<観劇レポート>劇団ミックスドッグス「発明少年天才ピカリ」
【ネタバレ分離】
観た芝居の感想です。
もくじ
公演前情報
公演・観劇データ
団体名 | 劇団ミックスドッグス |
回 | 劇団ミックスドッグス'19 Summer stage |
題 | 発明少年天才ピカリ |
脚本 | 奥田悟史 |
演出 | 奥田悟史 |
日時場所 | 2019/06/27(木)~2019/06/30(日) オメガ東京(東京都) |
ミックスドッグス?
劇団ホームページにはこんな紹介があります。
2011年2月に結成!東京理科大学発の劇団です。
”雑種犬”という意味である劇団名『mixdogs』には「演劇の本流ではない私たちだけれども、いつか一流になってやろう(血統書のない雑種犬が新たな血統と認められるように)」という思いが込められています。
脚本はすべてオリジナル。ハリウッド映画のようなハイスピードな展開の中で繰り広げられる濃密な物語により老若男女あらゆる人を楽しませます。
魅力溢れる役者達の感情を、心に響くロックな音楽と、夢の世界のような照明と共に物語をお届けします。
夢は、池袋サンシャイン劇場での公演です。今はまだ小さな劇団ですが、1年間に4公演と元気だけは大物の劇団です。
一度私たちの演劇を観に来てみませんか?どんな時でもあなたを元気にします。
それでは、劇場でお待ちしています。
事前に分かるストーリーは?
劇団ホームページには、こんな記載がありました。
錆びた外階段、筒抜けの壁と天井、足の踏み場も無い廊下……
崩れかけのボロ家に、夢見る少年が住んでいた。名前は光、年は十歳。父さん、紗恵子さん(父さんの彼女)、
クック将軍(ペットの鶏)と暮らしている。目指すは世界一の発明家、発明王。
日々、書き足される発明ノートは、閃きとアイデアでいっぱい。
でも、形になった物は一つも無かった。ある朝、光宛に荷物が届く。中身は、得体の知れない機械。
電源を入れると一通の手紙を吐き出した。それは、八十年後の未来からのメッセージ……機械の正体は
「4Dプリンター」、光のユメをカタチにする魔法の機械だった!
ネタバレしない程度の情報
上演時間・チケット価格・満足度
観劇した日時 | 2019年6月27日 19時00分〜 |
価格 | 3500円 全席自由(事前にネット予約) |
上演時間 | 135分(途中休憩なし) |
個人的な満足度 CoRichに投稿 | ★★★☆☆(3/5点満点) |
客席の様子
男女は7:3くらいか。客層が幅広く、一人客多し。小劇場の役者さんっぽい方もチラホラ。コアなファンを捉えつつ、演劇関係者が注目している、という感じでしょうか。開演までは非常に静かでした。
観劇初心者の方へ
観劇初心者の方でも、安心して楽しめる舞台です。
観た直後のtweet
劇団ミックスドッグス「発明少年天才ピカリ」観劇。135分休無。
ミクドクのスピード感は健在も、そのスピードに物語も役者も、当然客も、ついていけてなかったかなぁ。特に台詞回しが。早すぎる車を追いかけて、バタバタコケてるのを観てる感覚で辛かった。楽にむけて場馴れて変わってくるかもだけど。— てっくぱぱ (@from_techpapa) 2019年6月27日
感想(ネタバレあり)
ストーリーはチラシの通りだけれど。10歳の小学生、光は、将来発明家を夢見る少年。ある日自分自身から送られてきた、プリンターのような機械は、未来から物を送ってくる4Dプリンターだった。未来の人は、光の発明の原案のノートを送れという。夢見る光は、未来の人と文通しながら、自分の要求を伝えていく。しかし、未来人が探していたのは、小学生の光、ではなく、未来から2019年に逃げた、60歳の天才科学者、ピカリだった。発明家は自分の事ではないと知りショックを受ける光は、未来からやってきて現代に住む、ピカリ老人に逢いに出かける・・・・とまとめるとこんな感じ。
ミクドクと言えば、特徴はやはりスピーディな舞台。今回もスピード感は健在だったけれど、、、、初日だったこともあるのか、役者さんの感情や、演技の流れ、そして何より台詞回しが、ミクドクの独特のスピードに付いていっていない感覚。スピードが出ているのに、スピードを出している人がついていけてない奇妙さ。マラソンの先導のために前を走っている車がスピード上げ過ぎて、つられたランナーがついていけず、脚がもつれてバタバタとコケているような感覚。そんな中で、物語に集中出来なかった、というのが本音だった。
この、圧倒的な速度感と、速度に付いていっていない感の中、どうしても頭の中で考えてしまう事は「演劇集団キャラメルボックス」(キャラメル)の事。
キャラメルと、ミクドクは、演出や作風が近い路線だと、個人的には思っている(巷でもよく言われている)。いわばミクドクは、ポスト・キャラメル。活動停止になってしまったキャラメルに取って代わるくらいになって欲しい劇団。
今回の「ピカリ~」と同様、キャラメルの芝居も、非常にテンポが早い。感情の流れの速さ、人間関係の情報量の多さ、笑の多さの割には、台詞回しが早くドンドン進んでいく。お話はいつもどこかSFチックで、沸き起こる感情は割と単純だけれど、それでも心ドキドキ、ワクワク、気が付けば涙。「こんな話デキ過ぎだ!泣くもんか!」・・・と踏ん張っても、気が付くと泣いちゃう。そんな演劇が、私にとってのキャラメルだった。なので必然的に、キャラメルで「芝居が早すぎて、ついていけない~」という事には、今まで出くわしたことがない。・・・いや、「正確な話」を理解できないことはあっても、その事が私自身の感情の流れに、殆ど影響を及ぼさない、というのが正確かもしれない(キャラメルでも、たまに早すぎて、人間関係の相関図を、見失う事があったし。)。終演後、気持ちいい涙や、気持ちいい感情をもらって、帰る。ストーリーは少し忘れているけれど、「楽しかった」と誰かに語れる舞台だった。特に、観劇をあまりしない人を連れて行きやすい舞台だった。
ひるがえって、今日の「ピカリ~」。同じような作風を感じるし、同じような事をどこかで求めている自分がいつつも、、、、今日の芝居はキャラメルの時とは異なり、感情が殆ど付いていっていない自分に気が付く。初日という事もあり、セリフ回しがちょっと雑だったのが原因なのか。まるで2時間に収めようとしたかのように、芝居が早口になっている事が原因なのか。観ている側には、その真の原因はよく分からなかったけれど。「ん、このキャラメル、ちっとも甘くないぞ」感覚を、体験してしまった感じだった。
前々回の「クロノスコープ少女」は、物凄く感情の流れが丁寧だったのを、鮮明に記憶している。今回の芝居は、たまたま流れが上手くいかず、スピードを上げ過ぎた、と考えるのが適当な解釈かもしれない。そう考えると、スピーディな展開の中、感情をつないで芝居を創っていくっていうのは、実は物凄く技術のいる事なんだろうなぁ、と思い至る。キャラメルボックスの芝居に対する賞賛の念を、観劇中にふと、心の中に思い描いてしまった。この作風、芝居のスピード感を維持しつつ、感情をつなぐ芝居の演技力や演出力が、ポスト・キャラメルのミックスドッグスには求められているのかもしれない。
ストーリーの展開として面白かった点。当初は、小学生の「光(あだ名はピカリ)」を探しあてて、当たっていると思っていたけれど、開始70分くらいで判明する、「老人」と「小学生」の、探し人のすれ違いが、設定として面白かった。結局は、「光」は、未来の「ピカリ老人」だという事は最後の最後でハッキリと語られる訳だけれど、開始70分で少しヨジれさせる展開は、純粋に前のめりになってしまった。
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