<観劇レポート>KAAT神奈川芸術劇場「SHELL」
【ネタバレ分離】 KAAT神奈川芸術劇場「SHELL」の観劇レポートです。
もくじ
公演前情報
公演・観劇データ
項目 | データ |
---|---|
団体名 | KAAT神奈川芸術劇場 |
回 | KAAT神奈川芸術劇場プロデュース |
題 | SHELL |
脚本 | 倉持裕 |
演出 | 杉原邦生 |
日時場所 | 2023/11/11(土)~2023/11/26(日) KAAT神奈川芸術劇場・ホール(神奈川県) |
団体の紹介
横浜、山下公園の近くにある、神奈川県の公共劇場です。
過去の観劇
- 2024年02月03日【観劇メモ】KAAT神奈川芸術劇場「『箱根山の美女と野獣』『三浦半島の人魚姫』」
- 2023年12月23日KAAT神奈川芸術劇場「ジャズ大名」
- 2023年11月05日KAAT神奈川芸術劇場「アメリカの時計」
- 2023年07月27日KAAT神奈川芸術劇場「さいごの1つ前」
- 2023年05月15日KAAT神奈川芸術劇場「虹む街の果て」 ・・・つづき
事前に分かるストーリーは?
こんな記載を見つけました
倉持裕×杉原邦生、注目の初タッグでお送りする
現代を舞台に特異な人間が存在する不思議な世界を描く、青春ファンタジー!とある高校の放課後の教室。そこには生徒の未羽(みう)、希穂(きほ)、咲斗(さくと)と数名の友達たち。彼らは、突然学校に来なくなった松田先生について、そしてこの学校の問題について度々話し合っている。
ある日、未羽は通りがかったビルからマネキンが落ちてくる現場に遭遇する。そのマネキンを抱きかかえていたのは中年男の高木だが、未羽には高木でもあり希穂の顔にも見えるという不思議な体験をする。同じ人間がいくつもの<顔>を持っている。それは、一部の者だけが知っている世界だったのだが、未羽にはそれを見抜く力があった。
希穂たち以外にも、いくつもの<顔>をもっている人々が分かる未羽。様々な登場人物たちがうごめく中で、顔を見抜けて「絶対他者」を繋げてしまう未羽、顔を持つ人々、そして全く分からない人々との間に、摩擦が生じていく…
ネタバレしない程度の情報
観劇日時・上演時間・価格
項目 | データ |
---|---|
観劇日時 | 2023年11月17日 14時00分〜 |
上演時間 | 125分(途中休憩なし) |
価格 | 6800円 全席指定 |
観た直後のtweet
神奈川芸術劇場「SHELL」125分休無
難解だけど、とても興味深い作品。何故私は貴方ではないのか、みたいな哲学的なことを若いと悩むものだけど。SNSなども絡めて、その問いを表現してるように思え。年齢層高めの客席だったけど若いと感覚的に入ってくる話かも。舞台美術のインパクト凄し。オススメ。 pic.twitter.com/JkT3jLLezm— てっくぱぱ@観劇垢 (@from_techpapa) November 17, 2023
満足度
(4/5点満点)
CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
感想(ネタバレあり)
ストーリーは記載の通りで、ちょっと何言っているのか分からない・・・と思うかもしれない。実際、とても難解で、かつ、とても哲学的な問いを突きつけられているように感じる。同時に「何故私は私であって、貴方ではないのか」という、若い頃にはそこはかとなく考えた、40代のおじさんにとっては「懐かしい」問いを思い起こさせられた感覚もある。平日マチネだったからか、客席の年齢層は高めで若い人の割合は少なかったのだけど、難解とはいえ若い人・・・高校生から大学生くらいだと、直観的な理解ができるのではないか。難解だったのもあり、パンフレットが500円と安かったので買ってみた。手がかりらしき文章は殆ど無かったけれど、長塚圭史が倉持裕に依頼したのは「若者たちの青春を描いて欲しい」と書かれていて、感覚的な年齢層のズレは正しい感覚だったのかなぁ、と思う。
「絶対他者」っていう言葉が出てくる。エヴァンゲリオンみたいだけれど、SNSが発達したこの時代に、「絶対的な他者」を正確に見極めることが難しい。かつては、絶対他者ばかりだったのに、いまやいろんなところが繋がっているし、むしろ身近に絶対他者が存在していて。劇中に、盲目の女性が家で飼っているた大蛇が逃げ出したエピソードがあるけれど、あれは他者なのか、あるいはキホがのり移った何かなのか。あるいはラジオDJともう一人(名前忘れた)の喫茶店での会話で、椅子に鞄を置いて占拠している時にその椅子を使いたい人は「絶対他者」なのか・・・。そんな喉に引っかかった小骨のような描写がいくつもあった。
集会の後に。希穂は消えて。次に出てくるときはいつもの制服ではなく、緑色の制服(真緑)。卒業式で「さよなら」を言うも未羽。この後どうるんだろう、という未羽の問いに、「たまーに思い出すあの人、いや、思い出しさえしないあの人、になるだけだよ」と答えるのが印象に残り。
舞台セットが緑。ホリゾントや幕が全く無くて、KAATのホールの骨組みがむき出しになっているのは、以前の杉原邦生の演出「オレステスとピュラデス」のよう。骨組みが見えるのでちょっと安っぽさはあるものの、照明音響併せ、舞台空間としては異質で面白かった。