<観劇レポート>早稲田大学演劇研究会「混ぜ込み炊き込みリメンバーミー」
【ネタバレ分離】 早稲田大学演劇研究会「混ぜ込み炊き込みリメンバーミー」の観劇レポートです。
もくじ
公演前情報
公演・観劇データ
項目 | データ |
---|---|
団体名 | 早稲田大学演劇研究会 |
回 | 早稲田大学演劇研究会企画公演 |
題 | 混ぜ込み炊き込みリメンバーミー |
脚本 | 瀬戸内ぽんぽこ |
演出 | 瀬戸内ぽんぽこ |
日時場所 | 2023/11/29(水)~2023/12/03(日) 早稲田大学大隈講堂裏劇研アトリエ(東京都) |
団体の紹介
劇団ホームページにはこんな紹介があります。
1920年、創立。
この100年間で、名前を変えて、場所を代えて、
そして大勢の人間を替えながらも、多くを受け継ぐ。
そのうえで、捨て去れたら。活動拠点は、大隈講堂裏に建つ「劇研アトリエ」。
入会希望者は、「新人訓練」を受けたのち、
「新人試演会」を経て、正式な会員となります。入会後は、原則として平等な公演企画の権利が付与され、アトリエの使用権を会員同士で競り合います。
>また、「アンサンブル」と名付けられた派閥制度により、アトリエの使用はさらに円滑なものとなります。
過去の観劇
- 2024年10月21日【観劇メモ】早稲田大学演劇研究会「獄・カーニバル」
- 2024年06月13日【観劇メモ】早稲田大学演劇研究会 「香格里拉 ―シャングリラ―」
- 2024年05月02日【観劇メモ】早稲田大学演劇研究会 「邂逅」
- 2024年03月04日【観劇メモ】早稲田大学演劇研究会 「シン・ワ」
- 2024年01月13日【観劇メモ】早稲田大学演劇研究会 「劇場版 芝居小屋シアター THE STAGE」 ・・・つづき
事前に分かるストーリーは?
こんな記載を見つけました
これは毛利が死ぬまでの、そして先生が原稿を完成させるまでの1年間の話
限界アパート〈ハイツ・ユートピア〉に住むヤク中の小説家、''先生''
そしてその追っかけ、''毛利''
ある年の11月第3木曜日。ボジョレーヌーボー解禁とともに、毛利は余命宣告をされる。
「私が死んだら先生ひとりぼっちになる。」
毛利はアパートの住民に先生を託すべく、接触を試みる。
一方、住民たちは今年の年間目標を
''みんなの共有財産としてペッパー君を買おうね''
に決定し、資金調達に奔走し始めるのであった_____。
ネタバレしない程度の情報
観劇日時・上演時間・価格
項目 | データ |
---|---|
観劇日時 | 2023年11月29日 19時00分〜 |
上演時間 | 105分(途中休憩なし) |
価格 | フリーカンパ制 全席自由 |
観た直後のtweet
早稲田大学演劇研究会「混ぜ込み炊き込みリメンバーミー」105分休無
うぉ~めっちゃ面白かった!今の早大劇研才能やばい。思い返すと基は太宰?(自信無)。表層のナンセンスな笑と裏腹な描いてる事の深刻さ、ギャップたまらない。初日でスタッフ慌て感有。ラスト印象的。ジェシカ大好き。超オススメ! pic.twitter.com/rrU8Fxu9bt— てっくぱぱ@観劇垢 (@from_techpapa) November 29, 2023
満足度
(5/5点満点)
CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
感想(ネタバレあり)
面白かった。劇研、学生劇団という事もあり、作者と役者たちにものすごい才能を感じた。初日に観たのもあって、準備時間足りなかったのかなという粗さがいくつか残っていて、特にスタッフワークがバタついていたけれど。それでも才能は滲み出てしまう感。観ていてどんどんニンマリしてくる感覚。演劇観るのが楽しい感覚。
言葉が鋭い。毛利と先生のどこか歪みを持ちつつねじれた関係と、アパートの住人たちの軽くて頭空っぽそうな言葉。「オール電化」とか「ペッパー君」とか、どうしてそんなものを目指しているのか全く分からないし、アパートの住人なんて一人はナマズで、発電すればエレクトリカルパレードの曲が爆音で流れる。どこか底抜けに能天気なのに、会話がいちいちチクチク鋭くて。なんなんだこの人達は、と思う。北の国から来たスパイのジェシカも、大家の村瀬君も、火曜サスペンス劇場か?という大げさな演技で、やはり能天気にズレている。
軽いアパートの住人関係とは対照的に、先生の小説を熱望するあまりに毎日先生の家に来るようになってしまった毛利。勝手な思い込みかも知れないが、どこか太宰治の「駈込み訴え」をベースにしたのではないかと思う。余命1年を宣告された毛利が、アパートの住人達と先生とを逢わせて、徐々に社会生活を送れるようにしていけばいくほど、あんなに愛していた先生と、先生の小説からは遠ざかってしまう毛利。麻薬栽培で儲けるアパートの住人たちと先生の、どこまでも能天気な生き方とは、対称的になってしまう毛利が物悲しい。ラストは、舞台から落ちてカットアウト。自殺なのか、あるいは先生の心の中で毛利が何かになったのかは分からないものの。ちょうど一年して先生の前から消えて、気か付くと、電話番号すら覚えてもらえなかった先生の、心の中に住み着くようになっていて。
陽気で、物語が分かり難い場所が殆どないのに、絵描いている事がとても感覚的。解釈というか、感覚的な受け取り方はいくつもありそう。久々に追いかけてみたい作家に出会ったな、と思う。
前回の早稲田の劇研「アオハル・ネゴシエーション」とは全く対照的な作品だけれど、それにしても2023年の早稲田の劇研、才能が溢れかえっている。将来が楽しみ。