 2021年04月22日 iaku「逢いにいくの、雨だけど」(2021年再) ・・・つづき
事前に分かるストーリーは?
こんな記載を見つけました
二間続きの向こうの部屋から、くぐもった声が襖越しに聞こえてくる。何度もつまずきながら、小さくボソボソ繰り返される。一人になれない狭い市営団地。布団にもぐって耳を塞ぐ。たったひとつのネタすらまともに覚えられない、噺家くずれのダメ親父。
誰もが希望を持てた1980年代を謳歌しながら、自らの夢を雑に扱った父と、苦難の2000年代に生まれ、シビアな毎日で夢を見る暇もなかった息子。反目してきた親子が2020年代を迎え、大きく変化した家族の姿を改めて見つめる。iakuは2012年に劇作家の横山拓也が大阪で立ち上げた演劇ユニットです。緻密な会話が螺旋階段を上がるようにじっくりと層を重ね、いつの間にか登場人物たちの葛藤に立ち会っているような感覚に陥る対話中心の劇を発表しています。主に関西弁を用いたセリフ劇を多くつくっていますが、今回はいわゆる標準語でのやりとりで紡ぎます。元噺家のダメ親父役にベテラン俳優・モロ師岡さん、その息子役に今回が初舞台の新進俳優・杉田雷麟さんを迎えます。父と息子のドラマを中心に、現代社会で起こり得る、あまたの問題を抱えたリアルな家族関係を描きます。他に、劇団俳優座に書き下ろした横山作品に2度出演の清水直子さん、iaku常連の橋爪未萠里さん、iaku立ち上げ前から横山が熱視線を送っていたザンヨウコさん、劇作家・演出家としての高い評価とともに俳優としても魅力溢れる平塚直隆さん、過去に何度も出演依頼をしてきてようやく出演が叶った長橋遼也さん、今年2月のENBUゼミナールの公演(横山演出)で見出した鈴木こころさんが出演。iakuならではと言えるこのキャストの並び。活躍のフィールドも、活動地域も、キャリアもバラバラ。ですが、作品に集い、作品に貢献してくれるメンバーが揃ったと思っています。会場は、いつかここでやれたらと思っていた憧れのシアタートラム(東京)と、いつかiakuとしてここに戻って来られたらと思っていたABCホール(大阪)。規模的なチャレンジもありますが、この数年培ってきた中劇場での上演の集大成として取り組みます。
ネタバレしない程度の情報
観劇日時・上演時間・価格
項目 | データ |
---|---|
観劇日時 | 2021年10月28日 19時00分〜 |
上演時間 | 120分(途中休憩なし) |
価格 | 5000円 全席指定 |
チケット購入方法
チケットぴあで購入・カード決済しました。
セブンイレブンで、予約番号を伝えて受け取りました。
客層・客席の様子
男女比は6:4くらい。
様々な年齢層がいますが、40代upの男性がほんの少し目立った感覚でした。
観劇初心者の方へ
観劇初心者でも、安心して観る事が出来る芝居です。
・会話劇
・考えさせる
・シンプル
観た直後のtweet
iaku「フタマツヅキ」120分休無
素晴らしかった。きっと世代によって、色んな観方ができる芝居だけど。自分には、夫婦の事は結局夫婦にしか分からない、という話に。貧乏だった自分の両親の事と重なったりして、ものすごくズッシリと来た。2人の奥さん役が、どちらも特に素晴らしすぎた。超オススメ! pic.twitter.com/2RPAHf9bya— てっくぱぱ (@from_techpapa) October 28, 2021
満足度
(5/5点満点)
CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
感想(ネタバレあり)
「逢いにいくの、雨だけど」(初演)以来、待ちに待ち焦がれてやっと来た、iakuの本領って感覚。素晴らしかった。素晴らし過ぎた。涙は少な目の芝居だったように思うけれど。久しぶりに、劇中一度も時計を見なかった(私にとってはかなり珍しい事)。ストーリーは各所で語られているので、省くとして。
凄く多面的な物語だった。夫婦の、夫と妻との、それぞれの視点。貧乏で育った自分を、どこか呪うようにしている息子の視点。そして、若い頃の夫婦。息子の恋人、弟弟子、劇場支配人…それぞれの視点で、それぞれの感情が渦巻いている。観る人によって、この物語をどう解釈するか、かなり幅がうまれるように思う。横山拓也の作品に、私が思わず求めてしまう、1つの物事を多面的にでも嘘のない会話で粛々と紡ぎあげていく様子。正にこの作品。横山節の妙を、まじまじと見せつけられた。
私は今40代。それ程裕福な家庭で育ったわけでない私にとっては、むしろ息子の視点が一番強く映ってくる。劇中、回想シーン的に語られる、父と母との出会いを、当然息子は知らない。それは、煎じ詰めてしまえば、よく言われるような「結局は夫婦の事は、夫婦にしか分からない」という事なのかもしれないけれど。その実感が手に取るように分かる。あるいは、息子視点の分からなさが分かる。強烈。フタマツヅキの団地の一室でかつて語られた、夢と、挫折にすら至らない延命と。その事を当然、息子は知り様もない。
息子も成長すれば、いろんな事が分かるようになる。どこかで夫婦の間に「かけちがい」があったとすると、長い間もつれた糸を解くのには、息子も立ち会う事ができるだろう。落語家の父にとって、最も大事な、そして最も厄介な観客は、妻であった。ラストの落語シーンを聴き涙しながら、その糸のほつれが解ける音を、聞いたようにも思った。
2人は「青春の終わり」と言う。40代の私にはまだ見えない事かもしないけれど。本当にそうなのだろうか。観たものは「青春の終わり」の場面なのだろうか。落語やお笑いでないにしても、この二人の人生は、ここから2度目のスタートをするように思う。(タガが外れた妻が、突然遊び狂ったりする、、、という可能性も無きにしもあらず、だったり(笑))。二人の視点では、「青春の終わり」かもしれないが、まだまだなんじゃないかな、という事を、40代の視点として感じた。
役者さんが素晴らし過ぎ。主演のモロ師岡はもちろんの事。杉田雷麟は、初舞台とは思えない。ザンヨウコの、落語家に期待した表情が忘れられないし。平塚直隆の、複雑な心境。鈴木こころの、軽い風を演じている様子。長橋遼也の、お笑い芸人にいそうな飄々とした人物像が、舞台の世界観にハマり過ぎている。そして、清水直子と橋爪未萠里。2つの時代で妻を演じた2人の、自分のアイデンティティを見つけ出すような、夫の克への愛情の傾け方が、特に印象的だった。