<観劇レポート>日本工学院専門学校 卒業公演「トロイ戦争は起こらない」
【ネタバレ分離】昨日観た芝居、日本工学院専門学校 卒業公演「トロイ戦争は起こらない」の観劇レポートです。
もくじ
公演前情報
公演・観劇データ
項目 | データ |
---|---|
団体名 | 日本工学院専門学校 声優・演劇科 |
回 | 日本工学院専門学校 声優・演劇科/演劇スタッフ科 卒業公演 |
題 | トロイ戦争は起こらない |
脚本 | 作:ジャン・ジロドゥ 訳:岩切正一郎 |
演出 | 千田恵子 |
日時場所 | 2023/2/10(金)~2023/2/11(土) 日本工学院専門学校片柳記念ホール(東京都) |
団体の紹介
日本工学院専門学校の卒業公演のようです。
過去の観劇
- 2024年03月09日 【観劇メモ】日本工学院専門学校 卒業公演「星の王子さま」
- 2024年03月04日 【観劇メモ】日本工学院専門学校 卒業公演「ちいさき神の、作りし子ら」
- 2024年02月10日 【観劇メモ】日本工学院専門学校 卒業公演「エンジェル」
- 2023年03月12日 日本工学院専門学校 卒業公演「ゼブラ」
- 2020年02月21日 日本工学院専門学校 卒業公演「海抜三千二百メートル」 ・・・つづき
事前に分かるストーリーは?
こんな記載を見つけました
ようやくトロイの国に平和が訪れた。 と、思うのも束の間、トロイの王子・パリスがギリシャ王妃・エレーヌを連れ去ってしまい、再び戦争の危機を迎えることとなる。 長きにわたる戦争に虚しさを覚えたパリスの兄・エクトールは、平和を維持するために二国間の交渉を成し遂げるべく翻弄する。果たして戦争の門を閉じることはできるのか。 ギリシャ神話を題材に戦争の危機を訴える。
ネタバレしない程度の情報
観劇日時・上演時間・価格
項目 | データ |
---|---|
観劇日時 | 2023年2月11日 14時00分〜 |
上演時間 | 105分(途中休憩なし) |
価格 | 無料・事前申し込み制 全席自由 |
チケット購入方法
学校のホームページから予約フォームに記入して予約しました。
当日受付で名前を告げて、入場券をもらいました。
客層・客席の様子
男女比は5:5くらい。
学生さんにと併せて、生徒の親御さん世代が目立ちました。
観劇初心者の方へ
観劇初心者でも、安心して観る事が出来る芝居です。
・シリアス
・会話劇
・考えさせる
観た直後のtweet
日本工学院専門学校 声優・演劇科「トロイ戦争は起こらない」105分休無
卒業公演。ジロドゥの古典。私は作品初見。面白かった!外国劇にあるあるなセリフの分かり難さあるも。叫ぶような台詞の出し方の中に感情がすごく乗ってるのがいい。作品、戦争に関する全てが詰まってて痛い。オススメ!も本日楽 pic.twitter.com/bSt7BPKiLO— てっくぱぱ@観劇垢 (@from_techpapa) February 11, 2023
満足度
(4/5点満点)
CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
感想(ネタバレあり)
ギリシャ時代のトロイ。戦争から帰ってきた、トロイ王の息子、エクトール。帰ってみると、弟のパリスが、スパルタ王の王妃エレーヌを略奪してた。略奪・・・というか、パリスは恋に落ちて、エレーヌには野心がある逃避行に見える。それを機に、ギリシア軍がトロイに迫ってくる。トロイ王プリアム他、詩人や幾何学者たちは戦争を主張するが、エクトールは戦争の悲惨さをよく知っている。ギリシャ軍の将軍と、話わつけようとするエクトール。だがやはり、戦争を止める行為は、体面と、野心と、民衆の声でかき消されていく・・・と、強引にまとめるとこんなお話。
ジャン・ジロドゥの1935年作の有名な作品。私自身、作品名は聞いた事があるけれど、観るのははじめて。この時代…というか、外国劇特有の、セリフがスッと入ってこない小難しさはやはりあるので、前半設定に入っていくのがちょっと大変だったけれど、後半は没入して観ていた。ギリシアの歴史は、もう大昔に習った事で忘れてしまったけれど、史実などの知識は特に必要なく単に「戦争がいかにして起こるか」という事を、トロイを舞台にして描いた物語。基の戯曲から改変があるのかは不明だけれど、役の性別変更やカットがあったかもしれない。
今更語るまでも無いのだろうけれど…この物語には、戦争が「起こってしまう」ことへの全てがある。戦争を推し進める真理、止める真理。戦争の賛美と、悲惨さ、恐怖。そこに介在する、人の野心と体面と、家族への愛情。トロイ王とエクトールと、その周りだけの会話が多いのだけれど、壮大に見えつつも小さな人間の輪の中で、これだけ多様な価値を一気に示すのはすごいなぁ、と思う。1935年の作品ながら、未だに上演され続けているのもよく分かる。
最後に刺されてしまう詩人。戦時中に戦争を賛美するメディアっていうのは事欠かないなぁ。直近、戦時中の日本の美術界を描いた、劇団印象「藤田嗣治〜白い暗闇〜」を思い起こさせる。いわゆる「メディア」が、この時代には預言者であり詩人だったのだろう、、、などと思う。また、終盤のエクトールとオデュッセウスの対談は、だいぶ昔に観たドラマ「第三次世界大戦」の、米ソ会談を思い起こす。ひょっとしたらこのドラマは、「トロイ戦争はおこらない」に着想を得ているかもしれない。
演劇のスタイルとしては、割と大げさに感情を表現するタイプの演技だったけれど、その中にしっかりと細かな感情がのっているのが良い。学生ならではの粗削り感は否めないものの、特に後半はかなり作品に没入して観れた。演劇の学校は、演技の勉強の観点で戯曲を選びがちで、面白いけれど時代に合ってない作品、というのにたまに出くわすけれど、2023年の今、実際に戦争が起こる様子を世界が目の当たりにした直後なので、話としては重々しい。なんというかみにつまされる話。その点、卒業公演として必須条件ではないかもしれない「今観る意義」みたいなのも垣間見れたのが何よりよかった。
ご卒業、おめでとうございます。