<観劇レポート>やみ・あがりシアター「濫吹」
【ネタバレ分離】 やみ・あがりシアター「濫吹」の観劇レポートです。
もくじ
公演前情報
公演・観劇データ
項目 | データ |
---|---|
団体名 | やみ・あがりシアター |
回 | 第19回公演 |
題 | 濫吹 |
脚本 | 笠浦静花 |
演出 | 笠浦静花 |
日時場所 | 2023/09/07(木)~2023/09/10(日) 新宿シアタートップス(東京都) |
団体の紹介
劇団ホームページにはこんな紹介があります。
2012年に旗揚げ。
「ヒトのやんでるところとあがってるところを両方、病気が治ったばかりのようなハイテンションでお届けしたい」
というコンセプトのもとに芝居作りを行う。
過去の観劇
- 2024年05月02日 【観劇メモ】やみ・あがりシアター 「フィクショナル香港IBM」
- 2023年01月08日 やみ・あがりシアター「すずめのなみだだん!」
- 2022年09月03日 やみ・あがりシアター「Show me Shoot me」
- 2022年03月19日 やみ・あがりシアター「マリーバードランド」
- 2021年08月27日 やみ・あがりシアター「うわさにきく風2020-2021」 ・・・つづき
事前に分かるストーリーは?
こんな記載を見つけました
濫吹【らん‐すい】とは??
→実力のないものが、実力があるかのように見せかけること
(韓非子 内儲説より)笛の吹けない南郭が、
斉の国から逃げ出してから、約二千三百年。東京。会長が言う。
「(私は)PTA会長は、お飾りだと言うから、引き受けたのです」
それに答えて、
「流行病を避けて、会議を通信で行い、保護者の負担が減りました。その代わり、(PTAの皆が)見知った仲ではなくなりました。まだはっきりしたことではないのですが、私たちPTAの活動に、保護者でない者が混じっているのではないかという話があります。どうしますか」
「どうしていいか分からないが、私たちが逃げられるでしょうか(いや、逃げられるはずがない)。子どもがいるのですから」
ネタバレしない程度の情報
観劇日時・上演時間・価格
項目 | データ |
---|---|
観劇日時 | 2023年09月08日 19時30分〜 |
上演時間 | 115分(途中休憩なし) |
価格 | 3800円 全席指定 |
観た直後のtweet
やみ・あがりシアター「濫吹」115分休無
さすが芝居としてとても面白くて、超オススメ!、なのだけど。ラストのテーマ的な話で全体を観ればいいのか、単に群像劇として楽しめばいいのか、ちょっとしっくり来ないというか、スッパリ割れないモノも残った感。トップスの空間の使い方が上手過ぎる。 pic.twitter.com/J2WBhdjsSj— てっくぱぱ@観劇垢 (@from_techpapa) September 8, 2023
満足度
(5/5点満点)
CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
感想(ネタバレあり)
PTAの横断歩道の旗当番。コロナをきっかけに、webフォームで報告したら、時差はサボっている人がいたり、子どもがいないのに旗当番に立つ人がいたり。PTAの会長はお飾りで何も決められないけれど、副会長がテキパキと「効率化」していくので、乗せられて「優秀PTA」に選出されてまんざらでもない。副会長の娘は、コロナの中で他人と同時にしか喋れなくなってしまった。・・・そんなPTA、旗当番にまつわる人々の群像劇を、途中途中、タイトルにもなっている韓非子の「濫吹」のエピソードを挟みながら語られる群像劇。
全体観終わった後に思ったのは、「ズルいなぁ(笑)」という感覚。キャラクターも立っているし、セリフも鋭いし、群像劇として抜群に面白い。シアタートップスの舞台を骨抜きにして、客席から奈落の様子が見え、故に役者の出掃けが見える。あー、トップスって舞台下向きに階段が出現することがあるけれど、こんな風になっているのか。芝居として面白い要素が、巧みに鮮やかに、テンコ盛り盛り。
「やみ・あがりシアター」を初めて観る人の感想がTwitterに何度も流れてきたけれど、不思議で面白いっていう感想。もうそれだけでお腹いっぱいなんだよなぁな感覚。やっぱりこの劇団は面白い、っていう、既に小劇場ファンの中では確立された感覚がどんどん広がって、ついにシアター・トップスまで来たなぁ、という感覚と。
何だかちょっとシックリ来ない感覚もある。タイトルの通り、韓非子の「濫吹」のエピソードが事あるごとに挟まれるのだけれど、・・・正直なところ、物語全体とはあまり重なってこない。PTAの群像物語。最終的にフォーカスが当たっていくのは、加藤睦望が演じる「子どもがいないのに旗持ちをする女」の事情だったり、孤独。最後は自殺をほのめかすようなシーンも出てくるけれど、それと「濫吹」っていうのが、どうにもこうにも、結びつかない。結果的に全編に渡って意味ありげに出てくる「濫吹」って何だったんだろう・・・っていう、チグハグさも強く感じるのだけれど。
それでも、最初に書いた通り、群像劇だけで抜群に面白い。テーマで小首をかしげたって、ここまで面白いんだから、もう何も言う事ないよなぁ・・・というか。その意味で「ズルいなぁ(笑)」。前作「すずめのなみだだん」ように、テーマがしっかりとシンクロした時は、めっさ面白いよなぁ。小劇場でいられるのも、そう長い事ではない気もする。
役者さん。やみあがり常連の安定の演技に加え、最近別の舞台でも何度か拝見している、チカナガチサトの独特の演技と声が、印象的。目を離せない役者さん発見。