<観劇レポート>モダンスイマーズ アンカル「昼下がりの思春期たちは漂う狼のようだ」
【ネタバレ分離】 モダンスイマーズ アンカル「昼下がりの思春期たちは漂う狼のようだ」の観劇レポートです。
もくじ
公演前情報
公演・観劇データ
項目 | データ |
---|---|
団体名 | モダンスイマーズ |
回 | 蓬莱竜太プロデュース |
題 | アンカル「昼下がりの思春期たちは漂う狼のようだ」 |
脚本 | 蓬莱竜太 |
演出 | 蓬莱竜太 |
日時場所 | 2023/06/29(木)~2023/07/09(日) 東京芸術劇場シアターイースト(東京都) |
団体の紹介
劇団ホームページにはこんな紹介があります。
蓬莱竜太プロデュース「アンカル」とは、
「劇場での演劇」 の経験値を積み、
才能を開花させる場所である。
過去の観劇
- 2024年06月21日【観劇メモ】モダンスイマーズ 「雨とベンツと国道と私」
- 2022年01月13日モダンスイマーズ「だからビリーは東京で」
事前に分かるストーリーは?
こんな記載を見つけました
蓬莱竜太プロデュース「アンカル」とは、「劇場での演劇」の経験値を積み、才能を開花させる場所である。
ワークショップや地方の演劇活性化のために仕事をして色々な原石に出会うのだが、彼ら彼女らと芝居を創る場所がない。演劇に関わりながら「劇場」と呼べる場所で演劇をしたことのない人たちも多い。
演劇というのは「劇場」という与えられた空間、既成の空間を演出や演者が想像力、発想力、創造力で凝縮させたり広げたりするものである。そしてそれを体感、体験するために観客は「劇場」に足を運ぶ。その相互の活動で演劇文化というものが活性化されるものである。無論どこでやっても演劇というものは成立し得る。アトリエ、カフェ、家、など様々な場所で演劇は行われる。しかし「劇場」という空間を知らない演劇人も多くなっている。「劇場」はもっと解放されるべき場所であり、色々な世代や価値観が「劇場」で遊べるようになってほしい。集う場所であってほしい。
アンカルは演劇を志している者たちが集い「劇場での演劇」の経験値を積む場所であり、その才能を開花させる目的で考えられた場所である。
まずは出会うこと。出会うことで化学反応が起こり、互いが刺激を受け、互いの才能を引き出し、それが観客に届いていく作品を創ること。
ネタバレしない程度の情報
観劇日時・上演時間・価格
項目 | データ |
---|---|
観劇日時 | 2023年07月05日 14時00分〜 |
上演時間 | 170分(途中休憩15分を含む) |
価格 | 3800円 全席自由 |
観た直後のtweet
アンカル「昼下がりの思春期たちは漂う狼のようだ」170分含休15
中学生時代の苦悩を、どこか未来の自分が過去に語りかけるように描く群像劇。素晴らしすぎた!細かいエピが多重に語りかけてくる。当事者の中の傍観者が常に描かれるの好き。出演者多いのに個性が全員に。ゲン役すごい。超オススメ!! pic.twitter.com/b1NUwd7F7g— てっくぱぱ@観劇垢/5 (@from_techpapa) July 5, 2023
満足度
(5/5点満点)
CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
感想(ネタバレあり)
観劇候補に入れていたものの、この週は観たい演劇が目白押し。そんな中Twitterで湧き上がる評判につられて観に行った。どうやら再々演らしく、過去の作品の評判も相まって口コミのうねりが出来ていた。結局、私の観た翌日、7/6の公演から発熱者が出たため公演が中止、映像作品の上演への切り替えになった。ギリギリのところで観れた作品。
27人が出演。中学生を描く物語。シアターイーストの素舞台、学校の教室にある椅子を動かしながら描かれる。とにかく熱量と、個性が凄い。27人も出ているのに、少し時間の経った今でも一人一人の個性、キャラクターが思い出される。この熱量に、とにかく圧倒される。
しかも描かれるのは、「素晴らしきかな青春」な奇麗事では、ない。どちらかというと陰。「あの時うまくいかなかった事」「あの時自分にはどうしようもなかった事」。演じているのが大人だからというのもあり、どこか未来の大人の視点で、割と冷静に青春の悩みを、振り返っているような感覚がある。にもかかわらず、大人の達観した視点を持ちつつも、その時の悩みに真っ向から向き合い、取り上げているように感じる。大人になると「あの時は若かった」なんて言いながら「思い出」として処理されて、そういうユルさを許さないストイックさが内包している。中学生・高校生が観ると、共感はしつつも、ちょっとした違和感みたいなのを感じるのではないか、みたいな事を思う。
ラストに近いシーン、冒頭のシーンを繰り返す形で、生徒たちの群舞というか、ダンスっぽい動きでの生活の表現がある。ふと「ポカリスエット」とか、その手の飲料水が、夏に流す爽やか系の高校生あたりのCMを思い出すのだけれど、同時にその群舞は、爽やかなCMに比べて圧倒的にぎこちない。陰としたもののエネルギーが、青春の肯定として表現されている。「ポカリスエット」が、どこか嘘くさく見えてくる(まぁ、あれはあれで表現としては良いと思うけれど)。そんな少し屈折している青春の見方の提示が、とても素敵な作品だった。
気になった役者さん。とにかく粒ぞろいの役者さん達だったけれど。ゲンを演じていた、藤松祥子の、あの緩急自在の演技が、とにかく印象に残った。
7/6以降は、その日までに公演されていた内容を、大スクリーンでの映像上映に切り替えた点も、割と好感触だった様子。