<観劇レポート>箱庭円舞曲「彼女も丸くなった」
【ネタバレ分離】 箱庭円舞曲「彼女も丸くなった」の観劇レポートです。
もくじ
公演前情報
公演・観劇データ
項目 | データ |
---|---|
団体名 | 箱庭円舞曲 |
回 | 箱庭円舞曲 第二十九楽章 |
題 | 彼女も丸くなった |
脚本 | 古川貴義(箱庭円舞曲) |
演出 | 古川貴義(箱庭円舞曲) |
日時場所 | 2023/04/12(水)~2023/04/18(火) 新宿シアタートップス(東京都) |
団体の紹介
劇団ホームページにはこんな紹介があります。
2000年9月、日本大学芸術学部演劇学科劇作コース在学中の古川貴義が主宰となって、同期や高校時代の後輩を中心に旗揚げ。同年12月旗揚げ公演を行う。以来、古川の作・演出の元に、年1、2回のペースで次々と作品を上演。
「シュールなリアリズム」を作風として掲げ、観劇後の日常にふとよぎるような作品を発表し続けている。覗き見感覚で眺める舞台上の出来事は、ほんの少しズレた日常のように映るだろう。 しかし実は、あなたが笑って観ているそのズレ=シュールさが、自身にも当てはまる =リアルなものだと気付いたとき、怒りとも悲しみともつかない、行き場の無い、言葉に ならないやるせない感覚に引きずり込まれている。そのある種の絶望的な感覚は、確実に、 記憶の奥底に沈殿する。そして劇場というシュールな空間から離れて普段の生活に戻った とき、なにげない瞬間に、鮮明に立ち返ってくる。
そんなシュールでリアルな作品の中毒患者が、公演を重ねるごとに増殖中。『シュール』・・・表現や発想が非日常的・超現実的であるさま
『リアリズム』・・・現実主義、写実主義この相容れない筈の二つの要素を、作品世界の中に巧みに盛り込もうと画策。
人間は、常にこのシュールなリアリズムの中に生活している。自分以外の人間と触れる機会、すなわち社会において、人間はそれをリアルなものとして受け止める。それを自然なものとして扱い、他人と接している。
しかし当人の脳内では、口から出る言葉とは裏腹な感情、接している他人とは全く無関係な事象、あるいは特に何も考えていないというような思考展開が、往々にして起きている。故に、社会に於いて「一個人」と換算される僕らは、個別に見れば、他人と完全に理解し合うことなどはなから不可能な生き物であると言える。にもかかわらず僕らは、社会性の名の下に友人を作ったり、恋愛をしたり、集団に所属したりして生きている。そもそもが相容れなくて当然のはずなのに、誰かと接すること無くしては生活が成り立たないという矛盾を抱えているのだ。
この矛盾を抽出し、表現へと消化させる為に、敢えて矛盾した言葉「シュールなリアリズム」を用いている。舞台設定、登場人物、台詞回しなど、外枠の部分はしっかりしたリアリズムとして構築し、個々のキャラクターの内面、相互コミュニケーションの偏り等をシュールなものとして提出する。あくまでリアルに、あくまでシュールに。それは時として笑いを生み出したり、常識をえぐり、内面に突き刺ささるようなシーンとなって現れる。
過去の観劇
- 2020年12月30日 箱庭円舞曲「今はやることじゃない」
事前に分かるストーリーは?
こんな記載を見つけました
【イントロダクション】
人はいつしか、丸くなる。
昔、素敵にとんがっていた彼女と久しぶりに会ったら、とても丸くなっていた。地元のつまらない先輩ーー仕事も話もつまらないうえにチビでデブでハゲーーと結婚し、子をもうけていた。私が憧れたあの彼女は、どこに行ってしまったんだ。見る影もない。目も当て
られない。何をやってんだよ。
ただ、幸せそうではある、嫉妬するくらいには。どうしてだろう。
自分もそうなりたいと、どこかで思ってしまっているからだろうか。
人は、歳を重ねるうちに、細かいことを気にしなくなっていく。脳にどんどん入ってくる情報を処理しきれなくなるゆえか、判断力が低下するからか。それとも、細かいことを気にしたところで人生がいい方向に運ぶことなどない、と気付いた悟りの一種だろうか。老い先短い人生に、波風立てまいとするようになったということだろうか。
どういうことなのだろう。どうして、丸くなってしまったのだろう?
と、私は、私の、膨らんだ腹をさすりながら考える。
明るい未来を信じられない時代に、新しい扉を開く女性と開くことを諦めた女性を極力丸く描く、現代の招日神話会話劇。$$
ネタバレしない程度の情報
観劇日時・上演時間・価格
項目 | データ |
---|---|
観劇日時 | 2023年04月14日 19時30分〜 |
上演時間 | 115分(途中休憩なし) |
価格 | 4500円 全席指定 |
観た直後のtweet
箱庭円舞曲「彼女も丸くなった」115分休無
いゃ~すごいもの観たなぁ。クスクス笑いながら背筋が凍る感覚。中盤からテーマが複合的になってくるけど、結局の所人は、誰かを傷つけて傷つけられて生きてるってことを、皮肉たっぷりに肯定してるって事なんだろうなぁ。若い勘違い君がリアル。超オススメ! pic.twitter.com/v8jvnmVk61— てっくぱぱ@観劇垢 (@from_techpapa) April 14, 2023
満足度
(5/5点満点)
CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
感想(ネタバレあり)
※文章書くのが不調で、しっかり書き上げる余裕が取れないため、当面は感想のメモだけ残しています。後々振り返って、もう少しちゃんとした文章に仕立てあげるかもしれません。
あの人は太っている・・・とか、体型について「事実」を言いたくても、いわゆる「不適切」だから・・・と言えない今の世の中。でも「太っている」という事実、頭の中に湧いてくる言葉は、確実に存在する。きがつくと、そう思ってしまう事すら「罪」のような、そんな世の中になっている。生きるという事は、誰かを傷つける事を避けられないし、誰かから傷つけられる事も避けられない。思う事すら、許されないような風潮。その当たり前の事が、どこか「当たり前じゃない」今の世の中を、皮肉たっぷりに描写して、その「傷つき傷つけあう」どうしようもなさを、肯定している作品のように見える。
ひょっとすると、ものすごく嫌悪感を抱く人もいるだろうなぁ。特に、「正しさ」を振りかざすタイプの人からすると、ケシカラン演劇なのかもしれない。そんな事を頭の片隅で思いつつも、時折湧き出てくる「クスクス笑」と、同時に背筋が凍るような感覚。同時に味わう事が出来る芝居だった。