<観劇レポート>KUNIO「更地」
【ネタバレ分離】昨日観た芝居、 KUNIO「更地」の観劇レポートです。
もくじ
公演前情報
公演・観劇データ
項目 | データ |
---|---|
団体名 | KUNIO |
回 | KUNIO10 |
題 | 更地 |
脚本 | 太田省吾 |
演出 | 杉原邦生 |
日時場所 | 2021/11/07(日)~2021/11/14(日) 世田谷パブリックシアター(東京都) |
団体の紹介
ホームページにはこんな紹介があります。
杉原邦生が既存の戯曲を中心に様々な演劇作品を演出する場として、2004年に立ち上げる。俳優・スタッフ共に固定メンバーを持たない、プロデュース公演形式のスタイルで活動する。
杉原が2年間務めた、こまばアゴラ劇場の<サミット>ディレクターの集大成として、初めて既存戯曲を使用せず構成から杉原自身が手がけた KUNIO07『文化祭』や、上演時間が約8時間半にも及ぶ大作『エンジェルス・イン・アメリカ』を第一部・第二部を通して上演するなど、杉原の演出力により、戯曲はもちろん、劇場空間自体に新しい風を吹き込むことで、作品を生み出している。
事前に分かるストーリーは?
こんな記載を見つけました
劇作家・演出家 太田省吾氏の代表作を、2012年に杉原邦生演出で鮮烈に現代へと甦らせ大きな反響を呼んだKUNIOの代表作『更地』。杉原の大学時代の恩師でもある太田省吾氏の『更地』は、初老の夫婦がかつて自分たちの家が建っていた更地を訪れ、過去の記憶を旅する物語。杉原は戯曲の設定と異なる若い俳優をキャスティングし、“未来”への希望に向かう新たな物語として新たに立ち上げました。
KYOTO EXPERIMENT 2012公式プログラムとして京都でのみ上演した本作に、今回、南沢奈央さん、濱田龍臣さんという実力派の若手俳優のお二人をお迎えし、京都芸術劇場 春秋座を皮切りに、新潟、東京にて上演いたします。詳細は決まり次第お知らせいたします。
ネタバレしない程度の情報
観劇日時・上演時間・価格
項目 | データ |
---|---|
観劇日時 | 2021年11月9日 19時00分〜 |
上演時間 | 80分(途中休憩なし) |
価格 | 3500円 全席指定 B席 |
チケット購入方法
チケットぴあで購入・決済しました。
セブンイレブンで予約番号を伝えて受け取りました。
客層・客席の様子
男女比は5:5くらい。
40代upの客層が目立ちました。
観劇初心者の方へ
観劇初心者でも、安心して観る事が出来る芝居です。
・会話劇
・シンプル
観た直後のtweet
KUNIO「更地」80分休無
有名な戯曲らしいけど作品初見。最近大好きな杉原邦夫の演出だけど。ん〜テーマと演出が全然チグハグじゃないかな。基の作品も分かるけどそれ程好きじゃないかなぁ。基作品は、こんな意図で創られたんじゃないかな?、と終始、逆変換しながら見てた。ラストはちょいドン引いた。 pic.twitter.com/fkGIMZtyR1— てっくぱぱ (@from_techpapa) November 9, 2021
満足度
(2/5点満点)
CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
感想(ネタバレあり)
「オイデプスREXXX」や「オレステスとピュラデス」で知った、杉原邦生の演出作品。2本とも鮮烈だった。同じような出会いを期待して、観に行ったのだけれど・・・どうも期待外れだった。戯曲と、演出の世界観が、全く合ってない。途中でウンザリしてしまって、お腹が空いてたのもあってギューギュー鳴いて困った。戯曲は、太田省吾の代表作という事で、私は初見の作品だけれど…演出のチグハグさが悪かったか、内容にもあまり興味を持てなかった。
自分の家のあった場所を見つめながら、夫婦の人生、恋、夫との出会い、子供などを振り返る、男と女。人生の振り返り。どこか、柴幸男の「あゆみ」を思い起こさせる。「更地」が書かれたのは1992年だから、もちろんこちらが古い作品だけれど。「二人だけが知っている事は、存在したことを証明できるんだろうか」・・・っていう問いかけは、どこかハッとするものがある。先日観た、ハツビロコウの「夏の砂の上」(松田正隆作)にも、同じようなフレーズがあったな、なんて事を思い出す。
言葉の端々の言い回しに「老い」を感じ取ったからか、観ている途中に「あ、これは老人の会話なんだ」というのが分かった。ただ、演じる2人が、老いを表現しているようには見えず、むしろ若いままを表現している。だからなのか、言葉の端々の言い回しが、どこか腑に落ちない箇所ばかりで不自然で、観ていてとてもフラストすした。若く蘇った・・・という設定なのかもしれないけれど、老いをしっかりと表現して欲しいな、という思いの方が強い。落ち着いて老いのまま表現する上演、あるいは、リーディング公演とかが、似合う作品のように思う。ひょっとすると元の作品は、老いた夫婦が人生を、静かに振り返る作品ではないか、と勝手に予想する。どちらかと言うとシンプルな演出だったんだろうなぁ、と思い、余計な演出を削ぎ取って頭の中で、シンプルな「老い」に変換していくと、上手く解釈できるな、と、観ている途中から思う。
にもかかわらず、そこに、杉原邦生の演出。四角い舞台に、どこか中途半端な造形の「家の家具」のようなもの。舞台の床には「更地」と書かれ、「更地」という布が出てくるのも、かなりわざとらしいし(3階席だったから分かったのかな)。客入れ時の照明は、青く沈んだ空間。蛍光灯のような稲妻の光と、工場のような機械音で、それ以降に展開される世界観とはまるで違うのが、観終わった後にも不自然に感じる。「老い」にどう向き合うか、という点でも、途中に挟まれるラップは、「オイデプスREXXX」「オレステスとピュラデス」の時とは違って、全く逆効果。冒頭、星の光も加わってくるかと思えば、ラスト、家がなくなった場所には星空が見える・・・。星空を、敢えて電球で表現しないとダメな作品なのかなぁ、なんて思ってドン引いてしまう。加えて、虹の布が舞台を覆うのも、よく分からない。虹がかかった、という事なのか。
頑張って演出効果を差し引いて、元の戯曲を味わおうと努力してみたけれど、何だか疲れて、途中でやめてしまった。残念ながら、鮮烈な杉原邦生の演出が、とことん裏目に出た公演、としか映らなかった。