2023年 勝手に観劇ベスト11
誰にも頼まれていないけれど、2023年通年ベスト11。
2023年に観た芝居、195本の中から、私的なベスト11を選んでみました。
ただ、「ウィキッド」は、もう別格なので、対象から外してあります。
CoRich芸術アワードに投票もしています。 ⇒こちら
11本にした理由:CoRichで10票投票権を頂きましたが、1演目CoRich登録がいため投票不可。
11位までを選んだのち、繰り上げて10票投票しました。
演劇番外地(Xのスペース)で、上半期、下半期の演劇振り返りを実施しました。
演劇番外地 スペシャル 2023年上半期の観劇振り返り
演劇番外地 スペシャル 2023年下半期の観劇振り返り
もくじ
2023年ベスト11(順位)
【11位】早稲田大学演劇研究会「混ぜ込み炊き込みリメンバーミー」
今年は、早稲田劇研界隈の才能がほとばしっていて。そのうちの一作でした。私には「駈込み訴え」をオマージュしたように思えた作品でしたが、真偽は分からず。言葉の鋭さと、演出の奇抜さがかなり印象に残りました。将来この作品に出演した人から、逸材が出てくるのは疑い得ない、と予言も兼ねて記載しておきます。
【10位】早稲田大学演劇研究会「アオハル・ネゴシエーション」
今年は、早稲田劇研界隈の才能がほとばしっていて。そのうちの一作でした。冨坂友ばりの、屁理屈シチュエーションコメディで、途中から劇研アトリエだ、という事を完全に忘れて楽しんでいました。将来この作品に出演した人から、逸材が出てくるのは疑い得ない、と予言も兼ねて記載しておきます。
【9位】Peachboys「立ちバック・トゥ・ザ・ティーチャー」
笑いました。笑い疲れました。この世の嫌な事は全て忘れて、笑い潰れました。某めがね屋さんの広告をしているヌートバー氏のポスターを見かけると、未だにPeachboysのペッパーミルを思い出します。ファミレスのネコ型ロボットも、Peachboysを思い出させてくれます。2024年で無期限活動停止。4月にFinal公演が控えています。止めないで欲しい、行かないで欲しい。でも仕方ないのかもしれない・・・。2024年の最後の花火も、楽しみにしています。
【8位】劇団俳優座「対話」
作品を思い出すと、今でも「ずっしりとした重さ」と、観終わった後の頭と体の疲労が蘇ってきます。さすが俳優座。実在の職業としての「対話人」を描いていますが、生きることにあたって、対話をする事がどの程度役に立つのだろうか・・・そんな空気を摑むような考えを、その後何度もそこはかとなく巡らせました。それはとりもなおさず、あの場に集まった人々が仮に実在の人物だったとして、どんな人生を送っているのか、その事を考えずにはいられない、という事なのかもしれないと思いました。
【7位】やみ・あがりシアター「すずめのなみだだん!」
「やみ・あがりシアター」初の再演。私自身、今年の観劇初めの作品で、かつ初見の作品でしたが、今までのやみ・あがりのベストを更新。信仰、っていうちょっと扱いにくいテーマを、見事に描き切っている作品でした。
【6位】北海道網走南ケ丘高等学校「スパイス・カレー」
緻密な緻密な、会話劇。母をコロナの中で看取る事も出来ずに亡くした後、やっと集えた四十九日。それぞれの想いと、カレーライスとを交えた、リアルタイムな時間の中での物語。観終わった後、脚本を読んだり、NHKで放送された全国大会の様子のダイジェストを見返したりしているうちに、私の中でどんどんどんどん、大きくなっていく作品でした。国立劇場で東京公演を行った作品は、配信もされる予定だったので期待していたのですが、どうやら劇中で利用している曲「カントリー・ロード」の著作権料を、主催している文化庁・全国高等学校文化連盟他が払わなかったようで(上演した網走南ケ丘高等学校に請求が行ったらしい・・・トホホ)、再度観ることは叶いませんでした。今後も高校演劇だけでなく、様々なシーンで上演されていく作品だと思っています。本当に良い会話劇を観させてもらったなぁと思いました。
【5位】MCR「死んだら流石に愛しく思え最終版(2023年)」
2019年に観た衝撃をもう一度味わたくての観劇。2023年の上演は「最終版」でしたが、記憶の限りは大きな改編はありませんでした。やっぱり衝撃的過ぎて、身動きが取れなかった作品。特に、シリアルキラーの2人が、殺人を犯していく象徴的なシーンは、小劇場の歴史に残すべき名シーンだと思いました。俯瞰してみると、作者とシリアルキラーの対話を行っている作品。差し出した手に、誰も応えるものはいないのかもしれないけれど。MCRという劇団が、この喪失感を原動力に、芝居を創っているのかなぁ・・・みたいな事を考えると、自分の理解としてはものすごくシックリ来てしまう作品でした。
【4位】2223project 劇団晴天「同級生」
2020年初に「共演者」を観ていて、こちらは再度の観劇。その「共演者」の前日壇「同級生」がとても良かった。劇団晴天、大石晟雄の作品の特徴でもあるのかもしれませんが、ある詰まってしまった人間関係を描きつつ、その先に飛び出すエネルギーを、セリフの力や、役者の力に求めてくる。「共演者」の場合は「想像を超えろ」でしたが、「同級生」のまなみ役の土本橙子のエネルギーが、とにかく頭からこびりついて忘れられない。振り返ってみると、物語としては特徴的か・・・と言われるとそうでもないのだけれども、現実のしがらみを振りほどくエネルギーが、とにかく印象に残った作品でした。
【3位】範宙遊泳「バナナの花は食べられる」
この作品も、言語化が難しい作品でした。コロナの中で生きた人々・・・というと、何だかコロナ禍の物語に聞こえてしまいますが、そうではなく。単にあるシチュエーションで生きた人の物語なんだと思うのですが。劇中、どこかふざけていて、徹底的に「メタファー」を利用しているのに、どこまでも現実と重なってくる。でもその「メタファー」が、「ファンタジー」である事を願ってしまう。そんな作品でした。昨年、岸田國士戯曲賞を取った作品の再演ですが、これは文句なしで賞に値するなぁ、と思いました。 役者さんとしての、埜本幸良、福原冠、井神沙恵の三方を知れたのも収穫でした。
【2位】ロロ「BGM」
この作品も、言語化が難しい作品でした。東日本大震災の、前後の記憶を対比させるような作品ですが、それを明示するような説明は殆どありません。ただ、何となく、ここで語られている事が、既に大きく喪失してしまった何かの希求。文字どおり記憶に対する「ロードムービー」のような作品でした。どんな物語なのか説明せよと言われても、出来ない。それにもかかわらず、取り返せない物への愛おしさ、切ない感覚ばかりが蘇ってくる作品でした。劇中で利用されていた曲と、星の中を歩くようなダンスが、今でもありありと思い出すことができます。この上演は再演で、初演のDVDを手に入れました。ただ、まだ見れていません。初演とは少し異なる、とDVDを買う時に言われたので、ちょっと二の足を踏んでいる部分もあります。
【1位】東京演劇アンサンブル「送りの夏」
後半1時間は、泣き続けました。今思い出しても涙出て来ます。身近な人の死による、喪失をテーマにしている作品は多々ありますが、こんな表現に出会えるとは思いませんでした。基は小説ですが、舞台化に当たって殆ど改編されておらず、小説もよかった。でも、演劇の作品として立ち上げるために書かれたような小説、のようにも思いました。東京演劇アンサンブルには、ぜひレパートリーにして欲しい作品。