<観劇レポート>人間の条件「巣」
【ネタバレ分離】昨日観た芝居、 人間の条件「巣」の観劇レポートです。
もくじ
公演前情報
公演・観劇データ
項目 | データ |
---|---|
団体名 | 人間の条件 |
回 | 母の誤謬シリーズ |
題 | 巣 |
脚本 | 樽見啓(人間の条件) |
演出 | 樽見啓(人間の条件) |
日時場所 | 2022/03/18(金)~2022/03/20(日) シアターバビロンの流れのほとりにて(東京都) |
団体の紹介
劇団ホームページにはこんな紹介があります。
2019年、東京大学在学中にZRによって立ち上げられた演劇団体。
「それなしには人間が生きていくことのできないもの」をコンセプトに舞台作品を上演する。
簡潔で切実なドラマを、動的な身体と暴力的な音楽の上に成立させる手法で評価されている。
過去の観劇
- 2020年03月14日 人間の条件「リトル・ブリーチ」
事前に分かるストーリーは?
こんな記載を見つけました
「しばらく姉のアパートで暮らすことになりました。二階の隅に男3人で住んでいる部屋があって、私が見ている間は起きて動いているようです。ゴミとか服とかマンガが床で一緒になっていて、寝るのは押し入れかかびた布団で。弱い人たちだから私が面倒を見ないとやっていけないみたい。」
ネタバレしない程度の情報
観劇日時・上演時間・価格
項目 | データ |
---|---|
観劇日時 | 2022年3月18日 14時00分〜 |
上演時間 | 120分(途中休憩なし) |
価格 | 2500円 全席自由 |
チケット購入方法
劇団のページからのリンク先で予約しました。
当日受付で名前を告げて、現金でお金を支払いました。
(カード決済も可能なようでした)
客層・客席の様子
男女比は5:5くらい。若い人が多かったように思いました。
観劇初心者の方へ
観劇初心者でも、安心して観る事が出来る芝居です。
若干、性的な表現がありますが、苦手な方でもなんとか我慢できる範囲かと思います。
・会話劇
・シリアス
観た直後のtweet
人間の条件「巣」120分休無
すごいのを目撃したかも。6畳1間に巣作ろう、大人になり切れない5人の物語。底抜けにネガティブで、救いはなくて、大人になれず、どうにもならないけれど。鈍い存在感が、胸にこびりついてしばらく離れそうにない。粘っこすぎる空間。他の人の感想を聞きたい。超オススメ! pic.twitter.com/yMBM9w0ILO— てっくぱぱ (@from_techpapa) March 18, 2022
満足度
(5/5点満点)
CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
感想(ネタバレあり)
織田が住む六畳一間のアパートに、転がり込んできた友達2人、やっさんとゆうすけが居候していて、3人で住んでる。織田は大学は3留。3人の親は、宗教にハマってたり、性犯罪者で出所したばかりだったりで、とにかく関わりたくない。そんな中、管理人のオヤジが死んで、その親族の孫の姉妹がやってきた。同じアパートに住む2人。散らかり放題の部屋を見かねた妹のユカは、そこに出入りするようになる。姉は3人を追い出すか、いいように使おうとするも、ユカとの会話から、かつては引きこもりだったことが分かる。その5人の交わりの物語。
舞台上に緻密に作り上げられた、六畳一間のアパートで展開される"状況"。とにかく最後の最後まで、救いがない。観ていて辛い。姉は(おそらく屋根から落ちて)死に、ユカは姉との間で性的に何らかの遍歴があることが分かり、むしろ3人よりも大きな何かを背負っているのが分かる。最初に見えていた「3留している大学生」が、気が付くとどこかかすんでしまうようにも見える。
織田はユカとセックス(レイプ)をするも、それで大人になったようにも見えない。何も解決せず、何も進まない。最後のセリフ「今どういう状況だか理解するから、待って」という、正にその状態が、最初から最後まで続いている。そんな物語に見えてくる。
作っている側は意識している訳では無いと思うが、途中どこかベケットの「ゴドーを待ちながら」のようにも見えてくる。所々でロールプレイ的に演じられる、「親」との関係。「親」への贖罪的な、でも責任回避的なつぶやきの連続。「行こう」と決意するのに、誰も、一向に前に進もうとしない。ねっとりとした空間の中にいて、その事にどこか快楽を感じているかのようにも見える。
この作品自体、母の誤謬(ごびゅう)シリーズとの事。確かに所々演じられるロールプレイは、母に対するものが多いのだけれど。矛先は、母だけへのものでもないように思う。観ていて、何かかがスッキリしたわけでも、ハッキリしたわけでもなく、むしろ酒でも飲まなきゃやってられないような状況に追い込まれたのだけれど。生い立ちと、今いる場所へのどうしようもない嘆きのように感じられて、その空間にどっぷりと漬かり切った感覚だった。
役者さん、5人とも浸りきってて、印象的だったけれど。特に女優2人。野田恵梨香演じるユカの、淡々とした会話と、ごく自然な間。野村ちはるの、世界を恨むように見る目が印象的だった。
当日パンフレットが、ハングルがデザインのモチーフになっていたり、Special Apologyにハングルでの記載がある。劇中、特にハングルに関連するような設定は無かったように思うのだけれど。どのような関連があったのだろうか。