<観劇レポート>Nana Produce「莫逆の犬」
【ネタバレ分離】昨日観た芝居、 Nana Produce「莫逆の犬」の観劇レポートです。
もくじ
公演前情報
公演・観劇データ
項目 | データ |
---|---|
団体名 | Nana Produce |
回 | Nana Produce vol.17 |
題 | 莫逆の犬 |
脚本 | 田村孝裕 |
演出 | 寺十吾 |
日時場所 | 2021/12/08(水)~2021/12/12(日) 新宿シアタートップス(東京都) |
団体の紹介
ホームページに紹介は特にありませんでしたが、プロデュース公演を定期的に手掛けている団体のようです。
事前に分かるストーリーは?
こんな記載を見つけました
彼はずっと桜を眺めている。
雨の日も風の日も欠かさずに見下ろす。
それは彼がここにいるしかないから。
ここから一歩も出ることはできないから。
私の帰りを待つことしかできないから。
彼の優しすぎる性格が、いつしか彼を、
犬にしてしまったんだと思います。
ネタバレしない程度の情報
観劇日時・上演時間・価格
項目 | データ |
---|---|
観劇日時 | 2021年12月9日 14時00分〜 |
上演時間 | 125分(途中休憩なし) |
価格 | 5000円 全席指定 |
チケット購入方法
公演のページから、CoRichで予約しました。
当日、現金でお金を支払いました。
客層・客席の様子
男女比は5:5くらい。様々な年代層の人がいました。
観劇初心者の方へ
観劇初心者でも、安心して観る事が出来る芝居です。
・シリアス
・会話劇
観た直後のtweet
Nana Produce「莫逆の犬」125分休無
カテコダブル。凄く面白かったけど、引いた目線で見ると、一体何の話だったんだろう。凄く後味の悪いものだけが手元に残った感覚。照明の使い方が意欲的。客入れの時に感じた違和感が現実になった。超オススメ! pic.twitter.com/lmtj4KJnmN— てっくぱぱ (@from_techpapa) December 9, 2021
満足度
(5/5点満点)
CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
感想(ネタバレあり)
何らかの犯罪を犯したのか、目立たない、陽の当たらない部屋で、全く外出しない生活をはじめた、一郎と美月。2人はどうやら恋人同士らしい。一郎は隠れていて、知られてしまうと、美月と共に警察に捕まるような事をしたらしいので、全く外出していない。一郎の父は、かくまっている美月にお金を渡していて、どうやら良い弁護士を探そうともしている。なるべく他人とせっしょくしないようにしているものの、美月の弟だったり、その会社の同僚、美月のバイトそんな暗い部屋での10年間の生活を描いた話。
この2人が、どうして人目を避けて暮らしているのか、その直接的な理由は、ほとんど語られない。途中、冗談のように「一郎が母親を殺してしまった…」的な話も出てくるが、それが本当なのかも分からない。仮に本当だとしても、一郎の顔を知られてしまうとどうして美月も警察に捕まってしまうのかも、その詳細も語られない。ただ、何かの理由で人目を避けなければならない男と、運命共同体としての女がいる。
10年の経過が、具体的な年号と共に語られるし(2009年〜2019年だったかな)、当日パンフレットに人物相関図が書かれているので、実際にそういう状況にいる人を描いた、とも取れる。舞台セットは陽の当たらないマンションの一室で、マンション内に響く音は異様にリアル。一方、部屋全体にはちびまる子ちゃんのような縦棒線が入り、壁の電気のスイッチは漫画のように柿割になっていて、変なところだけリアル感がない。それを見ていると、どこか不条理劇というか、何かの例え話をしているようにも見えてくる。何か重要なセリフを聞き逃して、決定的な設定を把握し洩らしているかもしれない…と思いつつ、やはり詳しい背景をあえて曖昧にして、説明しない物語のようにも思う。
2人の生活感の描写がすごい。大音量の音楽の中、照明のカットインカットアウトで語られる、生活の一コマ一コマ。最初の頃は猿のようにセックスしてるけれど、どんどん、ゴミ捨てだけになっていく。10年経っても一郎は殆ど変化しないけれど、美月は着ている服も、態度もどんどんと変わっていく。何の原因で、2人は人目をはばかって生活しているのかは分からないけれど、動いている時間と、止まっている時間の対比を見ているよう。ものすごく後味が悪く、それ故に2人の閉塞した生活が滲み出てくる。妙に生々しい生活感が、忘れられそうにない作品だった。
開演前、照明のライト(灯体)の数が随分と少なく、偏った方向を向いてるなぁ、というのが気になる。始まってみると、陽の当たらない日陰の生活の表現か、客席側から照らす照明が殆ど使われていなかったのが面白い(カーテンコールくらいじゃないかな)。必然的に、役者さんの顔はかなり暗く、結構大胆な事をするな、と思うも、それがむしろこのドロドロした空間を表現している気がする。照明家の名前を見てみたら、注目している阿部康子で納得。
気になった役者さん、傳谷英里香、テレビなどでも活躍している女優さんのよう。一郎が全く変化しないのに、美月がどんどん変化していく。その時間経過の描写がとても印象的だった。