<観劇レポート>桃尻犬 「瀬戸内の小さな蟲使い」
【ネタバレ分離】 桃尻犬「瀬戸内の小さな蟲使い」の観劇レポートです。
もくじ
公演前情報
公演・観劇データ
項目 | データ |
---|---|
団体名 | 桃尻犬 |
回 | 桃尻犬本公演 |
題 | 瀬戸内の小さな蟲使い |
脚本 | 野田慈伸 |
演出 | 野田慈伸 |
日時場所 | 2023/06/21(水)~2023/06/28(水) OFFOFFシアター(東京都) |
団体の紹介
劇団ホームページにはこんな紹介があります。
桃尻犬 momoziriken は演劇などをする団体です。
2009年立ち上げ。メンバーは作・演出の野田慈伸だけ。
人間の悪意や杜撰さ、どうしようもなさ。人生のくだらなさ、つらさ、どうしようもなさ。それらをポップに楽しく、HAPPYに描く。
人は人生にどうあっても立ち向かわないといけないが、キレイにまっすぐ立つことだけがその限りではない。作、演出の野田慈伸は俳優としても、とても活躍中。
過去の観劇
- 2021年09月04日桃尻犬「ルシオラ、来る塩田」
- 2020年02月06日桃尻犬「ゴールドマックス、ハカナ町」
- 2019年06月27日桃尻犬「山兄妹の夢」
- 2019年01月17日桃尻犬「俺ずっと光ってるボーイ、健之助」大声と感情の肉弾戦の迫力がすごい
事前に分かるストーリーは?
こんな記載を見つけました
虫を操る「蟲使い」という家業を継ごうか迷っている男か女。
出戻りの若夫婦。寂れた遊園地で働く男。
弁当屋で働く母は高齢で水曜日は休むことにした。
昔テレビで見たお笑い芸人が外国人の扮装をして
生きてる意味を問いながらお互いの体を傷つけ続ける芸の意味が今は昔と違う気がする。
瀬戸内海を臨む穏やかな街で関西弁をしゃべる男女と標準語をしゃべる男女が怒ったり叫んだり喧嘩したりするお芝居です。
見た人もストレスが発散できるお芝居にしたいと思っています。
野田慈伸
ネタバレしない程度の情報
観劇日時・上演時間・価格
項目 | データ |
---|---|
観劇日時 | 2023年06月21日 19時30分〜 |
上演時間 | 80分(途中休憩なし) |
価格 | 3500円 全席自由 |
観た直後のtweet
桃尻犬「瀬戸内の小さな蟲使い」80分休無
三鷹以来お久しぶりの桃尻犬。めっちゃ面白かったけどネタバレ怖いので慎重に。基本はある状況に陥った人々のど真ん中会話劇でそのやり取りが面白すぎる。のにラストの雪崩れ込みで桃尻ワールド。物語のテーマ的な核心をあえて避けてるのいいな。超オススメ! pic.twitter.com/jUQyrql3cx— てっくぱぱ@観劇垢/1 (@from_techpapa) June 21, 2023
満足度
(5/5点満点)
CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
感想(ネタバレあり)
※メンタル的に調子が悪く、しっかり書き上げる余裕が取れないため、当面は感想のメモだけ残しています。こぼれ落すより、何かしら残しておきたい。後々振り返って、もう少しちゃんとした文章に仕立てあげるかもしれません。
フリーフォールの頂上で、システム障害で停止。東京で付き合っていた男女。男が「蟲使い」を継ぐために実家の兵庫に帰ってきた。まさに実家に向かう途中での出来事、フリーフォールの頂上で取り残される。隣にたまたま居合わせた、癖のある女二人の友達グループ、棋士の試合でお菓子をつくる人。景色はいいが、遊園地の人は気休めばかり言って、一向に動く気配がない。そこで語られるお話。
三鷹NextSelection以来の桃尻犬。時間が開いて少し心配だったけれど、杞憂だった。滅茶苦茶面白い芝居だった。まずは、フリーフォールの頂上で止まるっていうのがシチュエーションとして面白過ぎるのだけれど、そこから織りなされる関西弁中心の会話が、なんとも生々しくリアル。特に、カップルの隣にたまたま居合わせた、中尾ちひろと橋爪未萠里の会話が面白い。途中、回想シーンなどは挟まれるものの、ど真ん中会話劇としての完成度が異様に高い。ここだけでも大満足な演劇なのだけれど。
ラスト1/4くらいは、今までの桃尻犬のスタイル同様、突然不条理劇に舵を切る。てっぺい右利きと野田慈伸の逃げる様が馬鹿馬鹿しくて面白い。そして、3年後。フリーフォールの事件以来、別れてしまったカップルの再開。「蟲使い」が何なのか、そんな説明は全くないし、説明しないことがこの演劇では大事な要素なんだけれども、その妙な歯切れの悪さがたまらない。
男が「兵庫に一緒に来て欲しいけれど、プロポーズではない」って言うのは、実は感情としてはとても理解出来る(特に男なら)。「蟲使い」っていう家業が、一体どんなものなのか知らない女に対して、知る前から「結婚」の重荷を背負わせたくない・・・って事なんだとはないか・・・と、真偽は分からずも、何となく想像できる。でも女の方は、そういう重荷も含めて受け止めたいからこそ、ガツンと男らしくプロポーズして欲しい・・・のだけれど、男は来ない。そこにイライラしする女の感情も、やっぱり分かる。
結局、てっぺい右利きは虫にされてしまう。「蟲使い」が恐ろしいモノ・・・なのかもしれない。そのあたりは全然語られないし、語る必要もないのだろうけれど。ただ、フリーフォールの上で「すれ違ってしまった男女」が、然るべくしてすれ違ったんだよなぁ、、、みたいな、ある種のどうしようもなさ、だけはよく分かる。どうしようもないこの状況がある意味テーマなんだろうけれど、ほぼガチンコ会話劇、最後だけ不条理劇。でも全編笑いが絶えない中で、まったく説教臭くなく、サラリとこのテーマを刷り込むように語って魅せる。80分というコンパクトさもあり、終わった後清々しくて仕方ない。そんな芝居久しぶりだなぁ・・・と思いながら帰路についた、そんな芝居だった。
役者さんが皆、上手すぎるけれど。特に挙げるとすると。中尾ちひろ、橋爪未萠里の会話。橋爪未萠里は今まで観た作品だと、どこか生真面目な役が多かったのだけれど、ここまで関西弁でおちょくり倒すのか・・・というギャップにも萌える。片桐美穂の表情がとにかく七変化で面白い。驚く顔でそこまでくちびるを歪めるか・・・。てっぺい右利き、最近の小劇場では、この人が出ている作品にはハズレがないとも言える位にいい役が多い。濃い役はこの人にお任せって感じな空気だけれど、フリーフォールのシーンでは結構ハンサムな役も出来るんじゃないかなぁ・・・なんて意外な面?を観て思う。