<観劇レポート>NAOYA PRODUCE「夜と灰色の街」
【ネタバレ分離】NAOYA PRODUCE「夜と灰色の街」の観劇レポートです。
もくじ
公演前情報
公演・観劇データ
項目 | データ |
---|---|
団体名 | NAOYA PRODUCE |
回 | vol.Ⅲ |
題 | 夜と灰色の街 |
脚本 | 石橋直也 |
演出 | 石橋直也 |
日時場所 | 2023/09/06(水)~2023/09/10(日) 参宮橋トランスミッション(東京都) |
団体の紹介
劇団Twitterにはこんな紹介があります。
【NAOYA PRODUCEとは…】玄狐 主宰・石橋直也が固定のキャスト・ジャンルを問わず様々な演劇、LIVEパフォーマンス等をプロデュースする公演。第一回 「歪な日常」第二回「わが家」★☆第三回「夜と灰色の街」 2023年9月6日〜10日@参宮橋トランスミッションにて上演☆★
事前に分かるストーリーは?
あらすじ
世界は未知の脅威に直面していた。
《gray》と呼ばれる原因不明の病が蔓延し、人々は混乱と恐怖に支配され 「理性」 と云う箍を失い始めていた...。不協和音が犇く夜の歓楽街。 その一角に在る廃れた公園に屯する若者たちが居た。
自称テロリストのシュン (阿久津紘平) と自称爆弾魔のツグミ (槇野レオナ)。
夜の徘徊者サツキ (長谷川桃花) とその母エミ (角田佳代)。
《gray》となった少女ユウ (新美たま希)、誘拐犯のタカシ (高橋邦春)、
二人の兄であるケイイチ (石橋直也)。《gray》を監視するソノダ (橋本奈奈)。
日本が踏み切った新法律一《gray》ゼロ法。人間の尊厳とは、家族、仲間、 人の絆とは...新法案を打ち出したこの国に希望はあるのか。夜の街を彷徨う若者たちが現代社会を疾走する群像劇。「夜と灰色の街」...ご期待ください。
ネタバレしない程度の情報
観劇日時・上演時間・価格
項目 | データ |
---|---|
観劇日時 | 2023年09月06日 18時30分〜 |
上演時間 | 125分(途中休憩なし) |
価格 | 3500円 全席指定 |
観た直後のtweet
NAOYA PRODUCE「夜と灰色の街」125分休無
団体初見。面白かった!正体不明の病気が蔓延する世界の、デストピアSFモノ。SFだけど描いてる焦点が、家族だったり友人だったりで、感情の繋がりがヒシヒシと伝わってきた。どこかドラマ「ウォーキング・デッド」を想起させる。作家の語感鋭し。オススメ!! pic.twitter.com/01pLlglriL— てっくぱぱ@観劇垢 (@from_techpapa) September 6, 2023
満足度
(4/5点満点)
CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
感想(ネタバレあり)
ストーリーは事前紹介の通り。grayという、ゾンビのようになってしまう病気が蔓延している日本をめぐる群像劇。grayになった妹ユウをかくまう、兄ケイイチと・弟タカシ。タカシは、何故か街で無気力な少女を誘拐して、散々脅しては、そのまま開放する「夜回り」をしている。その「夜回り」で誘拐されたさつきは、誘拐されたことでgrayになる事を免れた様子。母の幻に悩みながら、街でテロリストを自称し、爆弾をろうとしているタカシの幼馴染のシュンとツグミの仲間に入ってくる。いよいよユウをかくまっているのが政府に見つかり、何とか金策をして、国外逃亡を図ろうとする。・・・かなり強引に端折ってまとめるとこんなストーリー。
団体初見。一言で言ってしまうと、デストピアな近未来SFモノ。私自身、あまりこの路線の話を演劇で観るのは好みではないのだけれど、予想に反して面白かった。
grayという病は、どこかドラマ「ウォーキング・デッド」に似た設定で、普段は鎖なりロープでつないでおく必要があるゾンビのような感じ。ただgrayは、同ドラマのようにウイルス性の病ではなく、(劇中に詳細は語られないものの)無気力になり人生に希望を亡くした時に発症する病気、として描かれている。「ウォーキング・デッド」の初期シリーズで、ゾンビ化してしまった家族を、まだ家族として見るのか、もう「デッド」として捉えるか、という家族愛に関する話が何度も出てくるけれど、ユウをかくまう様や、その他話の中で登場するgrayが、似たようなヒューマニズムの構造を持っているように思う。
grayが希望を失った無気力病なら、出てきている人は皆grayとは対極に「生きようと」している人々。その中で出てくる人々が、現在の社会に納得できず、変えようともがく。それはどこか、現代を生きている、気骨はある市井の人々に重なって見える。現実世界のアナロジーでないと、SFは面白くない・・・というのは常識だけれど。幼馴染とのかけ合いや、「世直し」された事でgrayを回避しつつも母の印影から逃れられないサツキ、あるいは実はレイプされてgrayになってしまったユウも、どこか日本社会の闇の部分を投影しているように見えてくる。説明は最小限に、しかも、群像の一人一人の感情の動きがしっかりと描かれている。良いSF作品を観させてもらった。
役者さん。爆弾をつくろうと努力して、元気いっぱいだけれどどこか不器用な、ツグミ役の槇野レオナの演技が印象に残り。