<観劇レポート>やみ・あがりシアター「Show me Shoot me」
【ネタバレ分離】昨日観た芝居、 やみ・あがりシアター「Show me Shoot me」の観劇レポートです。
もくじ
公演前情報
公演・観劇データ
項目 | データ |
---|---|
団体名 | やみ・あがりシアター |
回 | 第18回公演 MITAKA "Next" Selection 23rd参加作品 |
題 | Show me Shoot me |
脚本 | 笠浦静花 |
演出 | 笠浦静花 |
日時場所 | 2022/09/02(金)~2022/09/11(日) 三鷹市芸術文化センター星のホール(東京都) |
団体の紹介
劇団ホームページにはこんな紹介があります。
2012年に旗揚げ。
「ヒトのやんでるところとあがってるところを両方、病気が治ったばかりのようなハイテンションでお届けしたい」
というコンセプトのもとに芝居作りを行う。
過去の観劇
- 2024年05月02日【観劇メモ】やみ・あがりシアター 「フィクショナル香港IBM」
- 2023年09月13日やみ・あがりシアター「濫吹」
- 2023年01月08日やみ・あがりシアター「すずめのなみだだん!」
- 2022年03月19日やみ・あがりシアター「マリーバードランド」
- 2021年08月27日やみ・あがりシアター「うわさにきく風2020-2021」 ・・・つづき
事前に分かるストーリーは?
こんな記載を見つけました
会社での態度からは想像が難しいかと思いますが、
意外と、僕は妻を相方と呼ぶタイプです。
妻も僕をそう呼びます。誤解を恐れず言いますと、
妻がボケで僕がツッコミです。驚くなかれ、休みの日は二人でネタを作ったりしています。
無口な僕と内向的な妻ですが、
家ではおもしろおかしいコンビです。とても幸せに暮らしていました。
隣に、大阪人の夫婦が越してくるまでは。
趣味を中心とした生活を送る人々に、
強大なライバルが現れた場合の右往左往。
はたして好敵手となれるのか。
ネタバレしない程度の情報
観劇日時・上演時間・価格
項目 | データ |
---|---|
観劇日時 | 2022年9月2日 19時30分〜 |
上演時間 | 120分(途中休憩なし) |
価格 | 2500円 初日割 全席自由 整理番号順入場 |
チケット購入方法
CoRichで予約しました。
当日受付で、現金でお金を払いました。
客層・客席の様子
男女比は6:4くらいで少し男性多め。
様々な年代の客がいました。
観劇初心者の方へ
観劇初心者でも、安心して観る事が出来る芝居です。
・コメディ
・笑える
・シンプル
観た直後のtweet
やみ・あがりシアター「Show me Shoot me」120分休無
めっちゃ面白かった。クスクス笑いが止まらない。お腹痛い。ただ、知る限りのこれまでの作風と若干違うかも。初見の人には、割と賛否が割れるかもなーって気もする。「病みあがり」シアターって名前、そのままな感じな作品な気がした。超オススメ! pic.twitter.com/9lpqBglOuT— てっくぱぱ@観劇垢 (@from_techpapa) September 2, 2022
満足度
(5/5点満点)
CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
感想(ネタバレあり)
気がつくと、10作目の拝見となる「やみ・あがりシアター」。ついにMITAKA "Next" Selectionに。「選ばれるの、当然でしょ!むしろ遅すぎ。」の勘違いファンのドヤ顔な気持ちとw、「頼むここで、やらかさんでくれ・・・」な余計なお世話の不安な気持ちとが、微妙な空気感で入り混じる、身勝手な私。初日の観客席。吉祥寺じゃない。ミタカだもの。客も、こりゃ演劇ツウ層だなぁ、という感じ。みんな静かに開演を見守る、お行儀良すぎな客席。
観始めて15分。率直なところ「作風変えてきた・・・って事でよいでしょうか?」という感覚。今まで観たやみあがり作品は、抽象的な題材でも、物語、話の骨格がしっかりしていたのだけれど。今回は違う。短いシーン、しかもコントというか、漫才というかをつなぎ合わせたような作品。クスクスと笑いつつも、いつもと違うぞ、な感覚を受け入れるのに必死だったけれど。気がついたら、クスクス笑いし過ぎて、腹筋が痛い。笑が連鎖して、止まらなくなっちゃうあの感覚に陥っていた。MITAKA "Next" Selectionで新しい作風ぶっこんでくるかー。攻めるなー。でも、やみあがりらしい、というか(何が「らしい」のかよく分からんが)。そんな状況でも、飄々と涼しい顔をしている、笠浦静花の顔が思い浮かぶ。(そういえば、勝手に名物だと思っている客席誘導は、今回は万全な誘導体制に囲まれてナシ。受付に立たれていた。)
展開されるのは、社宅に住む人々。その会社を軸に、仕事以外の「趣味」にまつわる断片のシーンを、コント風に仕立てて集めたような作品。カブトムシを取る。ランニングをする。絵本を読み聞かせるボランティア。他人をディスる。とにかく「一日一善」。俳句。。。などなど。趣味にいそしむシーンが、テンポよい転換とともに、次から次へと挟まれる。細かいことは考えずに、ただこれを楽しんでるだけでも、お腹いっぱいになる。これまで観た作品の作風にはない。こんな「やみ・あがりシアター」もあるんだなぁ、という驚きの中の笑い、というのが大きい。
物語の軸になる夫婦は、趣味で漫才を練習していた。しかし、隣に引っ越してきた大阪からきた夫婦の会話が、漫才じゃないのに既に漫才で。それだけで、既に自分たちの漫才より面白くて。強烈な敗北感を味わいつつ、社宅の管理者に夫婦のクレームを入れて、違う趣味を探す。ラスト、吹っ切れた夫婦が、大阪人夫婦と対決しつつ、まぁ面白くなくてもいいか・・・と、"逆に笑けてくる"感覚。・・・まぁ、何だかとても、小さな感情を描いているのだけれど。
あえて口にすべきでない、感じるべき事なのかもしれない。あるいは、私の誇大妄想かもしれないけれど。この物語で描かれている事って、人生そのもの、だったり、何かを創る過程そのもの、なのかな、という風に思えてくる。所詮はこの世は「退屈しのぎ」。カブトムシの取り方を子供に教わる。俳句の詠み方をお年寄りに教わる。あるいは、YouTubeのコメント欄に、ディスるコメント書き込む。結局のところ人生は「退屈しのぎ」でしかなくて。それをコミカルに、シニカルに、表しているのと。敗北感と無力感に陥った夫婦は、結局は自分の感覚で、大阪人を笑かすしかない・・・というか。打ちひしがれてても、何も生まれないという感覚・・・というか。
言葉にすると、とても小さな感情で。何だか急に恥ずかしくなってしまうのだけれど。すごく感覚的に、「退屈しのぎ」の過ごし方・・・要は「人生の過ごし方」を描かれているような。そんな気がした。が、私の気のせいかもしれないけれど。
役者の布陣が完璧。前作「マリーバードランド」から引き続き夫婦役。どこか余所余所しい夫婦役の、加藤睦望と川上献心が、たまらなくいい。冒頭の面白い漫才からの、あの、余所余所しい、穴の開いてしまったような夫婦関係。暗がりのソファーで、噛み合ってない会話がたまらない。その隣で、バリバリの大阪弁。さんなぎと小切裕太の夫婦。ちんちん、って言うののイントネーションが、何にもおかしくないのに笑いを誘う。久保瑠衣香、何だか役がハマり過ぎてて、ちょっと怖い。今までのちょっとお嬢様なイメージが、崩れていく・・・。
あらためて思い返して。これまで観たやみあがり作品との類似だと「じゅうごの春」が一番近いかな、と思うか(これはどちらかというとシリアスだけど)、言ってみて外れてはないものの、シックリも来ない。やっぱり新しい作風で勝負に出てきた、と見るべきかな。三鷹に来る、初見のお客さんにどう映るか。・・・何となく賛否両論別れるような気もするけれど。どんな感想が流れてくるか、追いかけてみたいところ。